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ガッチャマンクラウズ 感想 世界はアップデートされました

 アップデートで良くなるとは限らないよね(Firefoxユーザー並の感想)


 さてさて、2013年TVアニメの中でも一部で大いに話題になった作品、『ガッチャマンクラウズ』。論壇云々はどうでもいいとしても、基本良い評判しか聞かないのでいつかは見ないとリストに入っていましたが、この夏に2期が放送開始するとのことで今の内にと手を出しました。近所のレンタルショップにほとんど置いてなくて探すのに苦労しましたよ。2巻以降取り扱ってないってなんやねん!

 見てみればなるほど、ヒーロー物の根幹を揺るがしかねない作劇と、現代の延長線上にあるようなSNS描写が融合し、王道と邪道の間を突っ切るようなストーリーが展開されていて、否応なしに思考が促される社会派エンターテインメントとなっておりました。
 しかし何と言っても一番の引力を発揮しているのは主人公、一ノ瀬はじめという存在。
 現代版ナウシカという表現にも頷けるような狂気と見紛うほどの強度を持ったキャラクターで、人畜無害な私などは途中から震えながら彼女を見ていました。
 決して天然ではない、負のそれも含めて感情がないわけでもない、なのにこの振る舞いはなんだ?
 彼女は一体、何を、誰を、どこまで信じているんだ?
 その辺がどうしても分からなくて、後半頭痛に苛まれながらも彼女の内面に迫ろうと2週目に挑みましたが、結局よく分からない。まあ大体そんな感じです。

 元祖ガッチャマンを全く見たことがないのであまり突っ込んだ指摘はできませんが、まあ誰が見ても分かる通り劇中のガッチャマンは(少なくとも当初は)未だに勧善懲悪を行いお約束と言う名の規則を頑なに守り続ける旧態依然な時代遅れのヒーローとして描かれていました。
 今の時代にんなもんいらねーよと言って憚らないのが劇中SNS『GALAX』を運営する爾乃美家累。彼は「世界をアップデートするのはヒーローじゃない。僕らだ。」と標榜するように、特別な力を持たない一般人が突出したヒーローに頼らず、それぞれの出来ることを真っ当して問題を解決し、世界をより良い方向に「アップデート」することを目的としています。
 初期段階として両者の二項対立がありつつも、「ガッチャマン」であり作中で最も「GALAX」を有効活用している人物のひとりでもある一ノ瀬はじめが間に配置されている構図、と言っていいかもしれません。彼女は凝り固まった固定観念に一々なぜなにどうしてと疑問をはさみ、常識という名目で停止した思考の稼働を促し続けます。
 その結果、ただ見敵必殺するだけで不毛なチキンレースを続けていたMESSちゃんに纏わる問題もあっさりと解決してしまいました。また、GALAXを世代や役職を越えて人々と繋がれるツールとして活用し、また情報媒体としての利を活かして学校での事件を解決するなど、SNSの有用性を示すのに一役買っていた存在でありながら、決してそれを絶対視していない。あくまでひとつの便利な道具として、その脆弱さを理解しつつ決して依存しない姿勢を表明するのです。
 電車でお年寄りに席を譲らない若者、狭い道を猛スピードで走り抜ける自動車。生真面目な清音が憤るのも無理はない、世間的には明らかにマナーや常識から外れた日常に潜む小さな悪。それにさえ、「何か事情があるのではないか」と想像を巡らす彼女の思考法は、一見性善説に拠ったものかとも思えるのですが、しかし「そう考えれば怒る気も失せる」という結びや、上記のフラットなスタンスを鑑みるに、むしろ人間の善性にも悪性にも過度な期待を抱いていないのではないかと思えます。
 そもそもが、何かに対して「これは善だ」「これは悪だ」と規定する行為は、その時点でそれ以上の思考を停止させてしまう。それはきっと一ノ瀬はじめが己に課したルールに反する行いだ。作中一の萌えキャラ(異論は認める)梅田くんが象徴的ですが、彼は世界をアップデートするために選ばれた意識の高いギャラクターとしてクラウズの力を授かったハンドレッドでありながらも、るいるいとの音楽性の違いからバンド解散に至った人物。力に酔って世界を良くするという名目でテロを起こし、しかしいざ自分の愛する家族が住む立川が標的になると血相を変えて「暴力じゃ何も変わらない」とかほざきだす、実に愛すべきおっさんです。やる気になったと思ったらへっぴり腰で、すぐ調子に乗るすがやん総理とか、単純に「いい奴」「悪い奴」に二分できるようには描かないよう神経を使った作劇になっていたと思います。
 気まぐれに正義感を抱え、しかし使い方が未熟で、無思慮に流れに身を任せ、安全な場所から好き勝手言うのが群集。だからこそ、累の掲げる理想は理想のまま。確かに彼の選んだハンドレッドの人たちには、何か事件や災害が起これば真っ先に手を挙げるような人のいい連中ばかりみたいだったけど、梅田のようにいつそれが功名心に変わるか分からない。  それぞれに生活があり、ネット上の繋がりだけでは把握しきれない事情を抱えている以上、「正義の味方」を無報酬で続けるにはリスクが高すぎる。余程の酔狂者じゃないとヒーローなんてやってられないというのは、他作品でも時折見られる描写ですね。「一時的に人を愛することなんざ悪人でもできる。難しいのは恒常的に愛し続けること」みたいな事をゾシマ長老も言ってました。ついでにもひとつゾシマ長老から引用しますが、「人類全体を愛すれば愛するほど、 個々の人間に対する愛が薄らぐ」という言葉。私が一ノ瀬はじめのある種の畏怖を感じているのはこういう事かもしれませんね。だって、彼女は正義に基づいて行動しているのに誰かが傷付いていてもあまりにも冷静に振舞い過ぎている。彼女の愛は範囲が広すぎて、それが人間としては狂気の域に達してるんじゃないのか、というのが一つの見立て。
 一方、この作品に登場する二つの勢力をぶった切るもう一つの存在、ベルク・カッツェ。
 一ノ瀬はじめもベルク・カッツェも両方ハサミを武器にしている、というのがなんとも示唆的ですねー。
 カッツェは神出鬼没で、目の前にいながらも自由に姿を消す事ができる。ネットスラングと煽りをマシンガンのように口にする彼は、ネットにおける「荒し」に象徴される匿名性の暴力の象徴に思えます。透明な嵐案件のひとつでもある。
 丈さんが一方的にボコられるのは、「まだそんなことやってんの?」と煽られたように時代遅れの勧善懲悪バトルを挑んでるからで、しかし見えない場所から「個」を好きなだけ誹謗中傷できる匿名の暴力の前には歯が立たない。7話のこの辺の描写、必殺技を叫べばカッツェにバカにした調子で復唱されるわ、清音とカッコ付けた会話してる間もひたすらるいるいが嬲られてるわで、旧世代ヒーローへの皮肉全開でヒドかったですね(褒め言葉)
 そこに表れた一ノ瀬はじめ。さすがに彼女は変身してのガチバトルは挑まず、真っ先に対話に臨みます。カッツェも嬉しそうに応答するのですが、返って来るのは揚げ足取りと定型文だけ。実際ネットでの荒しに反応してもこんなんばっかで、まともな会話なんて成立しないんですよね。そこに個を読み取ることすら困難。
 ようやく引き出した質問の答えも、「地球が滅びるのが見たい」というどうしても相容れない欲望のみ。少なくとも「色んな人が集まって、皆にこにこー」という願い自体は本音と思える彼女にとって、他人を不幸に陥れることでお腹一杯になる欲望を看過することはできないのでしょう。それぞれ事情はあるけれど、どうしても否定しなければいけないものに直面した。だからこそ、彼女は初めて「さびしい」とネガティヴな感情を零したのではないでしょうか。

