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境界線上のホライゾン

境界線上のホライゾン 2巻 感想

「死んだ奴に合いたい」も「金が欲しい」も「女が欲しい」も「世界が守りたい」も全部“欲する心”……すなわち“願い”だ。


1巻でホライゾンの感情を取り戻し、それによって世界征服宣言をしたトーリ達武蔵一行はヴェストファーレン会議に向け足場を固めるため、まずは極東の暫定支配をしていない英国へと向かう。

2巻は丸々英国編。三征西班牙も物語りに大きく絡み、3つの勢力がそれぞれの国を守り、先へ進むために時には手を組み、時には戦ったりしながら歴史を動かしていく。
序章ということで大枠の物語設定と、「平行線の重なる境界線上を目指す」という物語通しての大きなテーマを描いてみせた1巻。今後は個々の設定やテーマの掘り下げがされるのかなと思っていたが、期待にそぐわぬストーリー展開で余は満足じゃ。

2巻でクローズアップされたのが、この作品の特徴的な設定の一つである「歴史再現」「襲名」というシステムによって運命を手繰られる人々の生き様だ。

再び天上へと昇るため、今の人類は聖譜の記述に従い過去の歴史を様々な解釈を交えつつなぞっていくという「歴史再現」を世界ぐるみで行なっている。そのために、歴史上の重要人物を現代に生きる人間が「襲名」し、その人生をも解釈の範囲内で再現することによってこのシステムが保たれてきた。この英国編からは、「歴史再現」及び「襲名」により運命を決定付けられ、それによって傷を受ける襲名者たちの苦悩が描かれた。

その最たる者がメアリ・チューダーとメアリ・スチュアートを二重襲名する本作のヒロイン「重双血塗れメアリ」だろう。彼女は歴史再現においてアルマダ海戦にて処刑されることが運命付けられていた。さらに、襲名するために300人の同胞を殺し、その罪を背負って生きている。その時に受けた傷を自らの誇りとするしかなく、地脈と一体化し英国の礎として生きることを救いとしなければならなかった。
ロバート・ダッドリーはただの少女だったのが、都合の悪い歴史再現を成立させるためにスケープゴートとして幽閉された過去を持っている。
三征西班牙の総長フェリペ・セグンドも、スペイン衰退の運命を担っており、また過去の戦争の負い目から自らの死に場所を捜し求めていた。三征西班牙に関しては、国そのものが歴史再現の憂き目に遭っていると言えるだろう。

何も歴史再現によって苦悩しているのは彼らのように分かりやすく負の運命が待ち受けている襲名者だけではない。
その一端を覗かせたのは、意外にも英国の海パン紳士ホーキンスである。
今この世において、世界を動かしているのは間違いなく彼ら襲名者である。しかしそれはあくまで過去の歴史の後追いであり、襲名者としての立場も不備があれば簡単に他に取って代わられてしまう。それでも命懸けで歴史再現を全うする彼の仲間は、確かにそこに生きる意味を見出している。ホーキンスはマルゴットとの戦いの果てに、それはスポーツの充実にも似た己との戦いの果てにあるものだという答を見出した。

一方で、幼い頃から襲名者になるべく育てられたが故に、必要以上に「名」に拘る立花・誾の姿も描かれた。
自分の夫が「立花・宗茂」で無くなってしまう焦り、そして二代に敗北し自分自身もまた、宗茂の妻としての「名」を失ってしまうことによる絶望。その裏には、かつて襲名を守るために家に居続けるしかなかった彼女の過去がある。歴史再現によって「立花」の名が彼女の全てになっていた。
そんな彼女を家から連れ出したのが、最初はただの郵便バイト青年でしかなかった宗茂。彼によって襲名そのものではなく、「愛」に生きる道を見出した誾。籠の中から手を引かれ、境界線の向こう――外の世界へと連れ出されるイメージはアニメでは小野監督自らコンテ&原画を担当した12話特殊EDによって見事に表現されていた。


