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The Princess of Tennis

テニプリンセス 感想 嵐を呼ぶ全国大会

 準々決勝が始まる前に書いておかねばならなかった記事。


 いよいよ始まってしまう全国大会準々決勝。
 おそらくここからが群像劇として見た場合の本作が迎える最高潮になるはずなので、その前に幾重にも張り巡らされた対比構造と、その根底にあるキャラクターたちの確かに活きた個性について簡単にまとめておきたいと思います。ほぼ自分のために。

 一番大枠のテーマとして、テニスを通じて描かれる「勝つこと」「楽しむこと」の二軸があり、その両立の難しさこそが「テニスの魅力」なのだと、相変わらず以前大雑把に語られたことが物語の進展に応じて活きてくる作劇スタイル。この両軸は、物語の主役である卯月とかな子がそれぞれ担ってきたものでもあり、全国大会2回戦前に描かれた断絶によってついにその対比構造が顕在化した。
 卯月は「自分のスタイル」を信じ続けることで無我を覚醒させてきた人物であり、楽しむことがそのキーであることも描かれている。
 一方のかな子は、物語当初から「足手まとい」になるのではという不安とコンプレックスを抱えており、実際にネームドキャラとの試合では関東大会までの6戦全敗、特訓編で凛の教えを受けて「勝つこと」を学んだ彼女は全国でついに初勝利を手にするのですが、敗者の気持ちを誰よりも知る彼女の表情に笑みはない。
 どちらが正しいというわけではない。臙脂高校の奥寺ちゃんが言うように「いい試合をして勝ち進む」のが理想ではあるのだけど、それを体現できるのは最強選手の未央や「純粋なチーム」と恐れられる紫天王寺の選手たちのように、圧倒的な強さを持つ選ばれたものたちだけ。
 弱者が強者を乗り越えるためには、自分の理想だけを追い求めるのではなく、先を見据えて策を凝らし勝利に手を伸ばさなければならない。1回戦で灰原に敗れた六章などは、「楽しんで」勝つと前者を優先させたチームであると言えるし、後述するけどそんな六章でマネージャーとして勝たせる役目を担う清美が灰原と手を結んで紫天王寺に挑む展開は胸熱。
 とまあ、言ってしまえばやられ役のポッと出チームを巧みに展開補強に使っていく手腕は見事の一言。この大枠の中で、様々な価値観のぶつかり合いや、個々人の苦悩と成長が描かれて行っているのが、群像劇としての本作の本領である。

 チームごとに明確なカラーがありつつ、そのメンバー間にもしっかりと個々人の価値観の違いが描かれている。
 その点銀誓は面白いチームで、明示された忍と杏の確執もそうだけど、実は千夏の存在が一番の特異点だと思う。銀誓高校、基本的に自分たちの美意識や欲望、衝動に忠実なメンバーが多い中で、部長副部長である千夏と黒川さんがそれぞれ理論と理性で後輩たちを律しているという構図。
 印象的なのは、琥珀谷の1回戦を見ていた忍が同じ二年生である唯に微かな対抗心を燃やすのを見て、アーニャが千夏に忍を唯にぶつけるように申し出るも窘められる一幕。
 勝つためのオーダーよりも戦いたい相手と戦う、つまりは理屈よりも感情を優先するアーニャに対し、強く釘を刺す千夏ですが、103話での音葉さんへの台詞や杏への態度からも分かるように決して彼女は人の「想い」に対して無理解ではない、むしろ分かった上で部長としてチームを勝ち進めるために全てを受け止める人物として描かれているんですね。
 その在り方への危惧を杏が口にしたりもしていますが、そんなチームの顧問に破天荒ながら人を良く見ているしゅがはさんが配置されているのもまた面白いバランス。真に自由奔放な琥珀谷とはまさに好対照なチームであるわけです。

