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ダークナイト ライジング  ネタバレ感想

Deshi deshi basara basara!!! Deshi deshi basara basara!!!
Deshi deshi basara basara!!! Deshi deshi basara basara!!!

ああ、終わってしまった……。
感想としては「あそこからえらく王道な、『継承』の物語に昇華させてきた」という印象。
べインはジョーカーを超えられたか、あるいは本作は前作を越えられたか、の判断は脇に置いとくとして、シリーズ三部作のラストとしてはキレイに完結したと思う。

前作の「ダークナイト」で善悪の概念を揺さぶり、多くのハリウッド映画――特にヒーロー物に暗いテーマを持ち込み、単純な勧善懲悪を許さない空気を作り上げた、は言い過ぎにしても少なからず影響を与えた本シリーズが、最後の最後で王道ヒーロー物の文脈を描くことでちゃんと先に繋がるようにしたことをまず評価したい。

不満点もいくつかあるので、まずはそれを吐き出しておこう。
今作は物語・演出的には前作以上に大味で、多分にエンターテインメント的なケレン味が優先されたかのような印象を受け、テーマを描く上でも影響が出てしまっている。あきらかに「やり過ぎだろ」ってシーンがいくつか……。いや、まあ純粋に楽しかったからそれはそれでいいんだけど。
特に後半のシチュエーションは「リアリティがない」と叩きたがりな人には格好の餌食になること請け合いな描写がされていた。後述するが、この点については一応意味があると思うので一長一短だ。

最大の不満が、終盤で明かされる悪い意味で衝撃的な真実。今回の事件の首謀者と目されたベインが、どうやらビギンズでゴッサムの転覆を目論んだラーズ・アル・グールの弟子にして息子らしいことが中盤で明かされる。奈落の底から這い上がり、鉄の意志でバットマンを打ち破った彼の背景としては非常に納得のいくもの、だった。
しかしここで衝撃の事実が! ラーズ・アル・グールの子供であり、奈落の底からただ一人昇り上がったのはベインではなく、ブルース・ウェインの投資者であり本作のヒロインかと思われたタリアという女性だったのだ!

……いやマジでこのどんでん返しいらなくね?

少なくとも今の時点では視聴者を驚かすこと以外にこのどんでん返しになんの意味があるのかさっぱり思い付きません。この点に何か意義を見出した方は教えてください。
視聴者にはどうしたってベインの方が強く印象に残ってるし、黒幕があの女だと発覚してもちっとも凄みが見えない。むしろバットマンを殺さないようにという命令を無視してすぐに彼を殺そうとしたベインの方がよっぽど賢明な判断能力を持っている。
にも関わらず、今まで語ってきた思想が実は彼のものではなかったこと、奈落を昇りきったことでバットマンを凌駕する魂の強さを得たというのもミスリードだったことからベインの格を下げる結果になってしまっている。
タリアが黒幕だったという事実は、感想を書く上でもやりづらい。
なので、ここからの記述では彼女の思想をベインの思想として考えていくことにします。


さて、ここから本題です。
ますは悪役の視点から。近作のヴィランであるベインは、一言で言うと「破壊者」である。
前作のジョーカー、そしてトゥーフェイスが望んだものは混沌と公平の世界。
ジョーカーが望んだのは秩序の反対としての混沌。彼はバットマンが消えることも、犯罪者がいなくなることも望んでいない、人々が自由に欲望を発揮し、狂った正義の味方が踊り狂う街としてのゴッサムを実現しようとした。
彼はいくつもの凶悪な罠を仕掛けたが、そこには自分で仕組んだものとはいえ一定のルールがあり、枠の中に囚われた人間の中の「悪意」を白日の下に晒すことを望んでいた。

これと比較するとベインが行なったのは、「ルール・規範」という名の秩序そのものの破壊である。ゴッサムシティを「清算する」という表現がされたが、これはつまり破壊と再生という意味だろう。
彼の行なった革命後のゴッサムシティは外からの介入も不可能な陸の孤島となり、そこでは警察組織も法も機能しない、「市民革命」という名の無秩序がまかり通っていた。このベインの計画に乗っかって市民が一斉蜂起したり、富裕層に対する理不尽な裁判が執り行われたりする様はかなり極端なもので、この状況の異常さはともすれば作品としてのリアリティの欠如に繋がるかもしれない。
しかし、ここにベインの行動理念である「秩序の破壊」を当てはめるとここにも意味があることが分かる。文明社会としての常識が崩壊し、無秩序な日常がまかり通っている様。本人たちは何の疑問も抱かずに、ただ雰囲気に呑まれて行動する様はもちろん普段の我々の日常には存在しないものなのだから、リアリティはなくて当然なんだよ! うん、でもやっぱり大味過ぎるよね……。
夜間限定というルールを課していたバットマンが、シリーズ最終作である本作でその約束事を破り日中にその姿を現したことから言っても、前作のジョーカーがそうだったように今作のベインの行動そのものが作品のテーマを表していると言ってもいいだろう。結局このシリーズでは、メインキャラではないモブたち=一般市民たる我々が状況次第では平気で他人を排除し、身勝手な振る舞いをし得ることを最後まで否定もフォローもしなかった。これってある意味では「逃げ」にもなるのかもしれないけど、それこそ市民たち全員がベインに立ち向かう展開になったらそれは途端に「嘘」になってしまう。そこで「ヒーロー」という希望を描くことが許されるからこそ、バットマンでこの物語をやったのだろう。
ゴッサムシティという舞台の中で、もし人々が混沌や秩序の破壊に襲われたらどうなるか? 文明社会の危うさを示唆し、警告を与えることが今の時代に必要なのかもしれない。

