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サムライフラメンコ

サムライフラメンコ 最終話 「サムライフラメンコ・ネイキッド」 感想

 ジャスティス・フォーエバー!

 この妙ちきりんな作品もついに最終回を迎えました。
 『正義』とは、『愛』とは何か。
 羽佐間は本当のヒーローになれたのか。
 書きながら整理しつつ、考えていきたいと思います。

 冒頭から流れたのは、彼女を喪ってからの後藤さんの人生。
 虚脱感に襲われた後藤さんが、たった一つのよすがとして携帯電話に縋って歩んできた道程が淡々と描写されます。一連のシーンのやるせなさは中々真に迫ったものがあって、思えば物語のフィクション性に非常に自覚的でリアリティラインを捏ね回してきたこの作品でも、物理的精神的問わず『痛み』の描写はいつだって確かなリアリティを伴って行なわれていたように思えます。フラメンコガールの暴力、キング・トーチャーの拷問や言葉責め、日本中から追われて疲弊する羽佐間、そして灰司の悪行と後藤さんの心の闇。一方で、フラメンジャー編においては一般人の犠牲が普通に出てましたが、それはあくまで画面の向こうの見世物として演出されていた。怪人による犠牲はフィクションであり現実的な痛み(あるいは現実に感じ得る痛み)ではない、とするならば、やはりこの作品はメタ構造を何重にも張り巡らせることで、ブレ続ける世界観の中でもある要素に関しては常に一定の線は引き続けていたのだと思います。この辺はまた後で。

 話は戻って、後藤さんの妄執を感情移入させるよう丹念に描いたからこそ、悪意を以って彼に現実を突きつける灰司の悪辣さが伝わります。後藤さんの回想に被せる形で灰司が大事なメールを諳んじるシーンは、現実に引き戻されるという一点で視聴者と後藤さんの意識がリンクする、上手い演出だったんじゃないでしょうか。
 そして灰司は後藤さんの殺意を煽るために、彼の精神的支柱であった大事なメールを消去してしまいます。他人の大切なものをあっさりと奪う、という点では羽佐間のヒーロー物コレクションをマンションごと吹き飛ばしたように、灰司の純粋な悪意を際立たせるメソッドなのかもしれませんね。灰司はサムライフラメンコに出会うまで、何にも興味の持てない、からっぽの少年だったでしょうから、逆に唯一つ執着できるものを奪うことが最も効果的であると知っているのでしょう。やられたくない事をやる、という意味では羽佐間が自殺しようと考えたのは、悪の打倒という観点から見れば間違ってなかったと思います。だけれど、それでは灰司を救うことはできない。彼は倒して終わりな悪の怪人や宇宙人などではなく、道を踏み外してしまった一人の少年でしかないのです。

 正義のヒーローを闇に落とすために、警官であり大切な人である後藤さんを人殺しにまで貶める、というのはやはり『ダークナイト』のデントを思い出しますね。
 サムライフラメンコのためだけの悪役を名乗った時からジョーカーっぽいとは思ってましたが、今回灰司の口からダークヒーローという言葉が出た辺り、やはり最終章には某作品のパロディ要素が含まれていたと考えてよさそうです。ただ、灰司はメタヒーロー的な悪役であると共に、事情やその後の顛末を見るにごく普通のドラマの非行少年でもあるんですよね。言うなれば、彼もまたフィクションとリアルの狭間にいた悪役ということで、やはり澤田灰司のキャラ造形はこの作品のテーマ性に沿ったラスボスとして相応しいものだったんじゃないでしょうか。


