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スパイラル ~推理の絆~ 感想

 放送中のTVアニメ「絶園のテンペスト」見てたら城平さんの他作品が気になってたので読んでみました。

 
 なるほど、序盤こそ従来の探偵物のような話の運びになっているけど、徐々に話が膨らんでいきトンデモ論理を武器に登場人物たちが相争う「絶テン」でも見られる作劇が目立ってきました。どうやらこれが城平節とでも呼ぶべき彼の持ち味なんでしょうね。
 次々と新たな事実が発覚するにつれ、登場人物たちのスタンスも二転三転する辺りも大きな特徴かな。

 後半で明かされる「創造主」だの「神」だの「悪魔」だのとやたら大仰な設定はかなりぶっ飛んでいますが、登場人物たちを論理的に詰みの状態に置き、絶望させるためのマクガフィンだと思えばまあ悪くはないのではと。
 
 物語としては、最終的に主人公鳴海歩と「彼女」との関係性に収束させる構成が素晴らしいなと。
 本作のヒロイン結崎ひよのはどんな時でも歩を信じ、支え、頼り甲斐のある存在であり続けた。しかしそれは鳴海清隆の仕掛けた最大の罠で、「結崎ひよの」は絶望の淵に立たされた歩が最後の拠り所として選ぶように計算して演出された架空の人物だった。
 たとえその事実を歩が予想できていたとしても、それでもなお彼の心を折り砕けるように周到に張り巡らされた罠。
 しかし歩は倒れなかった。それは、「結崎ひよの」という少女が存在しなくても、彼が「あんた」と呼び続けてきた「彼女」との絆が存在しているからなんでしょう。
 
 「彼女」の今までの行動は全て任務のためのものでそこに本心は介在していなかったかもしれない。そんな目に見えないほど細い糸のような絆を、しかし歩は信じることができた。作品タイトルの「推理の絆」ってのは、要するにそれまでの過程で積み重ねてきた歩と「彼女」の企業秘密なんでしょう。それは完璧なロジックを越えたものだから、清隆の計算を覆すことができたのですね。
 作中でブレードチルドレンや火澄が絶望に陥ったのは過酷な運命の中であらゆる希望に裏切られていたから。だから、最終的に歩の出した結論が「裏切りにあってもなお信じる」というものであるのは作品テーマから言っても、物語構成からしても順当な流れだったと思います。

 「彼女」が歩に言った「たとえ世界中が敵に回っても 私がいます」というセリフ、この「世界中」の中に「結崎ひよの」が含まれていると解釈すると萌えるし燃える。彼女はいい女でした。色っぽい関係には最後までならなかったのがいいですね。
 城平さんのあとがきで、「結崎ひよの」をああいう扱いにしたのは主人公に都合の良いヒロインにしたくなかったとありました。
 無条件で主人公を支えてくれるヒロインの都合の良さを逆に作劇に利用するのは、「絶園のテンペスト」でご都合主義展開に「樹」というガジェットを用いることで話の軸にしてしまう手法と通ずる所があります。この辺のある種メタ的な視点は個人的には好みで、それが絶対的に正しいわけではないにしても作家としての誠実さを感じますね。
 結果的に「彼女」は得体が知れないながらも一個の独立した人格を持ち、歩と嘘偽りのない唯一無二の絆を手にしたキャラクターになったんじゃないかなと思っています。
 
 ってかアニメ版の監督って金子伸吾さんだったのね。監督もやってる人だとは知らなかった。
 今度はヴァンパイア十次界も読んでみたいと思います。


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Comment

No title

本作のヒロインの真実には、僕も初読当時にかなり驚いて、でも確かに遍く「主人公にひたすら奉仕するヒロイン」像の嘘臭さを理屈づけると確かにこういうことだよなあと納得しました。

城平京のシナリオ作品は、言葉や論理というものの良い意味でのいい加減さ、恣意性?を味わえますね。
理そのものの正しさの追究よりもそれをどう活用するか、どうやって他人に認めさせるかに重点を置いたストーリーには何か今日的なものを感じ、また根本ではは人の情動を大切にしているなあと思います。

城平さん単独の小説『虚構推理 鋼人七瀬』もあるんですが、「幽霊をネット言説操作によって退治する」という、これまた城平テイストあふれた作品で面白いです。

あと、時々コントに見えることさえある展開やキャラ同士のやりとりの面白さも魅力ですよねw
『虚構推理』では2頁に一回くらいの割合で笑ってましたw

追記

あと、11巻で歩が「運命が決まっていても、何もしないで後で実は希望があったと知るのに比べれば、無駄でも抵抗した方がましだ」的な主旨の発言をするのですが、『絶園』でも左門さんが2クール目の最初の頃にほとんど同じようなことを言っていて、個人的に「おっ」と思いました。

No title

>江楠さん

コメントありがとうございます。

>城平京のシナリオ作品は、言葉や論理というものの良い意味でのいい加減さ、恣意性?を味わえますね。

ですね。作劇自体は理屈に拠ってはいるのですけど、そこに絶対性は置いていなくて「論理」の曖昧さを上手く表現していると思います。

人の情動を大切にしているというのもまさにそうで、絶テン最新話では人の感情さえも一連のロジックに組み込んだ美しい悲劇が構成されていてシビレました。
ロジックによる袋小路を、「何かを信じる」ことで乗り越えていくというのはスパイラルのテーマであり、おそらく絶テンでもそれをやってくれるのではないかと期待しています。

歩と左門さんにこんな共通点があったとは(笑)
この点にも絶望的な状況においても抗い続ける意志を描くという城平さんのテーマが表れてますね。

>「虚構推理」

これは文庫化待ちですねー。多分今年中には出るんじゃないかなと。
彼の小説では、先日中古で「名探偵に薔薇を」を見つけたので購入しておきました。ああ、また積読作品が増えた……(笑)
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