アニメを中心に、漫画や映画、小説など創作物の感想を載せるブログです。

その他

翠星のガルガンティア 感想

 毎クールの評価記事用に総評書いてたら無駄に長くなったので個別記事に回しました。


 村田監督の描く美術世界、特に翠色の海と船団ガルガンティアのそれは素晴らしかったし、ユンボロやカイトなどのガジェットも魅力的で、民族的なファッションや儀式態様も興味深かった。総じて世界観はなかなかいい作品だったと思う。
 

 しかし、レドの成長物語として見るとその構成や描写に多くの疑問が残る作品。
 銀河同盟の全体主義的な価値観に染まったレドが、ガルガンティアでの暮らしを経て人間味を得ていく。ところが物語の後半殲滅対象として見なしていたヒディアーズの正体を知り、自身の寄る辺を失い生命への価値観と己の行動との間で大きく揺れる。ここまではいい。
 しかし、葬式回でも蚊帳の外だったように、レドに生命観・倫理観の揺さぶりを与えておきながら実際に命を奪う機会や奪った事実に直面する機会は徹底的に物語から排除されており、最終的に悪者ストライカーを倒せばそれでめでたしという単純極まりない構図に成り下がってしまった。
 彼が海賊やクジライカを殺戮した罪は作中でついぞ問われる事はなくなあなあで終わる。せっかく自身の選択によって「守るために人を殺す」決断が可能かに思えたかつての上司、クーゲル中佐との対決も流されてしまった。ヒディアーズを巡って解消できないチェインバーとの対立もあの自爆によってチャラに。
 彼が何も決断せぬ内にどんどん「ガルガンティアへの帰順」というハッピーエンドに向けて勝手に状況が推移していく作劇からは「都合の悪いものから目を背けている」感が拭えず、総じてレドを甘やかし過ぎて主人公として描けなかった物語に思える。

 また、ガルガンティアでの交流も個人的には描写不足。各話単体としてならまだしも、全体を通してみるとキャラクターの言動の不一致とそれぞれ役割の薄さが気になった。尺の問題というか、脚本家同士での摺り合わせや監督や構成による全体の統制ができてなかったように思える。役割を分散し過ぎて住民のキャラが薄く、関係性も上手く構築できているようには見えなかった。キャラもっと減らせただろ。


 ただ、チェインバーを主人公として見ると、これが驚くほどテーマとして筋が通っている。AIという合理性、それも銀河同盟に準拠したロジックによってしか思考のできないチェインバーが、レドと共にガルガンティアでの暮らしを経て「人間性」というバグを得る物語とすれば、ラスボスが死んだパイロットの意志を拡大解釈して暴走したストライカーだというのにも納得が行く。宗教団体の極端に露悪的な描写も、人工知能ならではの行き過ぎと考えればまあ。
 この作品で問われたテーマの一つに「共生」というものがあり、そのアンチテーゼとして最も大きな対立軸として描かれたのがマシンキャリバーとヒディアーズのそれである。プログラムと異生物だからこそ、この対立は絶対に覆らない。
 しかしこの両極端過ぎる対立軸はつまる所、自分の意志を持って生きる意味を全うするというこの作品における理想の人間像を肯定するためのものだ。
 まあレドの選択を描かなさ過ぎてそこんとこが十分に描ききれてないのが一番の問題なわけですが。

 チェインバーは一応レドを上官として判断を仰ぐようプログラムされていて、レドの方もチェインバーの性能におんぶに抱っこなのでこれも一つの「共生」関係と言える。
 ヒディアーズ殲滅を使命としたパイロットの支援啓発インターフェイスシステムという所がミソで、チェインバーの目的はあくまでレドのサポート。だからレドの生きる目的が変わった時、チェインバーのそれも更新される。あくまでプログラムの延長線上にある解答で、自分の存在意義を全うしてみせた。それはロジックのすり替えという逸脱行為で、これもまたストライカーと同じく暴走と言えるのだけど、違うのは銀河同盟の兵士としてではないレドという人間個人としての正しい判断を評価することでチェインバーもまた人間性を得たということ。
 だからこその暴走であり、チェインバーは最終的に自壊を果たす。それは同時に、クジライカを最早殲滅対象としては見れないレドの前途を阻む存在である自分自身をも排除するというロジックで彼の存在意義に繋がる。
 つまり、最終的にレドをサポートし啓蒙するという役目を全うした彼こそが唯一この物語の主人公足り得たと言える。
 そして役割を果たしたチェインバーが、クジライカの巣床となって共生を為すという美しいラストシーンに。

 まあ最終回の流れは少し唐突で、チェインバーがそこに至るまでの描写が足りてるとはやはり思えないけど、課程はともかく一連の着地の流れはキレイだったので当初の評価を少し上方修正しときます。


関連記事
スポンサーサイト
Comment
Trackback
Trackback URL
Comment form













管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

ぽんず

Author:ぽんず
私は好きにした、君らも好きにしろ

アニバタ Vol.6アニバタ Vol.9に寄稿しました。よろしくです。


このブログについて

※感想記事はネタバレがデフォです。

当ブログはリンクフリーです。お気軽にどうぞ!
現在相互リンク募集中


twitter
検索フォーム
ランキング
にほんブログ村 アニメブログ アニメ感想へ

アクセス解析
外為どっとコムの特徴
ブロとも申請フォーム
QRコード
QR

Page Top
Powered by FC2 Blog | | Template Design by スタンダード・デザインラボ