 チーム間での価値観の違いと言えば、主人公チームである青学にも当然当てはまります。
 明示された卯月とかな子の断絶。テニスとは誰かと一緒に楽しむもの、というのが卯月にとって信じて疑わなかった事柄であるわけですが、それ以前にもチームのためにどんな手を使ってでも勝つことを決めていたフェイフェイとの対比も描かれています。
 迷うフェイフェイに対して「テニスを楽しもう」と卯月は声を掛けるのですが、フェイフェイが見出したテニスをする理由は「楽しいからじゃなく面白いから」と、究極的には同質な解答だとしても明確に違うアプローチでそこに辿り着くんですね。ただ、そこで生じた価値観の違いに卯月は直面しなかったから、ここに来ていつの間にか開いていたかな子との意識の差に打ちのめされるわけです。すげぇ構成だ。

 誰もが自分固有の価値観を持っている。これはつまり、主人公チームに比重を置いて描かれたとしてもそれぞれ抱える想いに貴賎はない、という黒帝戦でも『勝負』を通じて示されたテーマであり、その上で自分の想いや相手の想いをどうするか?という問にも発展していくわけです。
 『ここまで来たんだ』『それがどうした』というサブタイトルが秀逸ですが、青学VS翡翠ヶ丘を通じて描かれたのがまさにそれ。
 色々な想いを抱えてここまで来た、だから負けられない。
 それはどちらも同じことであり、それぞれのスタンスを明示するようにだからこそ容赦しないたくみん、知ったことかと吹き飛ばす仙崎ちゃん、それがどうしたとジレンマにケリを着ける加蓮が描かれるわけですね。
 翡翠ヶ丘戦は全体的にビターな風味で、両校共に満足な状態では試合に望めず、特に突発的スランプに陥った卯月と響子の試合はどちらにとっても後味の悪い結末になりました。
 響子の「もっと強いと思ってたけど」という台詞が白眉。彼女は卯月と蘭子の試合を観戦し氷河期世代の一員として何かを感じていたからこそ、期待を裏切られる形になったし対戦相手に不満を抱かせてしまったというのは「誰かと一緒にするテニスは楽しい」という信条を卯月自ら破ることに繋がる。相手を信じてオーダーを組んだ翡翠ヶ丘が、自分を信じられなかった卯月によって計算を狂わされ敗北するという結末(後にのあさんが語る言葉に繋がる)が実に皮肉です。
 まあそんな加蓮対凛戦に次ぐ苦さを誇るエピソードにも救いはあって、「ここまで来たんだ」という自分の想いしか見えてなかった巴が、現実を受け入れた上でやれることを精一杯やるという新田さんの「想い」を汲み取る継承のシーケンスを以って幕が降ろされます。
  
 もう一人、新田さんの在り方に影響を受けた人物が。
 それはもちろん、我らが加蓮部長。泰葉戦で「チームのため先を見据えて温存するか」「リスクを承知で自分の意志を押し通すか」という2択を迫られ、迷わず後者を選択したことを早苗先生に叱られる加蓮。新田さん戦では、切り札を封じ力を抑えて臨むことに。
 そこで加蓮が辿り着いた答が「全力を出す」という意味の転換。
 後先考えず一試合ごとに力を出し尽くすのが、これまでの加蓮の全力。だけどチームの一員として、部長として「今の状態でのベストを尽くす」ことが全力の定義なのだと、そうアップデートしたわけですね。
 これが泰葉戦の延長線上にあるのが素晴らしくて、泰葉の言う「選手としてのベスト」を加蓮は理解したことになるのだけど、一方で泰葉は加蓮の苛烈な想いに触発されてかけがえのないものを手に入れたわけで、双方が双方に影響を与えあうという構図がここでようやく完成されるんです。構成力~~~!

