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輪るピングドラム

小説版 「輪るピングドラム」 感想

場面場面のインパクト、盛り上がりは映像媒体のアニメ版には遠く及ばないけど、小説版には小説版なりの味があってよかった。

アニメ版との違いの一つに、陽鞠の心理描写が増えてる点がある。
アニメでは、どうしたって兄弟から大事に守られるお姫様という側面が強かった。
小説版では、彼女が家族を維持するために意図的に気立てのいい優しい妹を演じてきたことが示唆され、生々しい描写も合わせて陽鞠を等身大の「女」として描いていたように感じたな。


大きな相違点として、高倉夫妻への感情の整理も描かれている。アニメでは、晶馬が自らの置かれた境遇の元凶として両親を糾弾したまま物語を終えている。

小説版ではこの点を補完するように、たとえ許されない犯罪を犯した両親であっても、憎みきることができない晶馬の感情を描いてきた。

晶馬は一度崩壊した家族というコミュニティをもう一度見つめ直す必要があったから、冠葉を取り戻す前段階として両親への愛をも認める形にしたのは見事な補完だったと思う。

彼が最終的に分け合った罪の中に両親のそれが含まれていたかは定かではないが、辛いことや悲しいことも受け入れて分け合うことが家族だとするこの作品のテーマにも合致していているように思えたな。


苹果の存在感も思いの外増していたように思える。その理由は晶馬の心理描写が増えたことが大きいかな。アニメの後半ではやや素っ気なく見えた晶馬の態度の裏腹に、苹果を頼り求める思いがあったのは納得だし、ラストシーンの重みも増した。

初めて家族以外で本当に心を許した存在。彼らの関係は恋人未満ではあったけど、互いを気遣い寄り添う関係に愛があったのは言うまでもないだろう。

さて、晶馬が最期に苹果の代償を引き受けたわけだが、これはつまり高倉家の罰を彼女には分け与えなかったということ。つまり苹果は結局晶馬から家族として認められなかったことを意味する。なぜなら家族とは愛も罪も皆分け合うものであり、晶馬は「これは僕たちの罰だから」と僕たちの中に苹果を加えなかった。

この辺の解釈にずっと戸惑っていたわけだが、小説版で追加されたワンシーンでようやく理解できたような気がする。


「晶馬、俺は見つけたよ。本当の光を」
「知ってるよ。僕だって見たんだから」


冠葉にとっての光が陽鞠で、晶馬にとっての光が苹果。
彼らが命をかけて愛すると決めた人たち。彼女たちに愛の記憶を残して、彼らは透明になる。
口では愛も罰も分け合うと言ったが、結局かっこつけたがりの男たちは愛する女の分まで罰を引き受けた。

あの状況で誰もが助かる道はなかった。残酷な運命が支配する氷の世界は変えられない。
でも、人はそんな世界でも光を見つけられる。きっと何者にもなれなかった兄弟は、変わりにそれを見つけたんだ。愛による死を選んだ彼らはご褒美の林檎を手に、これからもどこかで生きて行く。

一見して兄弟の自己犠牲によって救われたかに思える陽鞠と苹果も、それぞれ大切な人を失ったことで結局は罰を受けている。彼らは確かに愛と罰を分け合ったのだ。

生きることは罰で、生きていくためには愛が必要だ。
それらを受け入れて分かち合うこと。彼らはあの極限状態の中で、確かに最善の選択をしたに違いないんだ。



人が生存戦略していくために何が必要なのかわかっていたくせに、それを見ようとしない眞悧。 誰かが選ばれるということは、誰かが選ばれないこと。世界の負の面を決して看過できない彼は、ただひたすらに美しい世界を求める。対する桃果は、辛いことも悲しいことも起こる世界のありのままを美しいと思っているから、二人は相容れることのない存在なんだと思っていた。

しかし、小説の追加シーンで乗り換えられた運命の列車に乗ろうとする桃果は、なんと「一緒に行きたいなら連れて行ってあげる」と眞悧に誘いかける。そしてそれを即答で拒絶する眞悧。

わずか二行のこのシーンがすごく胸に来た。桃果の慈愛と、眞悧の潔癖さを見事に表している。眞悧は確かに桃果を必要としていた。しかし、乗り換えの列車に乗ることは、すなわち高倉家の出した答えを認めることになる。

氷の世界にいたままで果実を手に入れた彼らの答えは、間違った世界を容認するものであるがゆえに眞悧は否定することしかできない。どんなに桃果の手を取りたくても、迷わずに信念を貫くことを眞悧は選んだんだ。

あれ? こう書くとちょっとカッコいいぞ? さすがです、眞悧先生!シビレましたー!

これすごくいいシーンだからアニメでもやったら良かったのに、もったいないなー。


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アニバタ Vol.6アニバタ Vol.9に寄稿しました。よろしくです。


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