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輪るピングドラム

ピンドラ雑感 夏芽真砂子はハードボイルドかわいい

新ジャンル「堅ゆで妹」
「タフでなければ生きていけない。優しくなれなければ生きている資格がない」
――レイモンド・チャンドラー

幾原監督曰く真砂子はハードボイルドなキャラらしい。
ハードボイルドとは簡単に言うと、なるだけ感情を表に出さず、冷徹でタフであることだ。孤高で強い意志で初志を貫徹する。まあ、別に決まりきってる訳ではなく、仲良しファミリーを築いて水戸黄門化してる探偵もいるけど。

さて、真砂子は上の条件に当てはまっているだろうか。
冷徹さ、これは目的のためなら手段を選ばないとまではいかないが、九宝阿佐美を利用した上エスカレーターから突き落としたりしてたのでクリアとしよう。
若くして大企業の社長を務め、さらに変装術、パチンコによる狙撃、夜の海に躊躇なく飛び込む度胸と水泳技術。女ながらになかなかのタフガイだ。(蓮雀がいるが)孤高であり、意志も強い。しかし、最も肝心(?)であろう感情の抑制がまったくできていない。冠葉に対して話す姿からは深い愛情、執着が滲みでているし、陽鞠には嫉妬を隠せず、ゆりさん相手にはむきになって言葉のドッジボールをする。

感情的な彼女は、本来ハードボイルドという言葉は似合わない。
しかし、その妥協しない姿勢、愛を貫き戦うその姿には確かに往年のハードボイルド探偵の片鱗を見た。

真砂子はずっと、マリオと冠葉を救う道が交わらないことに、板ばさみになり続けた。冠葉と敵対し、マリオのために日記を手に入れようと画策しながらも、ずっと冠葉に忠告を与え続けた。彼女のともすれば矛盾とも取れる行動原理はすべて「だって好きだから」に集約される。

マリオも弟としてもちろん守りたいし救いたい、だけどそれでも冠葉の愛が欲しいのだ。19話で真砂子は冠葉には愛を送り続けたが全て跳ね返されたという。彼女はかつて自分とマリオを企鵝から引き離すために一人高倉家に残った冠葉が、今自分を突き放しているのが耐えられない。冠葉が自分をどう思っているのか、もう忘れてしまったのか、愛していないのか。ずっと独りで戦い続けた彼女に必要だったのは、再び冠葉と家族になることではなかった。ただ一言、「愛してる」という言葉が必要だったのだ。真砂子は既に晶馬たちがいまだ縛られ続ける家族という絆を超えた愛の次元に立っているんだ。

そして22話。彼女は究極の選択をすることになる。冠葉が撃たれ、警察に包囲され絶体絶命が到来する。このままだと冠葉は助からない、しかし自分が死ねばマリオを助けることはできなくなる。彼女の大切な家族、マリオと冠葉の命を天秤にかけ、彼女は後者を選んだ。「だって好きだから」。冠葉は決して真砂子に対して愛の言葉を口にしない。だが警察の銃撃があったとき、冠葉は迷わずに真砂子を庇った。彼女は冠葉のその行動で確信したのだ。直後にフラッシュバックした過去と同じように自らを犠牲にして自分を救ってくれた。冠葉はあの時から本質的になにも変わっていない。冠葉にとって自分は大切な妹であり、愛する家族なのだと。その証明こそが、真砂子がずっと追い求めていたものだったのだ。

22話のラストシーンはそんな真砂子の絶対に妥協しない意志を感じさせる珠玉の名シーンだった。派手な動きどころか、ほぼ静止画であるのにその力強い立ち姿を魅せる作画・演出、勇壮な音楽、決意を滲ませる堀江さんの演技、すべてが最高に決まっていた。

真砂子はここでようやく気付く、自分がどれだけ冠葉に守られていたのかを、彼がどれだけ自分を犠牲にしていたのかを。冠葉は真砂子にとって「与える者」であり続けた。だからこそ彼女は「今度はわたくしの番」と言う。ただ「与えられる者」の地位に甘んじることを良しとしない。だってこれは互いに果実を与え合う愛の話なのだから。