 さて、殺意を漲らせる後藤さんと銃を構える灰司を前に追い詰められた羽佐間。
 ここで灰司は初代サムライフラメンコのスーツを投げつけ、それを着るように羽佐間に指示します。しかし彼はヒーローに変身することを拒否、ただの『羽佐間正義』として灰司に向き合うのでした。ここでパンツまで脱ぎ捨て、ヌーディストになった羽佐間。まさにネイキッド。
 ちなみに後藤さんと初めて出会った時も彼は全裸で、その時はヒーローでもなんでもなくただの『変態』でしかありませんでした。しかし、ヒーローとして世界に認められた今だからこそ、スーツを拒否して裸一貫になることに意味が生まれるのですね。ヒーローの『正義』で救えないのなら人間の『愛』を武器にするしかないと。
 ただ、要さんや石原さんに教えてもらったものの、やはり彼にはまだそれがどういうものなのか理解することができません。それでも、羽佐間は必死に灰司に呼びかけるのですね。僕は世界中でただ一人君のことを考えている人間だ、と。
 その言葉にサムライフラメンコと出会った日を思い出す灰司。説教に感化されたのではなく、叱られたその事自体に感銘を受けた感じか。灰司は日常生活において目立たない存在であり、そんな彼を溺愛していたという両親も、ただ甘やかしていただけで、本当に彼の事を見ていたわけではなかったのだと作中の描写から推察できます。だからこそ、マヌケな格好をして馬鹿みたいにぶつかってくる、自分の事を思って叱ってくれるサムライフラメンコの言動に半ば無意識に心を動かされていたのではないでしょうか。
 「愛の反対は無関心」とするならば、がむしゃらに自分に関心を向けてくる羽佐間のそれは確かに『愛』と呼べるものなのかもしれません。

 しかし、灰司が『愛』を見出したのはむしろその後の羽佐間と後藤さんのやり取り。
 「結婚しましょう」とはどうにも狙ってる感の強いセリフで短絡的な思考に飛びつきたくなりますが、羽佐間が具体的に他人と『愛』を結び得る関係として思いついたのが『結婚』というワードだったんでしょうね。それよりも重要なのは、大切な人が間違いを犯すのを必死で止めて、涙を流して、馬鹿だと叱ってくれる、押し付けがましくても説得力のある理屈が出てこなくても本気で相手のことを考えて全力でぶつかっていく。その裸の心こそが『愛』の片鱗なのだと、まさに無関心に対する関心を転じて『愛』たらしめんとする、理屈ではなく行動でその本質を見せたのがあのシーンだったと言えるのかもしれません。
 鬱陶しいほどの羽佐間の愛に、自分は独りではないことを否応なく思い知らされた後藤さんは、ついに彼女はもうどこかへ旅立ってしまったのだと、現実に目を向け始めたのでした。

 と、思いきや、EDでは彼女との自作自演のやり取りを止めていない後藤さん。ただ、これは問題が解決していないのではなく、問題解消による物語のカタルシスを避けているのだと思います。心の傷は簡単には癒えないし、灰司だってそう簡単には更生しないかもしれない。完全に平和になったはずの世界にまた少しずつ『悪』が戻ってきたように、全てが解決して終わる物語はフィクションなのだと、またしてもこの作品が持つ『物語』そのものへの批評性が活きたラストだったのかなと思います。
 ただ、『解決』が描かれていないだけでそこへ至る『手法』はちゃんと描いているんですよね。羽佐間は灰司が更生するまで何度でも彼とぶつかるだろうし、後藤さんの傷が癒えるまで支え続けるだろうし、どんな小さな悪とも戦い続けるだろう。
 サムライフラメンコは決して逃げない、決して負けない、決して悪を見逃さない。
 物語を通じて培ってきた彼の正義と、ひたすらに悩みぬいて芽生えた愛の心で、正しい事をし続ける。それが作品を通して出された回答であり、サムライフラメンコが真に辿り着いたヒーロー像なのです。荒唐無稽な物語は描いても、現実への嘘は吐かない、その一貫した姿勢は確かにある意味の誠実さでした。

 
・総評のようなもの

 全体の総評として、まず思うのは『物語』そのものとの向き合い方を考えさせられるような作品だったということ。唐突な超展開、一新される世界観の中で、リアリティラインを拠り所にした視聴態度では途端に足元を崩される。表面的な整合性ではなく、深層的な一本の軸を見通さないと振り落とされるような、そんな作劇。実際にこれは、ヒーローを志向する青年が変遷を続ける世界に振り回されつつも、ひたむきに自分が信じる正義を貫き答を掴んでいく物語だ。
 作中では、大衆とのヒーローとの関係が描かれた。最初は人々はヒーローを馬鹿にし、次には流行に乗ってお祭り騒ぎ。悪を救って見せれば祀り上げ、災害の時にはヒーローが人々の往く道を照らし、共に悪と戦ったかと思えば、あっさりと情報操作に騙され手のひらを返す。ここに見るのはメディアを通じて戯画化された一連の茶番としてのヒーロー番組であり、現実への痛烈な風刺だ。
 また、ヒーロー番組のパロディをしながらもどこか皮肉気な空気を漂わせていた。メタなネタによってヒーローと悪の組織との戦いはどこまで真剣でどこまでふざけているのか分からない茶番劇と化し、多分狙ってやったのではないと思うがチープな作画が茶番臭を加速させている。
 どこまで行っても、結局は悪を倒すしかないという、ヒーロー物語の業そのものと羽佐間は向き合い、そしてインフレしていく戦いに自ら終止符を打った。
 勧善懲悪、アクションエンターテインメントとしてのヒーロー物への批評性を保ち続けた一方で、子供の頃に見たヒーロー番組から現在へと繋がる『正義の伝播』という行為自体は肯定的に描いている。この、物語の吐いた嘘と、その嘘が真になった物語、その境こそが、ブレにブレ続けるように見えるこの作品が一貫して守り続けた唯一のリアリティラインだったのではないかと私は思う。

