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漫画

3月のライオン 8巻 感想

雲はまるで 燃えるようなムラサキ
嵐が来るよ そして行ってしまう いつも

 もう本ッ当に毎巻すげぇな(笑)
音の無い世界で生きる天才・宗谷名人と零の不思議な交流。倒れても立ち上がり、がむしゃらに前に進む復活の二階堂。そして柳原棋匠と島田八段のむせかえるような大熱戦。最高だった。

 ストーリーももちろんだけど、羽海野さんの表現力が素晴らしい。こういうのを「漫画力」って言うんだろうなぁ。
 天野こずえさんにも通ずるものがあるけど、登場人物の心情やそのシーンの空気感を表現するのってただ絵が上手いだけじゃできないんだよね。コマ割とか、構図とか、詳しいことは全然分からないけど物語の流れに沿って読者に適格な感動を与えられるのって本当にすごいと思う。
 描き込みがすごいとか、一枚絵がキレイとかそういうんじゃないんだよなー。冨樫さんはシンプルな線でとんでもない説得力を演出してるし。

 宗谷名人は本当に宇宙人か何かみたい。「天才」キャラを極端な変人に設定するのはよくあるんだけど、彼の場合は本当に耳が聞こえなくなっても「むしろ好都合」と思うほど周囲との隔絶を望んでる節はある。かといって人間や世界に対して憎しみがあるわけでもない、ただ将棋以外に無関心なだけ。
 才能というのは、どれだけある一つの対象に己のリソースを割り裂けるか、という側面がある。原石は磨き、削ることで宝石として輝きを放つ。彼の場合は世界との関わりを最小限に切り詰めて、全てを将棋に費やしている。彼が生きる世界は我々とは違う。まるで「人ではないみたい」というような表現を作中で零がしたが、それを如実に感じさせる「白い嵐」全体に漂う白い靄がかかったような雰囲気の表現が本当に素晴らしかった。

 以前から零の打ち筋が宗谷名人に似ているという指摘が作中人物からされていたが、今回の対局ではまさに二人がシンパシーを感じているような描写が為された。まあこの「打ち筋」っていうのが登場人物にどう反映されてるのかまだ良く分かってない所があるんだけど(苦笑)。
 とにかく宗谷名人との対局が零にかつてないほどのインスピレーションを与え、強い影響を及ぼしているのはそういう面もあったんだと思う。島田さんが零に理解を示している辺り、宗谷名人と打った人は誰でも多かれ少なかれそうなるのかもしれないけど。零はこれが初の対局だから、ただただ頭にこべり付いて剥がれない興奮に圧倒されている状態。天才に触れることで、一大奮起するというのはあっちの感想でも触れたけどちょうど「さくら荘のペットな彼女」で似たようなことをやってて、こうして比較して考えられてラッキーだなと思ってます。
 あっちでは天才に触れた期間の長短による意識の差が描かれていたけど、本作でもそれを感じた。零は前述したようにあの対局から受け取ったものをひたすらに持て余していて、今の所それはすごく良い影響として描かれている。一方同期の島田さんは、「宗谷と打つのは楽しい」と言いながらも、4巻での対局で天才との広がり続ける差を追うことの苦しみを徹底して描いていることから零との意識にギャップがあることが分かります。
 まだ本当の意味で、零は宗谷という壁にぶつかってない。そもそもこの試合自体、イベントみたいなもので別に同じステージに立ったというわけじゃないですからね。というか、零は将棋をライフワークとしていながらも「名人」になるという目標は別に示してないんだよね。もちろん今後どうなるか分からないから、今回の邂逅は蒔かれた種の一つと受け取ればいいだろう。


 そして絵面の地味渋すぎる柳原棋匠と島田八段の対局。
 これは本当にすごい。最高齢の棋士を通じて描きだしたのは、戦い続けたその先に潜む空虚の恐怖。
 自分が今まで人生をかけてやってきたこと。その果てが何も無い「焼け野が原」だったら? 
 引退という、おそらくこの世のほとんどの人にやってくるであろう終点。掛けていたものが大きければ大きいほど、それはアイデンティティの喪失を伴う大きな転機となる。
 柳原棋匠がその将棋人生の中で託された数多のたすき。期待であり、呪いでもあるそれを抱えて彼は歩き続ける。自分の歩いてきた道を、焼け野が原にしないために足掻くのをやめない姿はもう本当息が詰まるほど凄まじいものがあった。終わりのない道で、進み続けた先に何があるのか、というのは4巻から問われていましたね。それを苦しみながらも必死で探そうとする登場人物たちの様々な戦いに、毎回心を打たれっぱなしです。

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