こうした襲名者たちのドラマの中で、共通して問われているのは「他人の人生を生きる中で、いかにして自分の人生を見出すか」という点である。

何が起こるかも、何を為すかもあらかじめ決まっている人生。それはある意味ではレールに敷かれた人生の到達点でもあるが、その一方で「襲名者」としての自分と、「今、ここ」に生きる自分との境界線の曖昧さを浮き彫りにするものでもある。
だからといって、「歴史再現」「襲名」といったシステムそのものの否定はしているわけではない。過去の偉人たちを襲名し、歴史再現を主導することに対し誇りを持っている者がほとんどだろう。それはメアリを始めとした襲名の被害者たちも例外ではない。
そこに存在するのは平行線だ。「歴史再現」遂行のため、襲名者としての役割を果たさんとする義務と、その一方で自分自身の「幸せ」を望むささやかな願い。
歴史再現を全うするためには己の望みを殺さなければならないのか。そんなジレンマを解消する境界線上としてこの英国編が示したのが「強欲」の概念だ。
最後の最後、ホライゾンが己の感情の一つである大罪武装“拒絶の強欲”を起動し、強欲の感情を創世したシーンにそれは表れている。
「哀しまぬ幸いを望みなさい、境界線上の強欲よ!!」
このセリフに全てを集約させる構成はお見事。

強欲に示された答は、襲名者としての義務を全うした上で、己の幸いのためにさらなる先を望むこと。
この辺はシェイクスピア戦の結末が分かりやすいかな。彼女は英国の有名な詩人を襲名している。それは彼女の作家としての実力が襲名できるだけのものという評価の現われでもあるけど、当の彼女自身は自分がシェイクスピアに比肩する実力を持っているとは考えていない。「シェイクスピア」の襲名を越えて、「トマス」の名だけで世界に通用する作家になることが彼女の望みであり、ジレンマでもある。
そんな彼女に相対するネシンバラは、シェイクスピアの作品をアレンジして別の結末を導き出したことで、彼女にその先の可能性を示して見せた。そもそものシェイクスピアの作品も、史実の改変から始まっている。エピゴーネンとしての模倣ではなく、独自解釈による物語の再構成。これは世に蔓延るあらゆる創作物が抱える業であり、可能性でもあるわけだ。
彼女の結論は王としてシェイクスピアを襲名し続けることで、王位簒奪を狙うマクベスと切磋琢磨し先を目指すという「リア王」の物語を越えた物語を紡ぐこと。襲名を保った上で、自分の夢を果たす、これも一つの「強欲」である。

三征西班牙の面々はもっと泥臭い。
まずセグンドおじさんからして自分を犠牲にしてでもその後の国の繁栄を望み、同時に自らの満足としてレパントの海戦で死ねなかった後悔を晴らそうと画策している。大人しい顔して強欲である。さすがの快男子。
そもそもおじさんの場合はハナからやりたい事のためにやるべき事=襲名者としての衰退の義務を利用する強かさを持ってた人で、この辺はさすがの年長者の貫禄。
しかしフアナは彼を死なさず、その上で衰退を共に乗り越えるという強欲さを示して見せた。隆包主将の足掻きっぷりや、モブたちの必至さ。そして敗北してからも火祭を通じて衰退を乗り越えるための景気付けを行なう彼らの姿もまた未来を強く望むが故のこと。
一方の誾さんは、宗茂によって二人の間にある「襲名」を越えた愛の存在を確認し、その上で改めて「襲名」を目指す意志を確認することで一歩前に進んだことになるのかな。

そして点蔵とメアリ。
この二人は自らが損を率先して請け負うことで、周りの人を護るという点で共通した性質の持ち主である。特にメアリが、エリザベスを守るために自ら300人殺しを実行して襲名を確定させたのはその最たる行為だ。
点蔵とメアリが違うのは、あの忍者がパシリを行なう自分を誇りに思ってる点に迷いがないこと。メアリは妹や国の民を守るために自らに傷を付け、損を被っているが彼女自身はその傷を誇りに思えていなかった。罪を犯し処刑されるしかない人生において、誇りにすがる生き方をせざるを得なかった。
だからこそ、その境遇に心底同情し、その身の傷をこれまで彼女が多くのものを守ってきた証として誇るべきだという点蔵に惹かれたのだろう。自分ですら懐疑的だった人生を肯定し、その先を心配してくれたのは彼女にとって大きな救いとなったはず。

一方の点蔵は、メアリの金髪巨乳、じゃなくて国のために損を背負って生きる姿に共感と尊敬を寄せるようになっていく。彼は襲名者ではないけれど、自分の心を抑えて主の命に従う忍としての在り方=義務に自分の本当にやりたい事とのジレンマを感じているのはある意味では同じだ。違うのが、点蔵は己の信念として忍者の生き方に殉じているのに対してメアリは多分に「仕方が無い」という事情が含まれている点か。
そもそも、武蔵の面々は襲名者はいない(厳密には違うけど)と言っていい。極東を飛び回る武蔵が象徴するのは「自由」であり、だからこそ「襲名」に囚われず自分の信念に生きることができている。

