アニメを中心に、漫画や映画、小説など創作物の感想を載せるブログです。

The Princess of Tennis

テニプリンセス 幸福なる困難

 長きに渡る関東大会の決着。


 激戦に次ぐ激戦の末、ついに決着の時を迎えた関東大会。
 決勝戦、三位決定戦、そして五位決定戦。どれも見逃せない試合をどう描くのかと思ったら、まさかのダイジェスト同時進行。これがさらなる群雄割拠の様相を見せるであろう全国大会編のデモンストレーションであることに疑う余地はないでしょう。
 しかもただそれぞれの試合を垂れ流すのではなく、明確なテーマ性を個性豊かなキャラクターたちがぶつかり合い、また自分との戦いに臨む過程を通すことであらゆる切り口から描いていくので、密度は薄まるどころかその濃さを増すばかり。
 で、最後の最後で「長きに渡る決着を」でしょ? これ先に言っちゃうけど、当然50話以上1年以上かけて書いた関東大会編のことであり、大会記録を更新したたくみんと奈緒のタイブレークのことでもあり、トライアドプリムスの約束でもあり、そして顧問の世代から現世代へと紡がれる青学と白王の因縁でもある。この時点でクアドラプルミーニングだけど、私が気付いてないだけでまだあるかもしれません。

 では、この作品がおそらく全体を通して描こうとしているテーマとは何か?
 ハリアーPのコメントによると、「卯月で描きたいテーマと、かな子で描きたいテーマが違っていて、それは確かに違うのだけれど、最終的には一本につながるっていう流れ」らしいですが、それを一言に集約させたのがおそらくは白王高校の顧問である志乃さんの台詞なのではないでしょうか。
 曰く、「テニスの『魅力』は、『難しい』こと」なのだと。敗北し自らが王者のプライドに傷を付けたと自分を責めるユッコにかけた彼女の言葉、ぶっちゃけ何が言いたいのかイマイチ判然としない言い回しで、回りくどい台詞回しはハリアーPらしいっちゃらしいのですが、これは少し度が過ぎている。もちろん、わざとやってるでしょうね。
 そこを考える前に、前提として示しておきたいことがあります。それは、この作品が「アイドルマスター シンデレラガールズ」の二次創作で、各校にアイドルたちが在籍している、すなわちどのチームもが主役として輝ける可能性を秘めている、だからこそ出来る群雄割拠の群像少年漫画をやろうとしていること。少なくとも現時点では着々とその準備を進めているように見えます。だって、全国大会では明らかに青学と一度も戦わないまま沈む高校もありますからね。それぞれのチームが、主人公チームとは関係なくそれぞれの因縁とドラマを抱えて試合に臨んでいる。今回の関東大会ラストスパート編に限って言えば、主役のはずの主人公チームに特別比重を置かれた構成ではなく、もはや6校のうちの1校に過ぎませんでした。
 それぞれのチームの、個々の選手が、自分を表現する場があのテニスコートであり、アイマス世界でいうステージなのでしょう。それぞれが好き勝手に輝こうとしている中でも、やはり一貫したテーマがあり、それを二つに大別して2人の主人公に分けた、という構造。
 大雑把に言えば、卯月のテーマが「テニスを楽しむ」であり、かな子のテーマが「テニスで勝つ」なのだと見ています。この2つは時に相乗し、時に相反するテーゼ。卯月は1話からテニス大好き人間として描かれており、自分のテニスを信じることで関東大会では大活躍を見せました。一方のかな子は当初から弱い自分を変えようと足掻いており、覚醒しながらも敗北続きの戦績。この2人の対比軸が分かりやすいというだけで、大枠で見れば他のキャラクターも両軸の間で揺れ動く様を描かれています。病気のせいで切望した試合を苦悶で歪めてしまう加蓮。チームの勝利のために己の望む戦い方を捨てたフェイフェイ。もっと範囲を広げれば、一度あまりの過酷さにバレエの世界から脱落し、今は仲間とともにテニスコートという地獄に立っているウサミンもこれに当て嵌まるでしょうね。
 2つのテーマが最終的には一本に繋がる、これは最強の選手本田未央を見れば分かりやすいでしょう。テニスの魅力を微塵も疑わず、ただただ純粋に強い。「楽しんで」「勝つ」の両軸を当然のように束ねる完成像。だからこその最強キャラクター。
 逆に言えば、彼女以外の登場人物は皆それぞれのアンビバレンツの間で苦しんでいます。それが他校の選手にまで等しく及んでいることが示されたのが今回のエピソード。これまで何度も敗北を経験したが故に、ルーザー同士の対決では一歩先を行ってみせるという青学VS灰原の基本プロット。ダブルス2敗、シングルス1で1勝してシングルス2で3敗目と、完全に戦績が逆なのは狙ったのか偶然なのか。とにかく、ここでは敗北を振り払おうとするあまり黒星を重ねる青学側と、敗北を乗り越えて今までの自分を変えた灰原、という構図が見事。特に泉ちゃんと文香さんが見せる高揚感が素晴らしい、テニスを「楽しんでいる」!
 さらには、有香の覚醒展開がまたね。身体能力はあるのに、無我が制御できずに最後まで戦えない。無我は使いこなせるようになっても身体が追いつかないかな子とは逆パターン。自らの未熟のせいで、信念と勝負を両立できない、というのは他の様々な試合にも共通するパターンだと思います。だからテニスは難しい。