 さて、誰かとテニスをする、絶対的だったその楽しさを疑ってしまった卯月。かつてない主人公の翳りから、怒涛かつごく自然な流れでハリアーPらしいお祭り展開になだれ込むのには脱帽するしかありませんでした。
 最強チームと言っても過言ではない超豪華な面子。そんな彼女たちとのなんだかんだで楽しげなテニス、そして突如現れたのあさんの言葉を受けて、卯月が何を得たのかはまだはっきりとは描かれていませんが、誰もが異なる価値観を持っていたとしても、だからこそ卯月の信念にも間違いはないのだと、その気付きへの兆しがあったことは確かです。
 この辺は同時に描かれそうな卯月とかな子のテニスをする理由を楽しみに待ちましょう。


 価値観の違いについて散々書いてきましたが、本作では世代の違いによる感覚の差も描かれているのが印象的。「一緒にテニスをする尊さ」は、「ずっと一緒にはいられない儚さ」と表裏一体。
 象徴的なのが、誰かと一緒にテニスをする喜びを初めて知った泰葉が、トライアドを指して「これからも一緒にテニスを続けるんですか?」と凛に問いかけるシーン。
 未央や美嘉、そして凛。一部で描かれる「これから」の話。当然、彼女たちは高校3年生であり、進路を選ぶ岐路に立っているわけです。
 未央と美嘉はプロ選手になる。「最後」と言われてしまった未央、今年になって高校テニスに参入した美嘉。プロになったら、きっとこれまでのようにみんな一緒にはテニスが出来ない。未央はテニスの楽しさは疑ったことはない、でもそれは「一緒に」が永遠のものではないということを受け入れた上で成り立っている絶対性であり、卯月はそこが分かっていないから今回壁にぶつかってしまったとも言える。卯月と蘭子の試合を見届けた未央の暖かな視線が、自分が通った道を歩む者への慈しみを孕んでいたのも印象的です。
 ただ、「別れ」があれば「出会い」もあるのが世の常であり、ここでも現役プロ選手であるのあさんが誰よりも先の視点に立っているという美味しいポジションにあることが分かりますね。未央もその辺は理解しているだろうけど、実感としては得ていない(おそらく卯月との試合でそれが描かれるはず)から。
 さて、「続ける」「続けない」の岐路に立ちながらも未だ過去に縛られるメインヒロインの凛ですが、奏との会話で気付きを得た「新しい場所」というのが、まさに先述した「出会い」と同質の答ですね。
 そもそも、紅葉に来た時点でトライアドに次ぐ新たな出会いは果たしているのに、加蓮と奈緒との約束があるから前に進めない(あくまで一側面ですが)というのが、彼女が迷っている所以であり、だからこそ残っているのは「加蓮と奈緒の決着」だけであるわけです。逆に言えば、凛に出来ることはもう何もないし、だからこそ立ち位置が定まらず揺れ動いていたというのもあるんですね。本当、業の深いユニットやでぇ......。
 以前記事で書いたように凛が次へ進ためのステップは既に描かれていると思うので、本当にあとは加蓮と奈緒の決着を見届けるだけなんですが、だからこそ次へ向けての更なる何かがこの先も描かれるんじゃないかと、期待はしています。

 さて、そんな凛を見て「ああいうの嫌い」と切って捨てたのが紫天王寺のみく。
 「想いなんて自分勝手だよ、だって試合に関係ないもん」という台詞が象徴するように、何処よりも純粋にテニスをしているチームの一員であるからこそ、余計な想いを持ち込んでくる無粋さを否定する。ここまで言うのは紫天王寺の中でも取り分け真面目なみくだけだとは思うけど、とにかくまるでドラマを背負っていない紫天王寺がここまでに書いたそれぞれの想いへのカウンターとして機能していて、そういう存在があるからこその群像劇であると私は思うわけですよ。特に悪いことはしてないけど無駄にヒール感満載で、捉え方によっては意志の敵にもなり得る、一番ハリアーPらしいチームだと思います。大好きなんですよ、紫天王寺。
 ただただ純粋に強い相手と面白い試合をすることを求める紫天王寺に、かつて公式試合にも出ずひっそりと楽しんでいた藍子と文香さんの率いる灰原高校が、数々の敗北を乗り越えて、ダークホースとして台頭し、全国制覇を目指して今、他校のマネージャーとも手を組み形振り構わず勝ちに行く。
 単純なマッチアップへの期待ではなく、テーマ性に重点を置いた組み合わせでは最も楽しみなのがこの紫天王寺と灰原の決戦です。