彼女はあの瞬間、世界の呪いを乗り越えたのだと思う。もちろん負の連鎖は全然止まってないんだけど、想いが一方通行ではなくなった。そして強く美しい愛の戦士として覚醒した。愛の証明一つで救われる、これがハードボイルドでなくて何だというのか(異論は認める)。すごいよ、こんな妹キャラ見たことねぇ。

まさかここまで真砂子を好きになるとは思わなかったなー。彼女が幸せになれるかどうかがこの作品の評価まで左右しそうでちょっと怖い。


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Comment

はじめまして。
ピングドラムの22話を見終わったあと、なんとも形容し難い心境になり、
「なんなんだこの感情は?」と悶々としながら感想ブログ等々をふらついていました。
理屈で考えれば、あの場面の真砂子って、テロリストの脱走に手を貸し、弟を放り投げたダメな人であるはずなんです。でもそんな彼女にものッすごい感動してしまっている自分がいたわけで、それはどういうことだろうかとずっと思っていたんですが、このエントリーを読んで、全てストーンと腑に落ちました。
愛も罰も全て分け合うって放送前から散々宣伝してたのになんで気付かなかったんだよって自分の節穴ぶりがちょっと嫌になりましたがw
冠葉の闇堕ちっぷりが痛々しすぎて直視できていなかった&真砂子がここまでストーリー上で開花するとは思わなかったから仕方ないと自分に言い聞かせる事にします。

で、ふと思ったのですが、「美しい棺」は社会革命を目指すテロ組織を批判するというだけの意味ではなさそうだと思いました。
なんというか、「俺がこんなにも求めても、こんなに頑張っても世界はなにも与えてくれない!」という、結構私たちがとってしまいがちな態度そのものへの批判というか。
ちょっと考えがまとまっていないのですが。

通りすがりがいきなり乱文を書き散らし、失礼しました。ピングドラムもラスト2話、愛の話の行く末を見守りたいです(そういえば最終回が図ったようにクリスマスイブにかぶるんですね)。

>ほんの通りすがりさん
はじめまして。コメントありがとうございます。

>理屈で考えれば、あの場面の真砂子って、テロリストの脱走に手を貸し、弟を放り投げたダメな人であるはずなんです。でもそんな彼女にものッすごい感動してしまっている自分がいたわけで、それはどういうことだろうかとずっと思っていたんですが、このエントリーを読んで、全てストーンと腑に落ちました。

そうなんですよ! わけわかんないのに何故か感動してしまう。そんなアニメなんですこれは! で、後からうだうだ考えて自分なりの解釈を見つけてまた感動するわけです。参考にしていただいて光栄です。

>で、ふと思ったのですが、「美しい棺」は社会革命を目指すテロ組織を批判するというだけの意味ではなさそうだと思いました。
なんというか、「俺がこんなにも求めても、こんなに頑張っても世界はなにも与えてくれない!」という、結構私たちがとってしまいがちな態度そのものへの批判というか。

「美しい棺」という言葉は考えれば考えるほど何にでも、それこそ社会や世界の仕組みにも当てはまる気がしてその万能っぷりに驚かされるばかりです。
「目に見える美しさには必ず影がある」という台詞からも、私たちが盲目的に信じている常識や固定概念が持つ危うさを示唆しているように感じられます。ともすれば倫理観すら否定してしまいかねないあたり、かなりギリギリなラインを攻めていると思いますが…。

>通りすがりがいきなり乱文を書き散らし、失礼しました。ピングドラムもラスト2話、愛の話の行く末を見守りたいです(そういえば最終回が図ったようにクリスマスイブにかぶるんですね)。

ぶっちゃけコメントもらえると超嬉しいので大歓迎ですよ。今年はピングドラムのおかげで寂しくないクリスマスを迎えられそうです。

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