アニメを中心に、漫画や映画、小説など創作物の感想を載せるブログです。

スポンサー広告

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

The Princess of Tennis

テニプリンセス 感想 美しく残酷な勝負の世界

 今もっとも熱く面白い少年漫画(私調べ)であるテニプリンセス。
 その現時点で最高のエピソードである青学対黒帝戦がついに決着を迎えました。


 デレマス、テニプリ、そして他作品にも強い影響の見られるジャンプ系少年漫画メソッド。元ネタであるそれらすべてがオマージュの域を超え換骨奪胎され、完璧に自分のモノにしているハリアーPの手腕には脱帽です。
 そして漫画描きとしても着実に進化を遂げていっていて、表現方法がどんどん多彩になっていくし、さらにはクライマックスに近付くにつれて絵や構図のボルテージを上げていくテンションコントロールの巧みさはちょっとだけ中山敦支の片鱗を見ました。

 ハリアーPは二次創作において元ネタへのリスペクトをしつつも大胆に自分色に染め上げるキャラクター描写をするPですが、特に青学の部長を務める北条加蓮についてはその傾向が顕著。それを踏まえてあえて言いますが、この加蓮部長、お茶目で飄々としながらも常に部員達に気を配り青学の精神的支柱で在り続け、そして「約束を果たす」その一点においては誰よりもエゴイスティックな表情を覗かせる、実に様々な要素が多面性という形ではなく自然にブレンドされたような人格として描かれた、愛しさとせつなさと心強さを感じさせる最高のキャラクターとなっております(主観)。
 
 そんな加蓮と乱暴気味ながらも優しさと漢気に溢れたたくみんが最後の最後まで全力でぶつかり合う試合。もうそれだけでめちゃくちゃ面白いのですが、やはり目を見張るのはこのシングルス1が黒帝戦の総決算となっているその構成力。これを踏まえると本編の感動が2倍3倍に膨れ上がります。
 この黒帝戦がどういった構成になっているのか、詳しくは前記事に記してあるのでよければご参照ください。

 これまでの青学対黒帝戦は、「あらゆる小手先を圧倒的なパワーで問答無用に粉砕していく黒帝」と「終始押されつつも諦めずに喰らいつき何とか突破口を見つけようとする青学」という構図で描かれてきました。立ち位置がメタ的だった森久保戦も、やや特殊ながらその流れに沿っていると言えるでしょう。
 そして黒帝学園の大ボスであるたくみんこと向井拓海は、これまでの選手の特徴をいくつか併せ持つことで、どんな劣勢にあっても攻勢に転ずることのできる、問答無用の強さを体現したキャラクターとして描かれています。
 トライアド・プリムスとして全国トップクラスの実力者と目されている加蓮よりも、更に格上の存在とされているたくみんは、実際にこの試合においても加蓮を上回る地力を持っていることが示唆されるのですね。つまり、圧倒的なパワーに襲われる青学、という構図は揺るがない。
 しかしながら、加蓮はあらゆる手段を使い、巧みにたくみんを翻弄することで対等な立ち回りを見せています。これはひとえに加蓮が卓越した技術を持ったプレイヤーだからこそ可能な意趣返し。今まで幾度となく押し潰されてきた青学側の小手先を『千術』に昇華することで、後輩たちがやろうとして出来なかったことを体現しているのです。晶葉とウサミンが越えられなかった比奈の予測を何度も覆すのもその一貫。ふじりな戦でかな子が弱点を見抜きながらもどうしても攻略できなかった『ラヴぽよ弾』と同質の技、『トラクション』を完璧にかわして見せたシークエンスなんかはその象徴ですね。ここで「かな子が見抜いてくれたから」と言う加蓮がもうね。後輩たちの想いを無駄にしない、そんな姿勢を当り前のように見せてくれるのが彼女が部長たる所以なのですよ!
 搦め手に対して「正面から来い!」と言うたくみんに「コレが私の正面!」と返す加蓮がまた素晴らしい。そうなんだよ、「前を向く」っていうポジティヴワードはあるべき正しい方向がある事を前提とした、ともすればファシズムにすらなりかねない危うさを秘めてるんだよ。だからこそ「他人とは違う自分にとっての正面」があると表明してくれると安心できる。両部長の対比が顕著に描かれているなら尚更だ。

 後輩たちの無念を晴らすかのように「技術でパワーに対抗する」加蓮。拮抗した勝負の中で、ついに彼女は自分だけの大技を発動させる。少年漫画の王道である必殺技発動シークエンス。コートを抉るほどの打球『白火』が、画的なカッコ良さもさることながら、物語構成上かなり重要な意味合いを発揮していてこれまた素晴らしいのです。
 あまりにも凄まじい打球に初見では反応できず、ボレーでの攻略を試みようとするも強烈な回転に阻まれ失敗するたくみん。これ、青学側が初めて「正面から」「問答無用に」黒帝側からポイントを奪ってるんですよね。完璧なまでの意趣返し。
 そしてぇ~。ここにきて「白」というモチーフが持ち出されたことで、黒帝戦全体におけるテーマである「勝負」という概念がより強調されています。何故って、単純に「勝負」には別の表現として「白黒つける」というのがありますからね。78話と79話、それぞれのサブタイトルが「白い一撃」「黒い咆哮」で対比になっている点からも、おそらくは狙ってやってると思いますが、まあ私のスタンスがたとえ作者が意図しないことでも作中描写に相反しない限りは解釈は自由である、というものなので実際のところはどっちでもいいです。ハリアーPならそれくらいやっても不思議ではない、と本気で思ってるのも確かですが。

