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ストレンヂア 無皇刃譚 感想

武士の生き様は戦場の中にあり。

全体的にめっちゃ半端な知識で好き勝手語ります。あらかじめご了承ください。あ、間違いの指摘は歓迎ですよ。


監督は安藤真裕さん。
「花咲くいろは」始めとして監督としても名が売れ始めてる人だけど、私にとってはやはりアニメーターとしての印象が強いですね。
特にアクション作画が抜群に上手いという認識を持っています。
劇場版クレヨンしんちゃんの殺陣を多く担当していることで名前を覚えました。中でも「暗黒タマタマ」のヘクソン夜襲シーンが素晴らしくて好きです。

安藤さんは今作では監督・演出・コンテを担当しており全編見所だらけのアクション活劇に仕上がっています。私も以前からBONESの本気が見られる超絶作画アニメという評判を聞いて気になっていました。

この作品の原画陣はにわか知識しかない私でもヤバいというのがよくわかるメンツで、特に各殺陣シーンを担当された伊藤秀次さん、佐藤雅弘さん、そして中村豊さんは他のBONESアニメでもよく見る顔ぶれでどれだけこの作品がアクションを志向しているのかが見て取れます。
例えば劇場版ビバップなんかは、アクション作監担当が中村豊さんで安藤さんが原画を担当してるし、この両作品の原画陣がかなり被ってたりして面白いです。検証してないけど、多分シャンバラとも被ってますよね。
そう考えると、同じBONESの映画作品なのに原画陣がかなり異色なあたり、ハガレンミロ星はやっぱり映像的にかなり挑戦的な作品だったんだろうなー、と思います。

芝居から犬、馬の挙動まで緻密な作画が楽しめる本作ですが、やはり目玉は殺陣シーン。特にクライマックスの中村豊さんによる名無し対羅狼による剣戟は日本アニメ史上に残る名バトルシーンと言っても過言ではないでしょう。
雪上で足を取られながら切り結ぶ描写や、ギリギリ目で追える範囲のスピーディな体捌き、緩急を付けるように挟まれる「溜め」カット、砦のギミックを最大限利用した大立ち回り、これは見ないと損だと断言できます。
リアルな描写とアニメならではのケレン味が自然に混じり合っているのが素晴らしいです、これが表現できるのは他のメディアにはない、アニメならではの強みかもしれません。


物語としては非常にオーソドックス。
前半は、その身を狙われる少年が一人の剣士と出会い、交流を経ていく過程を描く。後半は囚われのお姫様を主人公が救いに行く、とまあ大雑把に言えば非常にベタな話作りである。
実際アクション活劇に捻ったシナリオは不要なので、あえて単純な筋にした意図はあるでしょう。
しかし、だからといって中身のない作品かと言えばそんなことはなく、ことさら強調されているわけではないにしてもテーマらしきものは見られました。

主人公は生まれ故郷も分からなければ名前もない「名無し」。拠るべきものは不確かな己の信念のみという、いわばどこへ行ってもよそ者――「ストレンヂア」の象徴として設計されたキャラクターだ。
帰属意識もない、気ままに旅をする流れ者の名無しは、一人の少年と出会うことで封印されていた刀を再び抜き放つ。
生きるために望まぬ命を実行したかつての自分と決別し、ただ己の欲することを為すために。

生き様の話で言えば、まさに羅狼なんかは自分のやりたい事が先にあって、それを実現する手段として皇帝の命に従っている。何よりも最優先すべきは自分なので、いざとなれば平然と上司を裏切ります。
野心家の虎杖も、チャンスと見れば領主の殺害も厭わない。
彼らは自らの望みのままに行動するという点で共通した生き様を見せています。

比較対象として描かれたのが、坊主の祥庵でしょうね。彼は仔太郎の身を案じていながら、保身のために彼を死ぬとわかって売りました。
しかしその行為は己の真に望むことではなく、自らが信仰する仏の道に背くものでした。結果的に彼は自ら命を絶つ道を選びます。
そんな彼との対峙で、名無しはかつての自分を思い出しているのが分かりやすい。これが名無しが再び自らの意志で剣を取るための、再生の物語であるということです。

もう一つ、対比構造となっているのが永遠の命を求めるという明の皇帝と、刹那の時に価値を見出す男達の在り方ですね。
この作品に登場する武士達のほとんどは、己の信念や野望のために命を燃やし尽くすことに肯定的です。その生き様は命のやり取りという形で明確に表現されていて、だからこその時代劇なのでしょうね。

中でも羅狼は同集団の仲間達が使っている「痛みを失くす薬」をつまらないものとして拒否しています。名無しもまた、痛みがある方が生きている気がすると薬の使用を拒む。
異邦人であり、アイデンティティの不確かな彼らが唯一自分を確かに感じられるのが殺し合いの只中なのだろう。日本人以上に「武士」の魂を持った二人の異邦人の戦いで、「他人のため」に剣を抜いた名無しに軍配が上がるというのは王道ながら熱いですね。

ナショナリズムとか時代劇とか武士道とかにまったく造詣がないので、表面的な対比構造にしか目が行かなかったのがちょっと悔しい。どうやら2を作るかもしれない、という話があるみたいなので、期待しておきます。あの超絶作画は劇場で見たい。

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Comment

No title

ぽんずさんもご覧になったんですね。
先日のイベント上映もあって、本作に再び注目が集まっているようで嬉しいです。
この勢いにのってどうか続編を・・・!

>クライマックスの中村豊さんによる名無し対羅狼による剣戟

あの一連の戦闘は最高に痺れましたねえ。
人間の躍動もさることながら、足元の雪が吹き飛んでいく様とか土台の崩落とか、モノの描写も凄まじかったです。
画面に映る全てに魂こもっている感が。

時代劇でありながら異邦人を主役に据えることで、国を越えた普遍的魅力を獲得しているのかもなあとも思います。
ブラジルの映画祭でも最優秀賞をとったそうで。

勝手ながら、トラックバック貼らせていただきました。

No title

>江楠さん

コメントありがとうございます。

>続編

プロデューサーの南さんにも2をやりたいという気持ちはあるようなので、あとは予算次第ですね。
既にご存知かもしれませんが、一応ソースを張っておきます。

http://gigazine.net/news/20120505-ufotable-ordet-bones-machiasobi8/


あの戦闘シーンはカメラワークだったり剣戟をエフェクトで表現したりとあらゆるテクニックを結集させたような出来で本当に素晴らしいです。羅狼が飛び降りるシーンは水島版ハガレン4期OPのエドが飛び降りるシーンを彷彿とさせました。

>時代劇でありながら異邦人を主役に据えることで、国を越えた普遍的魅力を獲得しているのかもなあとも思います。

そこですよねー。Amazonのレビューだったかな? で、時代劇なのに「ストレンヂア」と横文字タイトルなのはセンスがないとかいう意見を見て、「いやいやこの作品にはこれ以上ないタイトルでしょ、分かってないなー」と一人にやにやしてました(笑)

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ストレンヂア

・異邦人の國 『ストレンヂア ―無皇刃譚―』  2007.松竹  監督/画コンテ/演出:安藤真裕  脚本:高山文彦 音楽:佐藤直紀  キャスト:長瀬智也、知念侑李、山寺宏一ほか ...
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アニバタ Vol.6アニバタ Vol.9に寄稿しました。よろしくです。


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