ゴッサムはデフォルメされた文明社会の象徴であり、そんな中で人々が堕落し続けないためにどう振舞うべきかという「規範」を示すものとして「ヒーロー」が描かれているのだろう。

バットマンは不殺を始めとして己に様々な制約を課したヒーローである。
それは自らを「悪」と線を引くためではあるが、ジョーカーにその時点で自分と変わらない狂人であると指摘された。
実際ブルースは再び悪が蔓延り、バットマンとしての自分の役割が回ってくることを望んでいる節があり、アルフレッドには「死に場所を探しているのではないか」と不安がられていた。
今回はなっと忠実な執事であるアルフレッドとの決別が描かれる。もうこれは親心と言っていいと思うが、ただひたすらにブルースの幸せを願う彼の姿が無性に切なくて泣けてくる。そんな彼の思いを他所に、ブルースはどこまでも自分を犠牲にし続け当たり前の幸せを見つけようとしない。どれだけ虐げられてもバットマンとしての自分を捨てられないブルースは確かに狂人だったのだろう。

しかしそんなバットマンはベインの前に敗れ去る。
肉体の衰え以上に、心の強さに差があるという。ただ自らの生甲斐としての道を進むバットマンには、強い信念を持ったベインには勝つことができない、とのことだ。
組織としての理想を掲げ、それにより強い忠誠心や精神力、統制を見せる「影の同盟」とバットマンであることに固執するだけのブルースとの対比構造か。
投獄され、ベインに打ち勝つために身体を鍛え始めるブルースだがそこにいた医者もまた魂の強さこそが重要なのだという。というかここまでどう考えてもベインとの比較で話が進んでるんだから尚更あのどんでん返しは余計だったと思うんだけどなぁ。
まあとにかく、バットマン復活までの過程として地の底から地上まで「rise」、昇るというシークエンスを盛り込んできたのは素直にいいと思うし、「Deshi basara」という掛け声(これも昇るという意味)と相まってかなり盛り上がるシーンだった。
死に場所を探していたブルースだが、変わり果てていくゴッサムの様子を見るにつれ徐々に元の、ゴッサムを救いたいという思いが湧き上がり、「このまま死ぬことの恐怖」を取り戻す。恐怖が力の根源であるというのはビギンズでのテーマでもあり、忘れていた感覚を呼び覚ますのに壁の穴からコウモリが飛び立つ演出を入れるのはバットマンの復活という意味でも、ビギンズとのリンクを表現するのにもマッチした手段だ。ここでかつての肉体は戻らずともかつての魂を取り戻すプロットになっているのは非常に熱いし、穴の中から空に向かって上昇するというイメージと上手くシンクロしてるなーと思う。

キャットウーマンも魅力的なキャラクターだったけどちょっと使い方がもったいなかったかな、とも思う。
悪とも正義とも言い切れない、義賊として「中道的」な女性として描かれた彼女。
ジョーカーやトゥーフェイスが示した白か黒、表か裏かの善悪二元論を否定し得るキャラクターだっただけに、犯罪歴を抹消し足を洗うことを望む結局は善寄りの造形になってしまったのは少し残念。ただ、不殺主義を拒否ったりと完全にバットマンに当てられたわけでもないので、あくまで少しの不満だ。猫のようにきまぐれで、善悪の境界を自由に闊歩する彼女が今までの規範を破壊する本作でキーキャラクターとして登場したのは納得である。