 この「白黒」の対比構造が、決着シークエンスでさらに濃度を増して展開されることによって「勝負」というテーマが見事に昇華されているのが本エピソードの最大の凄みだと思うのです。最終局面、限界を超えて必殺の「白火」を撃ち放つ加蓮。力付くでそれを抑え込み、ついに返すことに成功する(しかも黒い打球で!)たくみん。互いの返球をギリギリで拾う両者。そして青学側の祈りを塗り潰すはたくみんの異名でもある『黒い咆哮』! それが決め手となり、青学はチームとして初めての「黒星」を喫する。畳み掛けるような寓意の連打が、画の迫力、展開の盛り上がりと相乗効果を発揮して、最高のクライマックスを演出していました。読み込むほどに構造の美しさに気付いてマジで泣いてましたからね。すげーよ本当。
 たくみんが「入れぇ!」と叫ぶシーン。テニプリ読者なら分かると思いますが、これ全国大会決勝の手塚対真田戦のオマージュが入ってますよね。それをテーマが結実する形で利用する、まさに換骨奪胎。二次創作作家としてのハリアーPの凄みを感じます。

 さらに凄いのが(まだあるのか)、これまでも描かれていきたように「勝負」が試合だけを指しているのではなく「自分との戦い」をも含んでいる、その構造さえも組み込んでいる構成力ですね。
 加蓮にとっての「自分との戦い」は、自身が抱えた爆弾と、それによって「全力の戦い」が果たせないアンビバレンツによるもの。黒帝戦ではダブルス2から丁寧にその構図の再確認と、どんな事情があろうと戦いになれば容赦しないというたくみんの意志、そして高まっていく二人の闘志が描かれてきました。
 そして最後の最後で、ついに発症した加蓮の病気。ここで加蓮が「自分を乗り越える」という強い意志を見せ、結果的に「最後まで全力」と双方が望んだ決着を引き寄せます。ここで彼女が自分を乗り越えるためのマスターピースとして描かれたのが、「約束」という目標と「仲間のため」という支柱。「ひとりじゃなかった」という陳腐でさえある言葉に集約される両天秤の存在があってこそ、というのがストレートに胸に刺さります。これぞ王道。
 そしてだからこそ、自分との戦いに勝ち、仲間の想いをすべて背負い、それでも加蓮が「負ける」という結末がどこまでも美しく輝くのです。どんな過程だろうが、どんな想いがあろうが、勝てないものは勝てない。負けるときは負ける。そもそも、事情を抱え仲間の想いを背負っているのはたくみんも同じで、物語上の比重に差異はあれどそこに本来貴賎はない。
勝つか負けるか。黒帝戦を通して描かれてきた「勝負」というテーマを結実させるために、青学の敗北という結果はどこまでも「妥当」なのです。

 描かれる試合の中に、いくつもの「自分との戦い」があり、試合に敗北しても小さな勝利を手にした選手もいる。それでもチームとして「負けた」という事実は厳然としてあり、揺るがずに眼前に提示される。それが個人としての「敗北」とは一線を画す大きな意味を持つことは、フレデリカ戦でも見せなかった卯月の泣き顔が証明しているでしょう。最後の最後で提示された、もう一つの「勝つか」「負けるか」。
 敗者となった彼女たちは、先へ進む勝者たちの背中を涙と共に見送る。今度は挑戦者として追い縋るために。そして勝利を収めた黒帝もまた、誰かの背中を追う者であると。それが示された所で、王者白王の試合へと繋ぐ。ふつくしい……。
 関東大会のクライマックスでは、青学と灰原(まだ負けと決まったわけじゃないから!)によるルーザー同士の対決が描かれるのでしょう。そしてその舞台こそが、これまで負け続けてきた敗者の中の敗者である「彼女」のターニングポイントであると半ば確信のような期待を抱いています。まあ先の予想は控えておきましょう。

 美しく残酷な勝負の世界。久々に魂が震えるほど熱くさせられました。
 ありがとう、ハリアーP。


 

関連記事
スポンサーサイト
Comment
Trackback
Trackback URL
Comment form













管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

Author:ぽんず
私は好きにした、君らも好きにしろ

アニバタ Vol.6アニバタ Vol.9に寄稿しました。よろしくです。


このブログについて

※感想記事はネタバレがデフォです。

当ブログはリンクフリーです。お気軽にどうぞ!
現在相互リンク募集中


twitter
検索フォーム
ランキング
にほんブログ村 アニメブログ アニメ感想へ

アクセス解析
外為どっとコムの特徴
ブロとも申請フォーム
QRコード
QR

Page Top
Powered by FC2 Blog | | Template Design by スタンダード・デザインラボ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。