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漫画

ねじまきカギュー 12巻 感想

 愛の求道者と愛の伝道師たち。


 生徒会総選挙編に関しては以前の記事でまとめを書いたのでもうあまり言うことはないんだけど、やはりここにおいても「愛」の物語の枝葉としての「偽者/本物」という話は続いているなと改めて感じた。

 「自分の言葉で語らねば誰にも届かない」と紫乃ちゃんが繰り返し言っていたように、彼女が選挙戦で相対するのは誰かの傀儡となっている少女たち。万里倫は親友の田中和子の言いなりだし、杏音に至っては自分の意志すらない文字通りの人形だった。
 それは逆説的に、全ての虚飾を排した後に残ったものこそがその人の本質であることを意味する。
自分の代わりに言葉を紡いでいた田中和子を失った万里倫が最後の最後に頼ったのは、最大の個性である「歌」だった。
 そしてまさに虚構の塊のような人格を持っていた衿沙に至っては、自意識をすり潰され幼児退行することによって皮肉にも純粋な存在として生まれ変わり、逆に自身の「偽者」を糾弾する立場に転換している。

 彼女たちを「本物」足らしめるのは、「歌」や「声」といった才能と努力の結晶だ。これは8巻で織筆が富江に告げた言葉だが、「お前が打ち込んできたものは 決して嘘をつかない」。これがこの作品世界の根底に流れる大原則である。文系だろうが体育会系であろうが努力の性質に貴賎は設けず、ただそれまで彼ら彼女らが過ごしてきた時間全てを「個性」として尊重する、そんな力強い観念が見えてくるだろう。
 たとえそれが「嘘」によって創られてきたものだとしても、である。
 なんか毎回同じ事言ってる気がするけど、本当にこの作品ってずーっと地続きの話で繋がってるんだよ!

 たとえば前巻の感想で書いた「家族」の話だって、新生徒会長に就任した紫乃ちゃんが新生徒会を率いてやってくる場面、みんなデザインが一新されてるんだけど、絵面がどう見てもマフィアになってるんだよ。マフィアと言えばファミリー、つまりこれもまた家族である。
 一方で、生徒会が解散した後になっても壊れなかったどころかより強固になりつつある旧生徒会の絆も書いてるから、紫乃ちゃんファミリーにカギューちゃんが入れなくてもそれはそれで問題ないんだよね。

 あとは織筆、今回完全にギャグキャラ化してむしろ邪魔だったんじゃないか疑惑のある彼女だけど、それでも紫乃ちゃんにとってはずっと変わらぬパートナーであるわけで、あんなどうしようもない「個性」でもありのままを肯定する姿勢がここにも表れている。


 さて、そんな登場人物たちの個性溢れる人間賛歌を、平然と踏み躙る悪魔がこの作品にはいる。
 おそらくは本作品のラスボスとして位置付けられている、理事長の二千恵理人だ。生まれつき感情を持たず、「愛」を理解する為に人々の心を蹂躙し続ける彼の半生が今巻では明かされた。
 彼が「愛」の存在を確信したのは、彼の母親の命を顧みない献身によってである。「愛」を確かめるための彼の実験によって、彼の母親は命を落とした。

「愛って本当にあるんだねっ」
 こんなセリフをここまで悪意たっぷりに描けるのはさすがとしか言い様がない。

「愛」があることを知った彼は、その感情を理解するために妻を娶り子を生した。しかしそれでも、彼の中に変化は訪れない。
 感情がないから、彼は平気で近しい人間を実験台にできるし、人の愛を踏み躙ることができる。彼が「愛」を求めれば求めるほど、人間から遠ざかり怪物へと変貌していく。まさに悪魔と呼ぶに相応しい、愛の物語における最大の敵だ。

 ここで注目すべきはこの物語のもう一人の主人公、カモ先生との対比である。彼は幼少時に親の愛を得ることができず、そこに現れた恩師風蘭先生に救われた。この経験から彼が親という存在にある種のコンプレックスを抱いており、「こうあるべき」という理想像が勝ち過ぎている嫌いはあるが、彼女に憧れて生徒たちに無償の愛を注ぐ教師になることができた。
 対する理事長は、通常の子供よりもずっと親の愛を受けて育ちながらも、愛を決して受け入れられず愛することもできない存在だ。
 カモ先生は「悪魔退治」の手段として彼に愛を教える道を選んだ。しかしそれは皮肉にも彼の師である風蘭先生がかつて通った道だった。11年の時を経て、今再び回り始めるディスティニー。

 カモ先生は当初、理事長を倒す為自ら闇に堕ちる道を選ぼうとしたけど、暴力を振るっただけで手が震えてしまっていたように、彼には土台無理な話だった。
 そしてあまりにも残酷な真実を知り打ちのめされたカモ先生の元にカギューちゃんが現れて、思わず泣き付いちゃうのがいいよね。「愛」は一人では為せないんだから、理事長を倒すのに必要なのは人の繋がりの中にしかない。

 ねじまきカギューは、愛を伝導していく物語である。
 風蘭先生に憧れてカモ先生が教師を目指し、カモ先生に螺子を巻かれてカギューちゃんは夢を追い、そして誰よりも輝いて生きるカギューちゃんが闘いの中でそれぞれの「個性」を肯定していく。伝え伝わり、紡がれる螺旋構造こそが愛の正体であり、理事長という悪魔を唯一打ち負かすことのできる武器になるのだろう。

 そしてそのために、彼ら彼女らには向き合わなければいけないものがある。曖昧な自分の気持ち、引き裂かれた絆、そして今までに感じたことのない感情。足りないピースを埋めるため、彼と彼女たちの新たなる戦いが幕を開けると。うーん、考えれば考えるほど最終章が近付いてるよな、これ。
 個人的にはこの作品は名作になれる器と思ってるので、引き伸ばしも打ち切りもなく、きっちりと完結してもらいたいところ。


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