最後に、このシリーズが示したヒーロー像について。
ヒーローは結局は偶像であり、だからこそゴードンは嘘を吐いてでもそれが必要だと信じてハービーを英雄に仕立て上げた。
彼は本作で二度、バットマンの正体を尋ねられどちらの時にも同じ「バットマンだ」という答を返す。彼の中ではあくまでバットマンはバットマンであり、それは実在する人物であると同時にゴッサムの守護者としての偶像でもある。
今回初登場した刑事ブレイクは熱血漢で周りから疎まれているゴードンを尊敬していたが、彼がハービーとバットマンの真実について嘘を吐いていたことを糾弾する。
彼は真実こそが大切だと信じており、欺瞞で仮初の平和を作り上げたゴードンの手が汚れて見えると言う。後に彼も「汚れ役」の道に進むあたり、正義の求道に際して手を汚さずには済まないということだろう。

さて、ゴードンは最後の最後にバットマンの正体がブルースであることに気付き、死ぬ前にその正体を市民たちに知らせるべきだと言う。正体に気付いた時、彼の中で偶像は名前を持った個人に変わり、他の人にもバットマンという偶像としてではなくブルース個人として名を残す必要があると主張した。
しかしブルースはそれを否定し、あくまでバットマンを偶像として終わらせることを望んだ。そこで「ヒーローとは誰にでもなれるもの」という答を導き出したのは見事。まおゆうを思い出す。
バットマンという抽象概念が人々の記憶に残ることで、それが個人名ではなく誰もが受け継ぎ得る存在になる。それは「ヒーロー」である彼の意志を、誰もが受け継ぐことができるということ。
受け継がれるのは正義の心。ブルースが幼い頃、警官ゴードンの正義に影響を受けそれが育っていくように、バットマンの生き様を見てブレイク、そしてゴッサムの子供たちがその意志を継承していく。

混沌、あるいは無秩序の時代にでも、次の世代へ希望を紡いでいく、その意志そのものが「ヒーロー」なのだ。

紆余曲折を経て最終的にありきたりとも言える、王道的な解答にたどり着くというのは個人的に非常に好みではある。
むしろ、奇麗事と取られかねないテーマだからこそ、徹底して闇の部分を掘り下げないといけないんだよね。その意味で、ヒーロー物にしては暗めの作風の本作のラストとしてはこれ以上ないベストなものだった、と言っていいのかもしれない。

「継承」と言えば、タリアたち「影の同盟」の行動理念もラーズアズグールのそれを受け継いでいるんだよなぁ。
彼らが「個」でなく「組織」としてその理念に基づき行動しているとすれば、ベインの理念がタリアやラーズアズグールの受け売りでも構わないわけか。だからこそ高い忠誠心と統率を保っているわけだし。
破壊の意志を継承した集団を打ち破ることで希望を示し、それを未来に繋げたというのが大まかなプロット、でいいのかな。

物語はロビンの誕生を示唆して幕を閉じる。受け継がれる意志の物語はちゃんと完結したので、新たにロビンシリーズとか余計なことしないでくださいよー。

あとこれ言っちゃっていいですか? あのラストの一連のシークエンスってどう見てもONEPIECEの鳥人げ(ry

最後に名言を。
「正義を愛する心に……卒業なんてないんだ」


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闇の騎士よどこへ往く?

ダークナイトがきっかけでトリックスターが好きになった21歳の社会人見習いです。


ダークナイトはヒロインの女優さんが変わってしまったので観ない予定でしたが、ライジングがきっかけで観るようになりシリーズ関係なく大好きな作品になりました。ライジングはシリーズ完結篇として好きです。


タリア役の女優さんが昔ビデオで観ていたTAXIという映画でヒロインをやっていたのを最近知ってビックリしました(爆)

ダークナイトのバットマンの決断を観てから(日本のヒーローの生き方を認めてはいけないのではないか?)と思うくらいしんどい気持ちになりましたが、ベインが刑務所で行った演説と最後のブルースのセリフのおかげで今でも時々ライダーや戦隊そしてウルトラを観ています。 


映画を観に行った帰りに雨が降っているのを見てから、ダークナイト三部作の世界に浸る時はシドのレインという歌を聞くようになりました。(イメージソングみたいなものです。)

僕も(これで完結してくれ。)と思っていたので、バットマンvsスーパーマンは複雑な気持ちになりましたが、なんやかんや続きが観てみたいです(笑)

Re: 闇の騎士よどこへ往く?

>シンジンさん

ああああっ! コメント放置しててすみません、ありがとうございます!

ヒースジョーカーの影響力たるや、私も魅了されましたね。
私は特撮ヒーローモノには詳しくないのでアレですが、アニメ作品で見る日本のヒーロー像はそれはそれで良さがあると思ってます。
スーパーマンからなるDCコミック新作群も、楽しく見ていますが、ただの人間であるバットマンがどこまでやれるのか少し心配です(笑)
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私は好きにした、君らも好きにしろ

アニバタ Vol.6アニバタ Vol.9に寄稿しました。よろしくです。


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