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漫画

漫画雑感⑤

 ベアゲルター1巻とヴァンパイア十字界の感想。


 ベアゲルター 1巻

 ついに完結した「無限の住人」の余韻に浸る間もなく放たれた沙村広明の新作漫画。
 沙村さんは「シスタージェネレーター」は面白いと思うし、「おひっこし」は単行本を持っててたまに読み返すくらいには好きなんだけど、一方で「ハルシオンランチ」はコア過ぎたのか何が面白いのかサッパリ。「ブラッドハーレーの馬車」は氏の嗜虐趣味全開で嫌いじゃないが決して好きではない、と良くも悪くもアクの強い作家なので作品ごとの評価がバラバラだったりします。
 沙村さんの漫画は面白いかどうかは別として、自分の趣味を前面に押し出してやりたい放題やってるからなんか突き抜けてる感があるんですよね。

 じゃあ本作「ベアゲルター」はどうなのかと言うと、「ブラッドハーレー」には及ばないもののあれに近い残虐性のある設定やエグいセックス・暴力描写があるにも関わらずすげぇ面白かった! 「むげにん」は長い長いストーリー物であまりはっちゃけられなかった感があるから鬱憤が溜まってたのかも。
 キルビルすら見てないので良く分かんないんだけどバイオレンス物って言うんですかね? 血と性の臭いがぷんぷんと漂う世界の中で3人の女を軸に展開される様は任侠アクションといった感じで血なまぐさいのにむしろ清々しさすら感じる。
 戦闘描写は「むげにん」で培われた迫力ある殺陣が存分に発揮されていて見ていて楽しいし、SMプレイ描写とか拷問描写は痛々しいのだけど、基本的に作中の女達が「強者」の立ち位置を保っているから「ブラッドハーレー」のように一方的に食い物にされている感が薄くて不快感が残らない。
 さらに女主人公の一人である忍と愉快な仲間たちが作中でコメディリリーフの役割を担っていて、彼らの視点を軸に話が進むから作品全体の悲壮感が薄らいでどこかユーモラスな雰囲気を保っています。この辺のバランスが私好みだなーと。生きるか死ぬかの瀬戸際なのに「女王様」が「犬」の散歩をするシーンはシュール過ぎる(笑)

 ストーリー面では全貌の見えない陰謀劇に加え、隻眼義腕の復讐鬼とチャイナドレスの殺し屋のガチ殺し合い。そして戦闘力はないに等しいのに度胸と機転で狂言回しに徹する忍の立ち回りが見事に絡み合い、わずか一巻分ながら非常に濃い内容だった。
 数巻で完結するそうなので、続きを楽しみに待ちたいと思う。



 ヴァンパイア十字界 

 なんだこれ名作じゃねーか!!

 いや、最初こそ中途半端なファンタジーバトル物でしたが徐々に、敵も味方も入り乱れて「言葉」「理屈」によって作品世界を積み上げていく城平節が発揮されるようになりあっと言う間に別漫画に。
 「力」ある者の義務とそれゆえの孤独。どこまでも正しく高潔であろうとする登場人物たちの想いが錯綜するドラマ。物語の完成度は「スパイラル」以上、そしておそらく「絶テン」すらも越えているんじゃないかこれ? 作中で描かれる悲劇の構成がすごく似てるんだよね。

 この作品の特徴としてチート主人公を真正面から描いた点が挙げられる。
 主人公ローズレッド・ストラウスはヴァンパイアの王であり、やろうと思えば地球を一人で滅ぼすことができる程の戦闘力を備え、冷徹に最適解を見通すその知謀は並ぶ者なく、多くの美女たちからの献身を受け、そして世界のためにその身を犠牲にすることを厭わない聖人のごとき人格の持ち主である。なんだこのぼくのかんがえたさいきょうきゃら。
 この作品では完璧なまでに「強く正しい」ストラウスという主人公が、それがゆえに世界の命運と、存在すら罪となる十字架とをその背中に背負わされる構造になっている。力を持つこと、それが世界を自由にできるという輝かしい一面だけでなく、あまりにも大きな責任を発生させてしまうという負の一面を持っているということが描かれているのだ。
 ストラウスはヴァンパイアの血族はおろか、人間との関係を含めたその先々の全てまで一人で背負い込み、千年もの時間孤独に戦ってきた。それができてしまうほどに彼は強かったから。ノブレスオブリージュここに極まれり。あまりにも大きな責務を果たし続ける彼の姿はまさに「孤高の王者」であり、その気高さは物悲しくも美しい。

 物語の後半になって明かされる過去の真実。この辺の展開というか構成はもう本当すごいです。いつ道を踏み外してもおかしくない状況の中で、それでもひたすらに「正しい選択」をし続けるストラウス。この「正しさ」っていうのが徹底的に「己」という「個」を廃した冷徹な判断で鳥肌が立つ。
 過去編においては彼の周りの人物も皆「最善」を選んではいるんですよ。でもそれは基本的に「ストラウス」のための最善であって、大局的な「正しさ」を徹底できてしまうストラウスの判断とは紙一重で噛み合わないんです。皆が皆、自分の思う「正しさ」を全うした上で構成される悲劇。このストーリーテリングは圧巻の一言。
 
 「王者は孤独」を地で行くストラウスにどうやって救いを与えるか、がラストの課題となるわけだけど、そこで「完璧超人」に対する「愚かな小娘」花雪がクローズアップされるというね。自分を犠牲にしても周囲全てを幸せにしようとするストラウスに対比される形で、自分のことしか考えてこなかったという彼女のキャラクターが最終巻で初めて描写されるというのはちょっと後出しくさい気がしないでもないけどどうなんでしょう(笑) でもあの役割ないとただのピエロだし、終盤に明かすことも含めて計算だったと考える方が妥当かな。
 間接的にステラが救ってしまう形にはなったけど、ブラックスワンであり「愚者」である花雪にしかできないやり方でストラウスの死に後悔を遺さないという結末も中々に美しかった。

 城平さんは完全にツボだなぁ。絶テン無事に完結したそうで、次回作が楽しみです。小説メインで行くとしても、漫画原作は続けてほしい。


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