アニメを中心に、漫画や映画、小説など創作物の感想を載せるブログです。

漫画

漫画雑感②

銀の匙、暗殺教室、うさぎドロップ、ねじまきカギューの雑感。


銀の匙 5巻

八軒、苦悩の秋。
ここにきてクローズアップされたのは、おそらくは彼の承認欲求に根差したコンプレックスだ。
自分だけでなく、人も馬も豚も、頑張ってるものは報われて欲しいという八軒の想いは一貫して描かれてきた。それはひたすら勉強しても報われずに逃げ出したという過去によるもので、今はそれが彼の主な原動力になっている。

ところが今回は、馬のジャンプに初心者組で一人だけ成功できなかったことで彼のコンプレックスはトラウマという形で触発される。
なんか、こうやって一度ドツボに嵌まると抜け出せなくなるんでしょうね、八軒は。エゾノーではフォローしてくれる人が周りにいるわけで、そこまでは堕ちなかったけど進学校では周りは皆ライバルだったろうからそれですり潰されちゃったんだろうなぁ。

エゾノーでの問題には決まった正解がないから、八軒の欲しい承認――つまり「お前は正しい」という全肯定が得られにくいという側面があるように思う。だからこそ彼は正しいのかどうかも分からずただがむしゃらに突っ走ってるわけで、それが青春ドラマ的には映えてるんだけどテストのように○×が付けられないのが負担にもなってるんじゃないか。丁度良い落とし所がないから、ブレーキが利かずもの凄い勢いで死亡フラグを構築しているような……(笑)

あと、ここにきて御影が可愛くなってきた。やっぱり心を徐々に開いてるということなのかな。思えば八軒の変化を御影はずっと傍で目の当たりにしてるんだよね。逆に読者は八軒の視点から御影のATフィールドが解かれていく様を見せられているので、彼女の魅力が最初は見え辛かったのも計算づくなのかもしれない。


暗殺教室 1巻

「魔人探偵脳噛ネウロ」の作者、松井優征先生の最新作。
とりあえず、電車の中吊り広告ででかでかと宣伝されてるんでビビりました(笑)
ジャンプ編集部はこれを新たな看板にでもしたいんだろうか。正直、それは勘弁してほしいなー。

殺せんせーという人外かつ規格外の化け物が主人公であるという点、そして「暗殺」という通常ならば負の意味でしかない行為から人間の可能性を描くという作劇は前作のネウロを踏襲している。というか、毒を含んだユーモア自体が、松井節とでも言うべきこの作者の「個性」なのだろうな。

先生を生徒が暗殺するとか、地球が1年後に滅ぶとか、ぶっ飛んだ設定に目が行きがちだけど、物語構造自体は全うな教師ものになってたりする。
殺せんせーが生徒に手を出せないというのは、「体罰」を禁じられた教師の図だし、暗殺の仕方を通じて殺せんせーが生徒たちの心を手入れし、長所を伸ばし欠点を克服する意義を教えるのは「個性」を伸ばす現代が目指す教育の在り方だ。

作中では「触手の化け物」としての殺せんせーと、「先生」としての殺せんせーを意図的に分けて描いている。生徒たちも、ただ「生徒」であるだけでなく殺せんせーとの関係においてのみ「暗殺者」という二面性が加えられていて、多分そこに明確な区別を設けてるのは作品のテーマに繋がるような物語構造上の意図があると思うのだけど、まだそこに判断を下すには早いかな。

1年という、作品内での明確な期限が設けられているのも、作者がラストまできっちりプロットを組んでる証拠だろうから、今はまともな(?)学園ドラマを楽しんでおけばいいのだろうと思う。


うさぎドロップ

激しく賛否分かれる最終回だけど、りんにとってはずっと「ダイキチはダイキチ」だったことを考えれば、少なくとも彼女の観点からはあれが正解だったのだと思う。
大吉視点から見ると、本気でりんを娘として扱ってきたことからすれば彼の言うようにりんの気持ちに応えることは残酷な決断だったのだろうけど、それが彼女の幸せには一番だと納得したからこそ踏み切ったのだろう。二谷さんともコウキともくっ付かなかった以上、二人の関係性の終着点としてはあれがベターだったんじゃないかな。

私があまり抵抗がないのが、娘を持って育てたことがないからなのかもしれない。生理的に受け入れられないって人も少なくないだろうし。
ただ、「家族」を作りたい、大吉とずっと一緒にいたい、子供がほしい、といったりんの願いを叶えるための手段として「結婚」を扱ったと見れば、結局は「大吉がりんの幸せのために何かを妥協する(≠犠牲)」という物語当初からのメソッドを一貫して描いているだけとも言える。

