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俺ガイル

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 8巻 感想

 孤独とは、幻を求めて満たされない、渇きのことなのである。

「本物」とはなんだろうか。
 嘘がなく、何も言わなくても伝わる、互いに理解り合った関係。
 利己的な理由ではなく、ただ他人のために行なう奉仕的な活動。
 そんなものがこの世にない、とは言い切れない。
 そしてそれはきっと、無条件で手に入れられるような代物でもない。

 八幡は変われないと言った。
 自分の過去を否定しないために、孤高の存在であるために。
 自己肯定のために自分のやり方を押し通し、半ば自覚的でさえある環境と心情の変化にも見てみぬふりをする。
 今までは彼は孤高のアンチヒーローでいられた。カースト最底辺のぼっちで、失うものなど何もなかったからだ。
 そんな彼も今は、自分の居場所と、大切に思う人たちができてしまっている。環境が変わったのなら、人は適応の努力をすべきだ。しかし彼の中に巣食う「自意識の化け物」はそれを許さない。そして彼は、既に形骸化した「不変」の信念を以って、決定的な間違いを犯す。


「お互いを知っていたとしても、理解できるかはまた別の問題だもの」

 全くもってその通りで、相手がどういう人間かを知ったところで、本質的な理解に届くわけではない。
 人は人の行為に勝手な意味付けをする。八幡は度々の人の言動を裏読みしているが、陽乃さんが指摘しているように彼の解釈はいつだって悪意の方向に振り切れている。
 作中で最も著しい認識の齟齬を見せているのは、葉山と八幡だろう。
 葉山が勝手に八幡の行動を「自己犠牲」と称するのは、彼にとっては許し難い暴挙である。しかしそれと同時に、葉山の言動を「憐れみ」と感じるのも八幡が必要以上にカーストを意識してしまっているがゆえという側面がある。
 葉山は本当はカーストなどは全て排して、みんながそれぞれ本当の価値を見て欲しいと思っているし、彼が八幡に向ける感情はともすれば「憧れ」に近い性質のものでさえあるかもしれないのだ。
 葉山は哀しいほどに空虚な存在に見える。人に期待されるキャラクターを通すことで、表面上の「みんな仲良く」を守っていて、その現状に疲れている。だから彼が、遅かれ早かれああなってたので自意識過剰であったとしても、奉仕部の現状に責任を感じているのは、八幡というよりもあの3人のような関係性に憧れていたからなのかもしれない。彼の言動が悉く空回るのは、彼が八幡や雪乃とはまた別種の幻想を追い求めているからであり、本来そこにあるはずの「個」すら窺えないという点で、陽乃さんからも酷薄な評価を受けているのだろう。彼の内に潜む我はきっと雪乃に向いているはずなので、その辺もそろそろ語られるんじゃないのかなー。話が盛大に逸れているが、気にしない気にしない。

 
 さて、一色いろはの依頼を解決させるため、そして八幡にこれ以上「自己犠牲」をさせないため、雪乃と結衣は自ら生徒会長に立候補することを決意した。
 結衣はともかく、雪乃がアレを考えていたにも関わらず陽乃さんに挑発されるまで動かなかった理由が未だに読めないんだけど、形式的にでも八幡のやり方を肯定することになるのを嫌ったのか、利己心と依頼を混同させるのに抵抗があったのか、はたまた生い立ちと性格ゆえか。生徒会長になるビジョンは、依頼が来る前からあったはずだからなー。

 とにかく、この事態によって2つの「問題のすり替え」が起こる。
 一つは、雪乃と結衣を納得させるために、八幡が目標を「いろはに生徒会長をやる気にさせる」方向へとシフトチェンジしたことだ。これはまさに問題の解消であり、考案した新しいメソッドは何者も傷付けず、正しい解決方法と言える。余談だが、ここで彼が「人に相談する」というプロセスを挟むのがいいよね。八幡が唯一相談できるのが、家族である小町。そして何をしてもあんまり心が痛まない材木座。材木座もなー、分かってんのか天然なのか知らないけど八幡が気にしない程度の絶妙な距離感を保っててすごいいいポジションにいると思うんだよなー。彼らだけでなく、小町が今まで八幡が関わって、あえて言うと「助けてきた」人たちも連れてくるのがいいんだよね。輪の広がりが小町を通じて可視化されているという構図がヒネくれてるけど、とにかく彼を取り巻く環境の変化を描いている。というか、過去を否定しないんなら意識するしないに関わらず「出来てしまった」人間関係も認めろよと思うんですが、そこで「本物」を求めてしまうからこその化け物なんだろうなー。
 で、二つ目。雪乃か結衣が生徒会長になってしまえば、奉仕部という場はなくなってしまう。ここで八幡は、「彼らの問題」を「奉仕部存続の問題」にすり替えてしまうのだ。奉仕部は八幡にとって大切な場だ、だから理由を探して守ろうとした。しかし問題を解消しても、彼が守れたのは依頼が持ち込まれる前の、それぞれが上辺の普段通りを保っているだけの冷めた空間だった。元々彼らは問題を抱えていたのに、その解決に取り掛からないまま、目を背けるように新たな問題に注力して、そして手遅れになってしまった。
 八幡は今回やり方を変えたようで、結局問題を解決するのではなく解消するという構図は変わっていない。しかし彼らが抱える問題は、「解消」してはいけなかった。平塚先生の言う通り、八幡のやり方では「本当に助けたい誰かに出会ったとき、助けることができない」だろう。


