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映画

風立ちぬ 感想

 「風立ちぬ、いざ生きめやも」


 宮崎駿の最新作は、個人的には「風の谷のナウシカ」を彷彿とさせる作品だったように思う。
 物語は主人公堀越二郎の視点から、彼の半生を綴ったもの。現実から夢の世界に至る境界が曖昧だったり、時間がいつの間にか飛んでいたりと物語の流れは唐突かつシームレス。察するに、これは二郎の回顧録という体で描かれた作品なのだろう。

 まず映像面としては雄大な大自然の描写が相変わらず素晴らしく、さらに婚儀のシーンに代表されるように日本人の所作に美しさを感じる部分も多々あった。地震が迫りくるシーンのおぞましさもすごかった。
 なにより風の描写。なびく草木はもちろん、次郎とヒロイン菜穂子を繋ぐキーとなる帽子や傘が宙に舞うシーンも印象的だ。そして戦闘機が飛ぶシーンには確かに理屈抜きで胸躍らせるものがある。

 私は特にロボットや戦闘機、戦車などが好きなわけではなく、そのフォルムにそこまでの美しさを感じたりはしなかったのだが、二郎はとにかく飛行機の持つ美しさにどこまでも魅入られた人間だ。
 自由に大空を飛ぶ。それは誰もが一度は思い描く夢であり、設計者としてではあるが次郎にはそれを実現するだけの情熱と才能があった。
 しかし彼が生み出しているのは戦争に使われ、人を殺すための兵器だ。その事実は動かない。純粋な空への憧れと、それに付き纏う戦争の道具という現実。
 二郎は物語を通して自分の設計した飛行機が空を飛び、国家に運用される機体となることを夢として行動する。その姿はとても尊く映るし、そんな彼を支える人たちは紛れもない善人に見える。しかし最終的に夢を叶えた先に横たわるのは国を滅ぼしたという現実だった。
 普段なんの疑問もなく賛美され、尊いとされる「夢のために生きる」という行為が時として残酷な結果を生むという矛盾。視点を変えればエゴイズムでしかないクリエイターたちの情念が、どんな結果に繋がるかは別として時代を動かし進めてきたこともまた事実だ。
 あるいは「プラネテス」のロックスミスなんかは、そこに自覚的で偽悪的に振舞っているだけまだ真摯と言えるのかもしれない。
「……気安く愛を口にするんじゃねェ」

 しかしながら、人間が矛盾を内包して生きる生物だということもまた事実。黒か白かでは分けられない、自己欺瞞さえ抱えて生きる人間の姿が描かれていたように思う。
 それは先述した戦闘機を作るという行為もそうだし、二郎と菜穂子の関係性にも表れている。結核で本来なら療養していないといけないはずの菜穂子は、残りの人生を二郎と過ごしたいがために彼のもとへやってきた。しかし二郎は仕事に追われて彼女をほっぽりっぱなしで、さらにタバコのシーンに代表されるように気を遣わせてしまってすらいる。対外的には二郎は妻に甘えっぱなしで、彼女の献身に比べると自分勝手にも見える。
 しかし、菜穂子からすればそれでも「幸せ」なのであり、永くない命を精一杯生きるために夫の存在が支えとなっていることも良く分かる。だから、決して正しいとは言い切れないような関係でも、間違ってると言うことはできない。まあその全部受け入れてくれる女性像がちょっと鼻に付く感じはあった。愚痴の一つでもあればまた違ったのだけど。

 二郎は卑怯な男だと思う。度々彼の「夢」のシーンが挟まれるが、そこで交わされるやり取りは決まって彼を後押しし、全てを許容する。最たるものがラストの菜穂子が言う「生きて」。夢と最愛の妻を失った二郎は、それによって生きる希望を保つことができた。あまりにも彼に都合の良い夢は、内に潜んだ矛盾をそのままに自己肯定してしまう。しかしそれこそが人間の持つ弱さであり、生きるために必要な当たり前の機能だとも思う。

 「風の谷のナウシカ」もまた、自身のエゴイズムとも取れる思想を以って未来に生きるはずの人類を皆殺しにするという選択をし、行く先には滅びが待つだけの世界で「生きねば」と本作と同じような結論に辿り着いた。
 その際ナウシカは言い訳めいたことは言わないし、その決断に伴う残酷さを真正面から描いている。しかしナウシカは超人めいたメンタルの持ち主で、それこそ「救世主」として描かれたキャラクターであり、普通の人間はそこまで強くはあれない。
 もし風立ちぬが「矛盾」にクローズアップした物語なら、二郎が戦闘機を完成させたあとにその戦闘機が人を殺し、堕とされていく様をきちんと描写すべきだったと思う。しかしそれをしなかったということは、この作品はあくまでナウシカとは違う普通の人間である二郎を描く物語だったということだろう。

 決して望んだわけではない、けれど避けられない「矛盾」に向き合った作品かと言えばそうではないが、その「矛盾」を綺麗事でも欺瞞でもいいから昇華して生きていく「人間」の姿に焦点を当てた作品とするならばなかなか良い作品だったんじゃないですかね。
 それはきっといつの時代でも同じ。絶対の答などないから、「矛盾」を抱えながらも風の吹く限り生き続けなければならない。ボブ・ディランも言ってたじゃん、答えはいつも風に吹かれてるんだよ。


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