間違いなく問題作だけど、全否定してしまうにはやっぱり惜しい作品だと思うなー。


ねじまきカギュー

「トラウマイスタ」という、サンデーで連載していた知る人ぞ知る打ち切り漫画の作者である中山敦史先生の螺旋美少女バトルラブコメディ。

個人的な印象なのだけど、内に秘めた本性を剥き出しにした登場人物を化け物染みた姿で描く手法には「ネウロ」の松井優征先生。そして凝った構図や超カッコイイ決めゴマには「ソウルイーター」の大久保篤先生の系譜を感じる。特に大久保先生とは、共に打ち切り作品があることと、打ち切りが決まってからのぶっ飛んだ展開で人気が上昇したという点で共通点があったり。

この作品の魅力はテンポの良いストーリーと、カッコ可愛いキャラクターやセンス溢れる構図にコマ割り、迫力あるバトルシーン、そして相対化されたキャラクター同士の価値観のぶつかり合いだ。

この作品の最も大きな対立構造は、ヒロインカモ先生が信じる「絶対的キャライズム」と理事長の掲げる「相対的キャライズム」だろう。
キャライズムとは作中では「絶対個性主義」という文字に表されているが、理事長のいう個性は他の弱い個性を駆逐して磨き上げられた「個性」を示している。これは現代教育の場で「個性を大切にしよう」と美辞麗句を並べながら、現実にはただ学力格差を浮き彫りにするだけの偏差値主義が横行しているのを彷彿とさせる。激しい競争に勝ち残った成績優秀者を強い個性として認め、社会構造のピラミッドの上層に位置付けるシステムだ。

一方のカモ先生は、生徒たちには一人一人がそれだけで誰にも負けない個性を持っていると言う。字面だけを見ると奇麗事にしか見えないが、教育が求める「個性」という言葉の本質を示しているのは多分こちらだろう。つまりこの対立構造は、そのまま「現実/理想」の平行線を表していると言える。
このカモ先生が精神的にはともかく肉体的には弱者の位置に置かれているのが面白い所で、信念と思想だけで何ができるのか、というのが物語の一つのポイントになるのだと思う。

まあメインはやはりカギューちゃんを始めとした女の子たちの泥臭く熱いバトルにあるわけで、そんなに深く考えるようなことでもないのかもしれないけど。
ストーリー展開自体は、いつのジャンプ漫画だと思うほどに単純。戦って、仲間が増えて、新たなる強敵が、そしてまたバトルへ――。と、シンプルにもほどがある作品だが上記のように相対化された視点がバトルにも絡んでくるので決して「薄い」という印象は受けない。そして、主人公側の信念はどこまでもロマンと理想に溢れている。
主人公のカギューちゃんからして、「人の愛は有限」という敵に対し「カモ先生の愛は無限なの!」だからなぁ(笑) 愚直なまでに前にしか進まないカタツムリをモチーフにしているだけのことはある。螺旋の真理と言えばグレンラガンを思い出すけど、この作品は理想と現実にどう折り合いを付けるのか、楽しみだなぁ。

キャラクターは皆立ってて、好きなキャラも多いけど一番はアゲハです。本当にああいうのがツボなんだなぁ、自分。


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Comment

No title

>暗殺教室

近所の本屋では売り切れで入手できませんでした・・・トホホ
本作は今のジャンプの新連載陣の中ではトップクラスに面白いですが、仰る通りおそらくプロットはしっかり決められているので、ジャンプの看板漫画として何年も続くとは思えないんですよねえ。
編集部に厚遇されるに越したことはないですが。
ストーリーは今のところ安定して進んでいますが、ネウロのシックス編突入みたいに、途中から状況が激変するような展開もあるのかもと予想しています。

>うさぎドロップ

いや本当、大元のテーマではすごく一貫性ある作品だったと思います。
特別編の第10巻も、キャラクター達にまた深みが与えられていて面白かったです。
ところで、自分のブログへのコメントでぽんずさんが書かれていた、アニメ版第9話での原作になかったエピソードって何でしたっけ・・・?(汗)

No title

>江楠さん

コメントありがとうございます。

>暗殺教室

この作者のことですから、長期連載用のプロットも用意してあるんでしょうけど、それでも余計な引き伸ばしがされないか心配です。
ストーリーについては、設定自体は非常に重いので後半のドシリアス展開は十分あり得るでしょうねぇ。

>うさぎドロップ

あの節は色々ご迷惑おかけしました。

アニメ9話は台風のエピソードです。私の勘違いでなければアニメオリジナルエピソードのはず。
私が好きなのはタクシーを呼んで帰る二谷さんを、大吉が傘をさして入り口まで送るシーンです。
もううろ覚えですけど、二谷さんのハッとした表情からの、彼女の視点から映した大吉のアングル(ちゃんと顔を見れてない)。そして何か決意を秘めた表情になり、無言でタクシーまで歩く彼女の姿に、彼女の「女」としての部分と「母」としての部分の葛藤を見ました。何かスゴイ好きなシーンなんですよ。あれでこの二人はくっついてもくっつかなくても納得できると思えたので、原作になかったのは意外でした。

10巻まだ読んでない……。今度漫喫行った時に探してみます。
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Author:ぽんず
私は好きにした、君らも好きにしろ

アニバタ Vol.6アニバタ Vol.9に寄稿しました。よろしくです。


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