 彼らが本当に守りたかったのは、「奉仕部そのもの」ではなく彼ら自身の関係性のはずだった。場はただそこにあるだけでは意味を為さず、それを形成するのは所属する人間たち。
 あの場所に拘る必要がなかったから、すべてが終わった後にめぐり先輩が漏らした未来予想図が理想的なものに思える。雪乃はきっとおぼろげながらも新たな場の構築を思い描いていたはずで、しかしそれは残りの2人にはついぞ伝わらなかった。
 
 彼らはどうすればよかったのか? 決まっている、話し合うべきだったのだ。
 この点では小町がずっと核心を突いている。八幡が編み出した誰も傷付かない方法に一人不安を感じていたし、何より彼に「お兄ちゃん、ちゃんと雪乃さんと結衣さんと話してね?」と念を押していた。
 八幡は彼女たちを説得するのではなく、それぞれが何を考えていて何がしたいのか、話し合うべきだった。
 
 しかし、それができないのが八幡であり、雪乃である。
 人の為と、そういう方便がなければ動けない。八幡は奉仕部を守るために小町に理由をもらい、雪乃はいろはの依頼達成を利用した。2人とも、行動の裏には当然奉仕部を、彼らの関係を大切に思う気持ちがあったはずである。
 だが結局、奉仕部が、あの場所が好きだと、そうはっきりと表明したのは結衣だけだった。あのシーン、ぐっとクるんだよなー。
 

 彼らは「本物」を求めていた。惰性でもなく、打算でもなく、一過性の夢想でもない、そんな関係を求めていた。
 言葉にすれば嘘になってしまいそうで、求めるほど遠ざかって。それはきっと、理想を求めるあまり、目の前の現実が信じられなくなってしまったからなのだろう。
 八幡はいずれ何もかもが思い出になる、すべてはそのうち必ず失われるのだから、そんな結末であってもいいと嘯く。けれどそれは信念などではない、選べないから諦めただけだ。
 失うのが怖いから、表面上は取り繕っていつも通りを演出する。
 それが唾棄すべき馴れ合いでしかないと知っていながら、その状況に耽溺してしまう。
 彼らは互いと「本物」の関係を築きたいからこそ、向き合うことに恐れを抱く。

 たとえば、八幡と一色いろはの関係を見るとどうだろう。
 当初いろはは、八幡という存在をまったくと言っていいほど意識してなかった。戸部以下、その他大勢のダボハゼである。それでも人当たりよく接していたのは、それが彼女の演じるキャラクターだからであり、システマチックに対応していたに過ぎない。
 しかし、八幡が彼女にメリットのある形での生徒会長就任を持ちかけたことで、彼女は彼を「話の分かる相手」として認識した。その後の二人の会話は妙に息が合っていて、いろはも本音を隠さない、対等に近い関係に思える。大げさに言えば、ここに「偽物」から「本物」の関係への転換を見ることができるだろう。
 このような関係の構築が可能になったのは、八幡といろはが互いを「何とも思ってない」からであり、その認識を共有しているからではないか。この2人についてのみ言うのなら、平塚先生の言う「上手くやる」関係になれていると言える。
 ところで、いろはってまあビッチだしクソ女ではあるが、あーしさんの次くらいに魅力的な女の子だと思うんですけど、どうでしょう。こういう自分の価値を知ってて自由に立ち回ってる子って好きなんですよねー。
 まああれだ、あーしさんにしても、川なんとかさんにしても、メインじゃないからこそ「面倒臭い所」が見えないってのはサブヒロインならではの魅力としてあるかもしれない。八幡とかいうメインヒロイン、くっそメンドクセーもんなー。
 恒例のプロフィール紹介がないのは何故なのか。今後もコンスタントに登場してくれるといいけど。

 どうでもいい相手だからこそ、適切な距離を保って上手くやれるって側面はあるのかもしれない。逆に言えば、大切に思う相手ほど、壊れ物を扱うかのように接してしまい、踏み込むべきところで踏み込めないという皮肉。
 それに加え、「本物」を追い求め、今まで自分を支えてきた「信念」という名の自意識が彼らをがんじがらめにする。
 彼らは理想こそを諦めなければいけないし、そのためには間違っている現実との折り合いが必要だ。ただ、「ぼっち」であることの肯定と並行してそれを描くことが要請されているので、結末どころか今後の展開はほとんど読めない。そろそろ雪ノ下家の問題に入り込まなければいけないとは思うのだが、はたして。
 
 
 ということで、ますます青春小説としての格が高まってるし、そして何よりもあーしさんのパンツがピンクという重大な事実も発覚したので、より一層アニメ第2期制作への期待が高まりますね。というか川なんとかさんのパンツは挿絵有りだったのに、なんであーしさんのはないんだよ! 
 あれか、触れることは許されない聖域ってことなのか!?


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アニバタ Vol.6アニバタ Vol.9に寄稿しました。よろしくです。


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