 一ノ瀬はじめは人間味薄いレベルでポジティヴに見えるキャラクターだけど、あえて質問に答えなかったり、妙な間を持ったり、時に翳った表情を見せたりと、しっかりと裏のある人物として描かれています。3度あったカッツェとの対話シーンでは、「もしかして泣いてる?」という問いにワンテンポ遅れて否定を返し、「ムカついてるでしょ」という煽りには沈黙で返している。常に何を考えてるのか分からない笑みを貼り付けてる彼女の内心で、果たして腸が煮えくり返っていたのかどうかは誰にも分かりませんが、どれだけ立川が混乱の真っ只中に陥っても常にカッツェを探し対話の機会を手繰り寄せ続けた彼女が、彼を唯一己の敵として見定めていたのは想像に難くありません。
 そもそもが、匿名性で以って世界を混乱に陥れるカッツェに対して、自ら正体を公表しネット社会において矢面に立ってみせる彼女の一手は明確に対立の意志を示してるんですよね。有象無象の誹謗中傷など、電源を切ってしまえば届かない。だから目の前にきて、直接話せと。累ともわざわざ変身してまでノーメイクな自分のままでの相対を臨んだ彼女のスタンスが、無軌道に見える立ち回りの中で一貫性を保ち続けているのが分かります。
 無責任な言動をする群集と、世界の矢面に立って行動に責任を負う主人公、という構図は『ヴァルヴレイヴ』とか『ユリ熊嵐』とかでも見られるのでその辺を補助線に使っても面白そうですが、メンドクサイので雑に指摘するだけに留めときます。
 