 そしてそれこそが、「大人になりたくない“大人たち”」なりの物語への誠実さだったんじゃないかな。ヒーローなんて子供っぽい、もっと言えばアニメだって子供っぽいかもしれない。そんなものは現実にはないし、語られる理想は絵空事だ。正義の味方が悪を倒す、そんな物語を無邪気に信じる(描く)ことはもうできなくなってしまった。
 それでも。照れなのか、抵抗なのか、純粋さを失った結果なのかは知らないが、それでもあの日見たヒーローたちは今も心の中にいて、大切なものを教わったのだと、未だ憧れているのだと、そう信じる大人になりたくない“大人たち”。
 ミュージアムに展示されたヒーロー達、そこから見える戦いの軌跡は、嘘も過ちも歪みも何もかもを含んだまま、心の中にいろんな顔をしたままでいる。そして原点である、最初の頃の純粋な気持ちだけが、今もそのままの姿でまた走り出すのだ。
 ヒーローへの信仰を失い、されど憧憬は潰えない。メタフィクショナルヒーローサーガの結末として、サムライフラメンコの行く末と我々と物語との関係性を描ききったこの作品。こうして自分なりに整理できた今だからこそ言える、私にとって間違いなく傑作でした!
 
 ありがとう、サムライフラメンコ!

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Comment

今さらですが・・・(汗

今さらコメント出してスミマセン・・・
ついさっきサムメンコ最終回見ました!
支離滅裂といえばそうなんだけど、公式イントロでもある
「コミカルとシリアスを交えながら真のヒーローとは何かを描く」
という点では最後までぶれてませんでしたね。
どうやら、7話の超展開のような路線変更は昭和時代の特撮だとそうも
珍しくもないらしく・・・(笑
「日本の特撮には路線変更がつきモノ!」といわれるぐらいらしいので。
監督もそういう歪な感じが大好きとおっしゃっていたので、なつかしヒーロー物の
パロディをトコトンつめたものがこの作品のおかしさであり面白さだったのかなと。
こういう作品、もう二度と出てこない気がするので個人的には
もうちょっと評価されてもいいのではと思ってます(笑
とはいえ評判が悪すぎるこの残念さがサムメンコらしいっちゃらしいので(笑
そういう点も含めて私もこの作品大好きです!
感想、お疲れ様でした!

Re: 今さらですが・・・(汗

>如月さん

コメントありがとうございます。当ブログはいつでもウェルカムですよ!

ストーリー展開こそ忙しなくぐっちゃぐっちゃでしたが、その根幹は決して揺らいでいないのが本作の魅力です。というかそうでなかったらさすがの私も見限ってました(笑)

往年の特撮番組のパロディとしての度重なる方向転換、というのも面白い視点ですね。
若干皮肉気な視線を浴びせつつも、最終的にはリスペクト精神に溢れた作品だったと思います。

ところでサムメンコ、そんなに評判悪いですか?
おっかしいなー、自分の観測範囲だと6:4ぐらいで評価されてる人もわりといるんですけどねー(棒)
まあ範囲が狭くかつ偏ってるだけなんですけど、かといってまとめブログとか参考にしてもしょうがないですし、私の中ではそこそこ評判の良かった作品として都合よく記録しておきます。
ちょうどまた一人高評価の方が増えたことですしね。

読んでくださってありがとうございました。気が向いたらまたいつでも。
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