うつけ者アイムソーリー

天文部の雰囲気良いなあ。男女入り混じって、仲間内からもチョコがもらえないことを自分からネタにしたり、仲間が疑われて怒る姉さん肌の変な先輩がいたり。何気に今回一番評価が上がった人かもしれない、沢木口先輩。


さて、アニメでバレンタイン回と言えば砂糖を吐くこと請け合いな超絶嫉妬誘起回になるわけだが、青春の苦味をウリにするこの作品はあろうことかカカオ90％のチョコレートを我々視聴者にぶつけてきた。苦ッ！！

一年前の約束を前に、気合を入れて里志に手作りチョコを作る摩耶花。彼女のいじらしくも健気な想いが画面から伝わってくるだけに、その後の顛末には胸が締め付けられる。ところで結局彼女の漫研でのその後は描かれることはないのでしょうか。

部室に置かれた摩耶花のチョコが盗まれた。その犯人が一人しかいないであろうことはなんとなく予想はついていたけど、奉太郎が言う様に問題はWhoでなくWhyだ。
雪の降る帰り道、街灯の下で里志が奉太郎に語った動機は、私には完全には理解できなかったものの、彼がまだすべてを吹っ切れたわけではないことを如実に示していて、非常にやるせない気持ちにさせられた。

どんな手段を使ってでも勝ちに拘り、｢何か｣の第一人者になりたいと思っていた中学時代の里志。彼がその道を諦めたのは、奉太郎がえるに出会ってその才を発揮する前だろうから奉太郎とは直接関係はないのかな。
何かに拘らず、あらゆる知識を吸収してデータベースを自称し、広く浅く物事を楽しむ。その事自体は決して悪いことじゃないが、他の誰よりも里志自身が納得できていない。
摩耶花の思いに応えることは｢何か｣に拘ることになってしまうのではないか。その理屈が言葉遊びのようでちょっと受け入れ難い面はあるけど、ようは里志には彼女に拘りきれる自信がないのだろう。

彼の今回の行動は、摩耶花はもちろんえるまでも傷付ける、まさに若さゆえの過ちによるナイフのように物語に鋭い痛みを添えた。逆説的に、こんな行動を取ってしまう自分だからこそ摩耶花の気持ちに応えるのにふさわしくない、ということかもしれない。ある意味で誠実であるのだけど、その思いが他人を傷つけてしまう不器用さ。
今回の里志を、クズだと言って否定することは簡単である。ただ、モラトリアムの中で自分が取ってしまったある行動が、不意に誰かを傷つけてしまうようなことは大なり小なり誰にでもあるのではないか。
里志は天才でもなんでもない、ただの凡人だ。だからこそ間違いも犯すし、奉太郎のように正しい答をなかなか導けない。それでももがく彼の姿それ自体は、わりと誰にでも共感を喚起し得るものだったと思う。何度も壁にぶつかりながらも前に進む姿勢がうかがえるだけでも十分だ。何より彼のその考えは摩耶花本人には多分伝わっているだろうから。

……うん、でもやっぱりヒドイよね。


珍しく怒りを見せたえるについて。
彼女の人間らしい一面が見れた気がして少し嬉しかった。他人のために激昂するのはこれまでの彼女の描写からは順当なものだけど、いきなり天文部に疑いを掛けたり、自分を許せずに涙を見せたりと内に潜む激情を感じました。うん、もっと考えたいけど力尽きたのでこの辺にしときます。

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