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サムライフラメンコ

サムライフラメンコ 19話 「静かな生活」 感想

この世で 誰一人 傷つかない そんな世界はない

 フラメンコ星人との戦いから半年が経ち、世界は完全なる平和の様相を呈しています。
 前回の感想で宇宙の意志さんの言う悪が一掃された世界というのはこれ以上倒すべき悪役が出てこない世界だ、とドヤ顔で言った身としてはこの時点で結構驚きました。
 チンピラも酔っ払いもフライングゴミ出しおばちゃんもみんな羽佐間に気持ちよく挨拶をし、ニュースになるような事件も起こらず、世界は統一政府樹立に向けて動き出している。

 各キャラクターのその後も描かれていたように、これはラスボスを倒した後の『従来の物語のエピローグ』をメタった世界なんでしょう。もちろん「脅威はまだ消え去ってはいないけど希望を捨てないラスト」も珍しくないので完全平和はやや過剰気味ですが、それもまたこの作品らしい皮肉によるものでしょう。
案の定、平和に疑問を口にする女が一人。「嘘くさい」と、人間はもっと汚れているはずだと真野まりが言います。己の醜さに向き合った彼女ならではのセリフですね。
 そう、こんな世界は嘘なんです。主人公が往く道の先に配置された悪役を倒し、平和が訪れる、そんな物語が吐く嘘の世界をこの作品は極端にデフォルメして提示してきているのです。相変わらずの歪みっぷり……だがそれがいい。


 そして悪のいない世界で羽佐間が直面したのは、大切な友である後藤さんの真実。
 後藤さんの彼女が既に死んでいる説は序盤からありましたが、じゃああのメールは何?と思ってたのでまさかの自作自演には驚きました。ここでばっさり「キモイ」と言えるまりが好きです。
キング・トーチャーの基地でロケットを破壊する時に彼女にメールしてたのは、必死に自分の心を落ち着けようとしていたのだと思うとコメディチックだったシーンが一気に切なく思えるなぁ……。
 傷心の後藤さんを前に羽佐間は何もすることができません。それも当然、これは説教が利く場面でも、悪役を倒せば解決する問題でもないからです。平和になった世界で初めてぶち当たる壁、正義の無力。なんてイヤらしい構成なんだ!

 さらに追い打ちをかけるように、嘘くさい平和の世界がひっくり返されます。
それを為した少年の名は澤田灰司。1話でサムライフラメンコと出会い、一人だけ心を揺らした描写のあった始まりの少年。ここで彼はその時の羽佐間の説教を諳んじるのですが、ここはどう解釈すべきか迷うところですね。
 私が思い付くのは2つ。

 「家に帰れ」というメッセージを羽佐間に返すことで、フィクションの果てに行き着いた偽物の平和から現実に帰れ=大人になれという意味。

 もう一つは、あの時の羽佐間のメッセージを曲解し、世界を変革するためのテロリズムに目覚めた。こちらで描かれるのは、正義の成れの果てとしての確信犯=悪ではない正義の脅威。

 とまあ、こんな所ですが、これまで私の予想なんて何度も外れているので、今の所はこれ以上掘り下げる気はないです。


 物語性を突き詰めた結果、辿り着いてしまったのは現実味のない静かな世界。ヒーローやアイドル、そして脳内彼女と、空想に囚われ続ける大人になりたくない“大人たち”は一体どこに『帰る』のか、その答さえ描いてくれれば、もう何も言う事はありません。
 おそらくは最終章、その結末を心して見届けたいと思います。

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Comment

初めまして

某TBから辿って来ました。サムメンは、途中から(偽サムメンが出た回から)見始めて、自分の地域は放映遅いので、この話は未見です。
が、展開が気になるので、予習として拝見してました。
 単独ヒーローから、戦隊物になった時は、なんだか違和感有りましたが、
ぽんずさんの解説で、こういう風にとらえれば良いと参考になりました。

この作品、既成作品のパロと言うか皮肉と言うか、内容が深いので、見る側も、知識が無いと楽しめないですね。
 しかし、後藤の彼女が亡くなっていて、メールが自作自演とは!

ただでは済まない作品なので、彼女が現れても顔が映らないとか予想してましたが、この世に居ないとは・・・ やられました。
単純に悪を倒す訳でないので、正義が励ますのは至難ですね。

そして、新キャラ、サムメンに説教された少年が、どう動くのか注目
ですが。個人的に、両親の殺害者が知りたいですが、大して意味が無い
相手かも知れません

どう終わるのか見守ります。レビュー楽しみにしてます^^

Re: 初めまして

>魚津 満さん

はじめまして、コメントありがとうございます。

自分のはあくまで感想で、わりと的を外したことも言ってますが、参考になったのなら幸いです。

>この作品、既成作品のパロと言うか皮肉と言うか、内容が深いので、見る側も、知識が無いと楽しめないですね。

特定の作品ではなく、広い範囲でのヒーロー物のパロディ・皮肉を軸に構成しているので、結構漠然としたイメージだけでイケますよ(爆) 実は私、ライダーも戦隊物も全然知らなくて、子供の頃もかろうじでウルトラマンティガの記憶があるくらいです。

後藤さんの彼女は「死んだ」ではなく「消えた」と表現したからにはまだ何かあるんでしょうが、それはそれとして意外でしたね。魚津さんが本放送を見てどんな感想を持たれるか分かりませんが、極端に描かれた平和の世界だからこそ後藤さんの狂気が強調されていたように感じました。

羽佐間の両親については、もう祖父の執念にも決着を付けているので仰るとおり大した意味はないとは想いますが、例えば実際に犯人が目の前に現れたとしたらまた違うでしょうし、断定はできないかな。
予測ができないのはこの作品のいい所の一つなので、また思いっきり振り回してくれることを期待してます(笑)

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