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漫画

僕のヒーローアカデミア 衝動のままに書き殴ったメモのようなもの

本誌ネタバレ注意。


 勉強や運動に優れたトップカーストのいじめっこと、地味で冴えない無個性なナードのいじめられっこ。この作品では強い個性を持ったヒーローが富と名声を手に入れ勝ち組になる社会構造が描かれており、ヴィランは少なくとも物語開始当初では大した影響力は持たず日陰者として描かれている。すなわち、いじめっこがそのまま成長し社会的な成功を手に入れ、凡人は踏みつけられて生きていくだろうという社会構造が1話の時点でデクと爆豪の関係性に見られる。
 だからこそ、潜在的な差別構造を孕んだヒーロー社会とは一線を画す、救う者として特化した資質を持ったデクが本物のヒーロー、オールマイトに見初められその後継として育てられる。生まれ持っての弱者が強者を打ちのめす、単純明快痛快娯楽劇の構造の裏で、自己犠牲を大前提とされるヒーローの在り方、その正しさ故の歪さがデクという器に埋め込まれたワン・フォー・オールの力に象徴される。
 ひとりはみんなのために。誰かを救うため、自分自身を犠牲にし続ける。何度諌められても、力を抑えるやり方を身に付けても、デクは周囲の忠告と心配を裏切りただ目の前の誰かを救け続ける。ヒーロー原理主義者の狂人ステインに認められた本物のヒーローの資質は、それ故にある種の狂気の産物だと看破される。ステインが贋物だと断じた飯田くんの憎しみに囚われた言動は、けれど普通の人間には当たり前の感情だ。逆説的に、まともじゃヒーローは務まらない。デクがオールマイトとステインを重ねて見るのも、両者が何に狂っているかの違いしかない、表裏一体の本質が故。
 利己心を凌駕する奉仕の精神は、「余計なお世話はヒーローの本質」というオールマイトの言に象徴されるように、傲慢なまでの正義に集約される。轟くんはデクのそれに強引に救われた。爆豪はデクのそれに著しくプライドを傷付けられた。正しさは諸刃の剣だ。ヒーローの業は、内から湧き出る衝動によって振るわれ続ける。

 誰だって救ってしまう、正義のヒーロー。そんなものが幻想であると誰よりも知っているのは、平和の象徴であるオールマイト。それでも彼は、人々が安心に暮らせる社会のために笑っていなければならない。人々は彼の身体がボロボロであることを知らない。人知れず我が身を犠牲にするヒーローという供物のもとに成り立った平和。敵連合の襲撃を立て続けに受ける雄英が世間からパッシングを受ける構図は、人々が当然にようにそれを享受し続ける歪みを象徴したものだ。
 その歪みを体現したかのような存在が、デクと対をなずヴィラン側の主人公、死柄木だ。オールマイトという平和の象徴に支えられた社会が、いかに脆弱なものかを証明する、それを己の信念と定めた彼は、しかしその一方で誰よりもヒーローを欲し、そして叶わなかった過去を持っていた。
 どんな事があっても、助けを求める声に応え、きっと誰かヒーローが来てくれる。そんな安心の下に成り立っている社会が、幻想でしかないことを、その身を以って知っている死柄木。いかに優れたヒーローでも、その目が、その手が、その足が届く範囲の者しか助けられない。けれど世間は、こぼれ落ちた者などいなかったかのようにヒーローを讃え、そしてヒーローは歓声に応えて笑うのだ。
 ひとりはみんなのために。ヒーローは人々を救う存在であるが故に、誰か一人のために生きることは出来ない。本質的に、孤独を抱えた存在なのだ。その隙間に落ちてしまった死柄木に、手を差し伸べたのは悪のカリスマ、オールマイトの宿敵にしてワン・フォー・オールの対極、オール・フォー・ワンだ。オールマイトの「私が来た」に対して、オール・フォー・ワンが死柄木に掛けた言葉は「僕がいる」。
 駆けつけて去って行く者と、ずっとそばに付いている者。きっと人が前に進むために必要なのは、永遠の庇護者でなく立ち上がるために手を貸してくれる者で、それは支配と先導の違いだ。きっと本当の意味でその人のためになるのは、寄り添う闇でなく先を照らす光なのだろう。それでも、ヒーローは間に合わなかった、死柄木を救ったのは悪だった。少なくとも、彼にとってはそれが全てなのだ。
 たとえオール・フォー・ワンが彼らを駒としか見ていなかったとしても、誰も見付けられなかった死柄木を、行き場所がなかったヴィランたちを、人生の落伍者たちを、社会は、ヒーローは救えない。ヒーローとヴィラン、確かに現実に、同じリアリティライン上に存在しているはずの、同じ人間を善悪の二項対立に押しこめ、無邪気に対岸上のショーとして観戦する民衆の、自覚なき差別意識。透明な嵐が吹き荒れる、リアルは地獄だ。
 社会の歪がそのまま人格を象ったのかのような、死柄木の怨念。たった一言でヒーローが存在すること、その功の裏にある業を炙りだしたオール・フォー・ワンの圧倒的存在感。光が強ければ強いほど、闇が深まっていく。いよいよその真価を発揮し始めた『僕のヒーローアカデミア』、最高に熱いです。

 ヒロアカ、そしてテニプリンセス。自分の人生でも最高の少年漫画に、年甲斐もなく、2作も出会えたこの時代、巡り合わせに圧倒的感謝。




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