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サムライフラメンコ

サムライフラメンコ 16話 「さすらいのヒーロー」 感想

 逆転しない正義とは献身と愛だ。それも決して大げさなことではなく、眼の前で餓死しそうな人がいるとすれば、その人に一片のパンを与えること。

 いつかは来ると思っていた原点回帰展開だけど、まさかこんな鮮やかに決めてくるとは思ってなかった。
 メタにメタを重ね、もはやどこまでマジでどこまでふざけてるのかも分からなくなる(=正義の形を見失う)までメタりまくる作劇を続けた結果、まるで一周したのかのようにあの街――あのアパートへ帰ってくる羽佐間。それが今回のサムライフラメンコの善行が周りまわって彼を助ける展開とも重なる美しい構成。やっぱ凄いわこの作品。

 フラメンジャー編で一気に戦いのスケールが大きくなったことで、羽佐間は元いた日常から引き離され、原塚さんや後藤さんたちも蚊帳の外に置かれるようになってしまった。
 羽佐間がヒーローとして大成すればするほどに、日常との距離は開いていき、その先に待っているのは誰にも頼れない『孤独』。ヒーローは皆を救ってくれるけれど、そのヒーローは誰が助けてくれるのか、という命題。
 政府から追われ、空腹で倒れた羽佐間の前に現れたのは、かつて7話で彼自身が助けた老人だった。サムライフラメンコに救われた日から、彼は困った人を助けるようになり、それだけで人生は輝かしいものに変わったという。
 騙され利用され貶められても、空腹に苛まれてもなお愚直なまでに正義の心を守り通した羽佐間に巡ってきた正義。

 「人を助けることで自分にも善意が向けられるようになったのです」

 伝え継承されるヒーローの意志は、正義の意味を見失いかけた彼の魂に還ってきた。たとえイミテーション・ジャスティスのレッテルを貼られようと、目に見えない(あの老人は目が悪い)大切なものは確かにそこにある。星の王子さま!

 人を助けることの素晴らしさを伝え続けた羽佐間は、巻き込んでも迷惑を掛けても頼っていいのだと信じた相手の下へ。そして後藤さんは当然のように彼を出迎える。ここでEDに入るまでの流れがホント最高。
 後藤さんもね、フラメンジャー編に入って表舞台から外されて、ずっと歯痒かったと思うんですよ。だからこその「帰ってきた」というカタルシス! たまんねえなぁもう。


 そして羽佐間の物語と並行して描かれた真野まりの再生エピソード。
 遠慮のないグーパンチと、相手の存在から否定しにかかる容赦ない言動、これこそが真野まり! これこそがマジ喧嘩!
 まりは自意識過剰で承認欲求が高くて自己中なクズだけど、自分の醜さを思い知らされるから萌に顔を見せるなとか言ってるくせに、自らの足でキング・トーチャーの基地に出向くんですよね。ホント威勢と負けん気だけは一人前で、おまけにバイなこのクソ女が大好きです。
 ミネミラの関係もなかなか複雑ですよねー。まりは自分にはできない本当にカッコいいことをやってのけた萌が眩しすぎて見れないし、他の二人もアイドルとしてヒーローとして最高に輝いているまりにある種の憧れを抱いている。
 そんな彼女たちが絆を取り戻すに当たって一緒に吐瀉物に塗れるというのがまたいい。どん底まで落ちて世界一みっともない姿になったまりだけど、そんな彼女と一緒に汚れることを厭わない人たちがいる。

 結局本当にその人を助けてくれるのは、身近にいる大切な誰かで、隣人に手を差し伸べる行為が、それだけが本当のヒーローの条件なんですよ。これもう10話で早々に描いていることなんですけどね、この作品。
 でも、『ヒーロー番組』の尊さと欺瞞を同時に描き出すことであらゆる角度から正義の実態を浮き彫りにしようとしてると思うんですね。だから惹かれるし、最高に面白い。
 7話以降が残念? フラメンジャー編がいらない? 
 とんでもない、無駄なことなんて一つもないよ。


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Comment

No title

地域ヒーローものでこういう原点回帰はよくあるけど、この作品は遠回りに遠回りを重ねてここに来るもんだから、その遠心力?たるやすごいですね。

残り話数からしてまだズレる余地もありそうですけど、一度ここに着地してくれたので、どんな終わりでも満足できるような気がします。
twitterでも仰ってましたけど、特撮(ヒーロー番組)ファンにこそもっと観てもらいたい作品ですね。しかしどう説明すればいいのやら・・・w

Re: No title

>江楠さん

コメントありがとうございます。

>地域ヒーローものでこういう原点回帰はよくあるけど、この作品は遠回りに遠回りを重ねてここに来るもんだから、その遠心力?たるやすごいですね。

私は特撮ほとんど知らないのですが、やっぱりよくある王道展開なんですね。今までの超展開みたいに強引に引き戻すのかと思ってたら、「あれ? いつのまにか戻ってきた」という印象を覚えるような自然な流れでやってのけたので驚きました。しかも無茶苦茶になった世界観はそのままに。これホントもっと評価されていいと思うんだけどなぁ……。

>twitterでも仰ってましたけど、特撮(ヒーロー番組)ファンにこそもっと観てもらいたい作品ですね。しかしどう説明すればいいのやら・・・w

いやそれ多分リツイートしただけで私が言ったわけじゃないと思いますよ(笑)
どうでしょうねぇ……。特撮ヒーローをある種突き放した視点から扱っているのは確かですから、特撮ファンほどバカにされてると感じたりするかもしれません。ヒーローの活劇も茶番劇として演出してますから、題材は同じでも視聴感覚はまったく異なるものになるのではないでしょうか。
わざと世界観をブレさせて視聴者の不安を煽ってる節もある捻くれた作品なので、説明というよりは予防線を引く形がいいかなぁ。でも事前に言っちゃうと振り回される楽しみが半減するし、うーん難しい。

一般的な意味で完成度が高い作品ではないのは分かっているので評判がよろしくないのはある程度理解できるのですが、私自身は毎回楽しくてしょうがないので共感はできないのが歯痒いところですね(笑)
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