 逆に揺るがない強さがあれば、困難な幸福を実現することができる。ダブルス最強と呼ばれる城ヶ崎姉妹は、ここにきて妹のために高校大会に出場した美嘉、という構図を見せてきました。いくつか伏線が張られているように、おそらくあのペアはシンクロだけでなく、美嘉の実力自体が強さの根源になっている節があって、青学戦と琥珀谷戦の様子を見ても自分はフォローに徹してガンガン莉嘉を前に出しているように見えます。莉嘉を「楽しませる」のが彼女の目的。
 一方で、全国トップクラスながらもある種の欠落を見せたのが秦緑エースのフレデリカと、琥珀谷最強選手の柚。この2人の試合描写が秀逸で個人的には本エピソードの白眉。特にフレデリカは、テニスを全力で楽しむという点ではちゃんみおにも劣らない、大舞台にも自分のペースを崩さず劣勢でもむしろテンションを上げてくる異様な精神性を見せ、リードしているはずの柚を追い詰める彼女なりの強さを見せ付けました。しかしそれでも、彼女は負けた。敗北した後も全力を出し切った満足感に酔いしれていたフレデリカが、仲間たちの表情を見てチームとしての敗退を知り初めてその笑顔を曇らせるシークエンスは神懸かってました。何がすごいって、この話数で最初の一言しか喋ってないのにこの作品における宮本フレデリカを表現しきってることですよ。ちゃんみおとフレデリカの違いは、多分視野の広さだろうなぁ。試合となると目の前しか見えなくなるのがフレデリカの強さでもあるけど、チームとしての勝負を背負っている自覚が足りなかったのかもしれない。
 その点で柚は自らの責任の重さにプレッシャーを感じ、さらにはフレデリカの気迫に終始圧されていて、この辺2年生が故?の彼女の未熟さが垣間見れていいのだけど、一方で後がない状況に追い込まれても「楽」の感情しか見せないフレデリカに呼応したように笑みを見せる気概もあって、面白いバランスで成り立ってるキャラクターだと思うのですよ。喜多見柚はハリアー世界に限らず好きなキャラですが、ライバルフラグがバンバン立っているアーニャとの試合がクッソ楽しみですね。琥珀谷と銀誓は一回戦でぶつかるだろうと予想しています。杏には是非本気出して美嘉の全力を引き出して欲しい。
 
 話が逸れた。もう一つのトップクラス同士の試合、たくみんVS奈緒はとにかく長期戦ということしか伝わらないのだけど、この二人は精神的にも肉体的にも超越した完成に限りなく近い実力者なので、一切の障壁のない、純粋な因縁の対決が実現できていたのだと思います。そうなれば、もう勝敗を分けるのは運とか根性とか、そんなもんでしかないのでしょう。その域に辿り着くのがどれだけ困難か。テニスの魅力は難しいこと。

 そして青学VS灰原戦では、荒削りながらも自分のテニスを信じ続けることが勝利に繋がっていた卯月が、勝負の空気を知ったことで秘めていた実力が開花した元エンジョイ勢高森藍子にボコボコにされる、という示唆的な展開。
 結局は、楽しむだけでも、信じるだけでも、勝ちたいという意志だけでも足りず、実力を身に付けなければ勝ちあがれない。テニスは楽しいけど、負けたら悔しい。かといって勝利のみを追い求めたら、結果を出しても気が重くなる。
 心技体のどれかが欠ければ、自分を乗り越えることはできない。だからこそ、自分の心を操ることができれば、幸せに困難。
 その難しさを、テニスの魅力と信じる者こそが、ステージの上で最後の最後まで輝ける、The Princess of Tennisなのだと。

 進むべき道を見据えたこの物語が、いったいどれだけの高みへ辿り着けるのか。身体が底からゾクゾクします。
 更新速度から見ても、早く全国大会が描きたいというコメントを見ても、ハリアーPのこの漫画へのモチベーションはやったら高くて、才能をフルに発揮できる媒体を見つけられたのだと思います。そりゃこんだけ表現できればなぁ、楽しくて仕方がないだろうな。
 だからこそ私も心の底から楽しめている、というのはさすがに牽強付会ですが、ハリアーPの信じる王道が、少なくともひとりには確実にぶッ刺さっているということだけは言っておきたいと思います。


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アニバタ Vol.6アニバタ Vol.9に寄稿しました。よろしくです。


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