 一ノ瀬はじめの危うい側面はODとかうつつとかは気付いている描写はあるけど、一方で清音やパイマンは「こいつはスゴイ奴だ」と付いて行くだけで精一杯な部分があるよね。
 どっちにしろ、終始「アンタたち甘え過ぎィ~」なわけですが、ヒーローチームの中でさえ突出したヒーロー、つまり「ヒーローの中のヒーロー」としての彼女を描ききったのが結局はこの作品の凄さだと思う次第です。
 一度自身の掲げる正義の脆さを味わった累は、それでも混沌に陥った立川をなんとかしたいというGALAXユーザーの声を聞いて、彼らに再び力を与えて託すことで希望を見出した。ように見えるんだけど、結局この解決法って確かに自体は収束したし、みんな楽しそうに笑ってたけど、明らかにゲームクリアによる達成感が正義感を上回ってて、内発性を促すという当初掲げた理想はどこいったのっつー話な訳ですよ。逸れたお爺さんと子供を家族の元に届けたクラウズが、「ありがとう」という言葉すら省みず手に入れたポイントのことしか考えてない描写見て「このアニメ怖え!」と戦慄しましたもん。累が梅田に語った人の為になにかをするプリミティヴな喜びなんてそこには微塵もなかった。力を与えて、ゲーム性によって快楽性のある目的意識を刺激したから上手く転がったけど、やってることはただの扇動で、自分の意志で考えず流れに身を任せる群集像な何もアップデートされてませんよ。サイコロの目がいくらか操作できると提示されても、私にはそれが希望とは到底思えない。
 で、その構図すら冷徹に見抜くのが一ノ瀬はじめの空恐ろしさですよ。「みんながヒーロー」と人は誰でもヒーローになれる可能性を秘めてるんだ!とお決まりのパターンに上手くまとめたような事を言った直後に、あの歌を口ずさみながら去るというね。
 
 ヒーローってなんスかねー♪ なんなんスかねー♪

 誰もが無邪気に自分たちは正しい行いをしたんだ、俺だって力があればヒーローになれるんだと、万能感にも近い集団意識に酔いしれている中で、ひとりだけただひたすらに思考を停めずその在り方を問い続ける。

 一方、常識とルールの壁を乗り越え見えない明日に踏み出した清音(ただし彼女が通った道をなぞっただけ)や、燻っていた心に火をつけた丈さん、子供たちの笑顔のため愛する星のため恐怖を乗り越えたパイマン、人助けの嬉しさを身に付けたうつつなど、実に人間的な成長を見せヒーローとして真っ当な活躍を見せたガッチャマンたち。
 彼らは無責任な群集と違って悪に憤り他者を気遣う、内発的な動機を保ち続けることができる存在で、だからこそ選ばれたヒーローになれる存在として現代においてその在り方を再定義することができたのだと思います。
 だから、立川での戦いはもっぱら悪を倒すのではなく弱い人たちを守ることに主眼を置いて描かれた。地球を守る存在として、その立ち位置を確立したのです。


 何もかもが丸く収まったかに見える状況で、諸悪の根源ではなにせよ、明らかに危険な火種をどうにかしようと向かったのはやはり一ノ瀬はじめだけでした。
 この辺が彼女の理解し難い凄みなんですよね。なぜ彼女は、皆の頑張りを肯定し、影ながら支えた上で、誰にも相談せず母親にちょっと甘えたくらいでどうして最も辛い役割を引き受けられるのか。
 それは彼女が不幸にも誰よりも高いヒーローとしての資質を持っていたから、というのに尽きるのではないでしょうか。誰も彼女の苦悩を肩代わりすることはできない。ヒーローの中にあってさえ孤独。孤独はヒーローの本質で、だからこそ彼女は誰よりもヒーローだったという悲劇。
 表裏一体にあることを知っているはずの人々の「悪意」から目を逸らし、目の前の「人々」を守るだけで満足してしまった仲間たち。すがやんは総裁Xたんを利用して「みなさん」をリーダーとして共犯に迎え新たな時代を築く。様々な問題と忘れられた歪みを抱えたまま、世界はアップデートされた。置き去りにされた悪意を、電源を切る事すらできずにうちに抱え、人知れず日夜戦い続ける。その狂気染みた決断を経てさえ、一ノ瀬はじめは今日も笑顔で何も変わらない朝日を迎えるのだ。

 2期ではインサイトっていうくらいだから、彼ら彼女らが見ないふりして忘れた自分たちの内側に潜む悪の種に目を向ける展開になるんじゃないッスかねー、と適当に考えています。
 その前に、本作の最終回にはどうやらDC版というものがあって、レンタルではなく製品版を手にしないと見れないそうじゃないですか。5月にちょうど廉価版のBDBOXが発売されるそうなので、購入するのに吝かではありません。2013年アニメではヴァルヴレイヴの方が好きだしBD欲しい度は高いのですが、やはりBOXがあってお値段も手頃というファクターはデカいですねー。
 どうにも全体的に捻くれた感想を抱き過ぎな感がなきにしも非ずですが、ポジティヴなメッセージを描いた作品とはどうしても思えないというのが正直な所であります。
 だからこそ面白い、というお話しでした。


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アニバタ Vol.6アニバタ Vol.9に寄稿しました。よろしくです。


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