二人が持つジレンマの答もまた「強欲」だ。点蔵は忍であるまま、自分の気持ちに正直になってメアリを救いに行く決意をしたし、メアリもまた襲名者としての責務、犯した罪を抱えたまま、その平行線として自分が幸せを掴んでみせることで応えようと決めた。


歴史再現という「ある行為」「ある結果」を強制させられる世界の中で、それを遂行していくその上でいかに自分自身の幸せのために強欲になれるのか。

それが都合の良い未来だとしても、それを望む心はきっと誰の胸にもあるはずだ。「解釈」次第で歴史再現を超えた未来を創造できる可能性のあるこの世界だからこそその「強欲」を通すことができるのだ。得ることだけを望むことができる世界で、境界渡りの欲深き者達はこれからも己の望みのために戦い続けていくのだろう。
一巻に比べて包括的なテーマを扱っているわけではないけれど、この作品特有の設定・世界観に生きる登場人物だからこその生き様を描いた群像劇としての側面が強調されたエピソードだったと思う。。


さて、強引にまとめたところでエリザベスにも触れよう。
あんなトップだったら絶対尽くすし付いて行きたい。自分を臆面も無く「寂しがり」と言えるリーダーがどれだけいるだろう。敗北や失敗をした部下を皮肉りつつも、自分のために働こうとした意志を尊重し自分の周りが賑やかであることを何よりも重んずる。ダッドリーとセシル、決してもともと襲名者としての実力があったわけではない彼女らがエリザベスのために「負けない」と強く思えるだけの説得力を感じた。そりゃあんな王のためだったらいくらでも頑張れるわ。多少抜けててもいいじゃない、部下と一緒に反省会しようと言えるんだから。
そんな彼女が、一番大切だったはずの姉を処刑することでしか約束を守る術がなかったという状況を改めて考えると余計切なくなる。だからこそメアリと互いに交し合った「Save you from anything」を、武蔵へ亡命した彼女を守るために拡大解釈して使うことのできた彼女に救いを感じた。これが彼女の「強欲」ですね。
彼女もいつか「妖精女王」でなく「エリザベス」個人として自分なりの人生を生きられるといいな。いや、今でも十分楽しそうにしてるけど(笑)
今後の展開で彼女とメアリが戦場に並び立つようなことがあったら確実に号泣する自信があります。

※追記
エリザベスが賑やかな王宮を作ろうとしてる理由が、メアリと一緒にいられなくなって寂しいからだと考えると萌える。描写が少なめなので逆に妄想の余地がある、良い妹キャラだ。

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Comment

No title

ぽんずさん感想お疲れ様です

2巻は分厚いこともあって敵味方それぞれエピソードが熱くて好きです
特にダッドリーとセシルの話は作中ではあまり見れないエリザベスの人となりが垣間見えるので好きですね

3巻はアニメ化が難しいですが本格的に歴史再現の舞台で活躍する武蔵勢を映像で見たいです、癖のあるキャラも山ほど出ますし(笑

ぽんずさんが3巻読まれるか分かりませんがもし感想を書かれるのならまた楽しく読ませていただきます

No title

>名無しさん

コメントありがとうございます。

敵側のエピソードが多く見られたのは良かったですね。ああなってくると、今度は武蔵だけでなくエナレスやオクスフォードでの日常が見たくなってくるなー。多分、他勢力が主役の外伝とか書こうと思えば書けますよねあの人。

3巻は今の所どうするか未定です。できればアニメを初見で楽しみたいので、一年くらいは発表を待とうとは考えてますが、我慢できると断言できるほど自分を信用してないので(笑) カワカミンが不足してきたら図書館で終クロを借りるという手もありますが。
まあ小説については他に読みたいのもたくさんあるので、案外長く待てるかもしれませんね。とりあえずしばらくは3期発表待ちですねー。

虚天丸改めシカろーですこんにちは。

俺も今日から読み始めました。
小説慣れしていないので一日2時間ほど読むのが精一杯です(笑)
ぽんずさんのように、ちゃんとテーマを捉えてここまでの感想を書ける人は尊敬しますヨ。

妄想力が欲しい!!

No title

>シカろーさん

コメントどうもです。そして改名おめでとう(?)ございます!

映像媒体と違って紙媒体は自分のペースで読み進められるのが利点ですからね、ゆっくりでいいと思いますよ。

妄想力ですか…、小説とか読んで情景を思い浮かべたりすると養えたりするんじゃないですかねぇ?(適当) 
私は作業に打ち込める集中力が欲しいです。
 
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