 多種多様な価値観が入り乱れ、錯綜しつつも各々が頂点に向かってただ突き進み、そして今ついに激突する。
 これ以上に熱い物語があるだろうか、いやない(反語)。
 合計20試合全てを描くというハリアーPの意気込みに、期待は高まるばかりです。
 嵐の準々決勝、ついに開幕!



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Comment

No title

『テニプリンセス』の感想が上がっていて、嬉しくて一気に読みました。
紫天王寺の立ち位置は非常にユニークですよね。余計な想いを抱え込まず、純粋にテニスの試合を追求するという姿勢は、他の学校と比べても際だっています。
そして紫天王寺と同じ関西の代表でありながら、金舞京の方は(阿関先生があんまりなのが大きいけれど)レギュラーの誰もが顧問の楓さんへの「想い」を抱えていて、それなしではテニス部を続けられなかったという点で、ある意味紫天王寺と最も対極的なのではないかと思っています。金舞京のそうした点は、弱さといえば弱さかもしれませんが、一方で実に高校生らしいところでもあるわけで、チームとしては他校に劣らず非常に魅力的だと思います。
その中で最も金舞京らしさを体現しているのが、「四強」と評されるテニスプレーヤーとして卓抜したセンスを持ちながら「選手」でいられなかった塩見周子であるわけで、彼女がどうなるかが今個人的には最も気になっています。金舞京はこれから白王との対決が描かれるわけで、おそらく結果は・・・・・・なのでしょうが、周子や紗枝はんらの抱える「想い」が、楓さんや白王との対決を通して、どのように昇華されるかが今から非常に楽しみです(それにしても上の感想を読んだ後、改めて全国編を最初から読み返してみると、ハリアーPの配役設定のセンスには舌を巻かずにはいられません)。
準決勝はどれも眼を外せない対決だらけなりそうで、感想を書かれるのも大変でしょうが、次回も楽しみに待っています。

No title

もう一つ、何の前触れもなくいきなり小梅ちゃんが登場したのには驚きました。ユニフォームからして次代の紅葉を担うレギュラーなのでしょうが、凛たちとどう絡むのか、これも目が離せないですね。

Re: No title

>大百科の編集者さん

コメントありがとうございます! 

金舞京、記事内では全く触れていないのですが、というのもここと白王の試合だけ何が描かれるのかがまったく予想が付かないんですよね。金舞京の生徒たちは強くてもまだ子ども、だけど慕われる楓さんもまた......という相互関係が魅力なのですが、そこがどう活きるのか楽しみです。

小梅ちゃんは、前を向き始めた凛との絡みが描かれるんじゃないかなー、と予想。ここで初めて紅葉の次世代の話が出る、っていうのはタイミング的にアリな気がします。

No title

テニプリンセスの感想をちゃんとまとめた形で書いてる人は少ない(と思うので)読めるのが嬉しい

Re: No title

>名無しさん

コメントありがとうございます。

私の知る限り、こんなことやってんのはウチのブログだけですね。誰もやってない、というだけで価値があるのはいいのですが、こんなに面白いんだからもっと皆語ってくれ、という気持ちが無きにしもあらずです。

No title

自分ももっとテニプリンセス語りたいのでブログ持ってないけど、なんか考えてみます

Re: No title

>みはさん

コメントありがとうございます。

ニコニコ大百科の掲示板でも、Twitterでも、媒体は色々ありますけど、結局何がいいんでしょうね。
とりあえず、Twitterでのハッシュタグ利用が浸透すればもう少し盛り上がる気もしますが、はしりになる度胸はないという......。
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アニバタ Vol.6アニバタ Vol.9に寄稿しました。よろしくです。


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