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ギルティクラウン

ギルティクラウン 最終話 「祈り:convergence」 感想

結局アンチ英雄譚だったのか? 難しいお話でした。


涯はやはり魔王を演じていただけでした。
彼は茎道に拾われてから王となるために他の候補者達と競わされ、まさに淘汰されるか生き残るかの二者択一の状況に置かれ育った子供だった。

そんな彼が出会った集は、快活で勇敢で家族にも恵まれた、何一つ持っていない涯には眩しく見える、ヒーローのような存在だった。

しかし、かつて自分が憧れたヒーローは成長するにつれ人の顔色を伺ってばかりの暗い少年に。
それを見た涯は、半ば強引に集にかつての自信を取り戻させようとすると。

涯の最終目的がマナの解放だったことは間違いないが、彼は集をも取り戻したかったんだと思う。
最初は彼を導くリーダーとして、そして最後は彼の前に立ちはだかる魔王として。

涯が集に嫉妬を感じていたような描写も見られる。自分が愛するマナが、そして少なからず情を持っていたであろういのりが愛情を向けた集。それを見て、失ったと思われた彼の強さがいまだ胸の奥底に根付いていることを知った。自分にはない強さ。それを目覚めさせるために彼はずっと行動してたんじゃないかな。

それは集のためでもあり、いのりのためでもある。自分はマナを救う。しかし、そうすればいのりはどうなる?
そうなった時に彼女を託すことができる存在は、集以外あり得なかった。

集と涯が、それぞれ好きな女の子を救う、そんなシンプルな物語だったのだろうと思う。



しかし、ここからの解釈が難しい。

集はいのりと共に世界中のキャンサーを一身に集めて消滅しようとするが、いのりが彼を守るためにそれらを引き受けて消えてしまう。

いのりの側から見れば、彼女が自分の意志で集にお礼を言い、好きな人を守って死んでいった感動的なシーンとして納得はできる。

しかし、彼女の犠牲によって集が生き残ったのは、何を表しているのだろうか?
義手を嵌め、失明し、愛する人を失った集は仲間に囲まれていながらも、やはりこれで幸せなのだろうかと疑問を感じざるを得ない姿だ。
目を閉じ、いのりの歌を聴いてこれまでの彼女との思い出を反芻する姿は、記憶を閉じ込めたというロストクリスマス後の世界に一人囚われた住人のようだ。
これは一つの罰なのではないか。あのままいのりと一緒に消滅できたなら、そこまでの命でも救済はあったと思う。罪の王冠を被った優しい王様は、その罰として思い出を抱いて一人生き続けることを強いられているのではないか。

まあ、これは考え過ぎでピングドラムみたいに愛の記憶を抱いてこれからも幸せを掴んでいくというポジティブなシーンなんだろうけど。もやもやするのは多分集に薄幸なイメージが纏わりついているからだろうな。そのせいでポジティブに受け取れない。

また、集の自己犠牲を阻止したことによって救世の英雄の誕生を阻止した、という節があるのかもしれない。

最初から全能感持ち主人公のアンチテーゼとして描かれていた集の着地点として、美しい死に様すら許さずに愛も罰も全て抱いたまま残りの人生を歩ませる、という選択はある意味でこのアニメらしいのであろう。


・シリーズ総評のようなもの

浮いているぐらい素晴らしい音楽と、革新的な映像美が魅力の本作だったが、このブログにしては珍しく割と否定的な意見も書いてきたように、個人的には手放しで賞賛できる作品ではなかった。

よく言われるキャラクターの言動のブレなどは、決して一貫性があるわけではないリアルな人間像の描写としてある程度納得できているのでそこまで不満には思わなかった。ただ、この作品の原因と結果だけ描き過程をすっ飛ばして視聴者に提示する手法は、はっきり言って嫌いだったと思う。理解はできるけど納得できない、しこりを胸中に残していくからだ。この点については最終回を見た後でも変わらず同じ事を思っている。

あ、一部のキャラクターのぞんざい過ぎる扱いについてはギアスでもそうだったのでもう別にいいです。

それでも、上記に挙げた一種のアンチヒーローとしての集の主人公像。互いにすれ違いながらも影響を与え合った集と涯(そしていのりも)の関係性、やさしい王様の話など、興味を惹かれる部分も多くあったのも事実で、だからこそ不満を持ちつつも最後まで見てきた。

なんだかんだ言って集というキャラクターは好きだし、そこはちゃんと描いてくれたので受け入れ難い面はありつつも、それなりに楽しめた作品だったんじゃないかと思う。

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