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ゾンビランドサガ リベンジ 第5話 『リトルパラッポ SAGA』 感想

かなしみはこうやって
鳴らした手で飛んでった
子供達は踊り出す
またひとりふたりと
その楽隊に乗っかった
選りすぐりのコーラスラインだ



 ピーターパンシンドロームという業を抱えたフランシュシュ6号・星川リリィが、飛び出すハートにたくさんの想いを抱えて本物のピーターパンになるエピソード。
 1期でも8話をベストエピソードに置いたが、2期でも星川リリィにぶっ刺されました。別にフランシュシュの中でリリィが特別に好きかと言ったらそういうわけでもないのだけど、『概念アイドル』に対して脆弱性を抱える私には特効を持っているキャラクターということなのだろう。

 星川リリィは大人になってしまうことへの拒絶反応で死んだ天性のピーターパンとして永遠の少年性を獲得しており、父親への別れを告げ思い出をキラめく星へと昇華した今、もはや彼/彼女に舞台裏も表もなく、愛らしい純真さを魅せるトゥインクルなアイドルとして揺るぎない存在となった。
 そんなリリィの前に対比する形で現れた大空ライトは、子役としての賞味期限を自覚し、いずれ大人になることを見据え将来の野望を語る。子役の有限性を自覚すればこそ、ライトは自分が子供であることを最大限に活かしたパフォーマンスをする。狙いすましたピンチの演出は大人の関心を上手く誘い、決勝の場で披露した美しい歌声は声変わりする前だからこそ出来る芸当だ。
「子供として見られている」ことを計算に入れ、大人が求める像を見事に演出して見せる、まさに『子役』。確かな実力に裏打ちされていればこそ、彼の小細工はプロの業として、観客を意のままに魅了する。
 一方のリリィは、決して「子供らしさ」を演じているわけではない。彼/彼女は身も心も永遠の子供であり、成長という不可逆性から解放された今、天真爛漫な振る舞いは星川リリィの生き様そのものだ。全身で子供のマジカルを表現するリリィのステージでは、笑顔もピンチも、演出じゃない。すべてが本物であるという、概念としての『子供』という虚構を実現してしまう。
 大人たちの琴線をくすぐるライトに対して、躍動するリリィのポップでキュートなステップは子供たちの五感をダイレクトに刺激して、その衝動に火を点ける。それはリリィが『子供らしさ』そのものをその魂を以って体現していることの証左だ。ただ、舞台においてどちらが正しいというわけでもないことも、両者のステージに共通する客席からの手拍子が証明している。

「成長の可能性」というメタ視点を排して言えば、ライトが勝ったのは審査員が大人だから、それだけの理由に過ぎないように思う。TVにおいてはそれが全てだと、リリィは知っているし、納得している。それでも、表現者としての自負を強く持つライトは、自分が演じたものの本物を見せつけられ、胸中で敗北心を植え付けられた。
 舞台の上、スポットライトがもたらす光と影が、あたかも生者と死者という揺るぎない現実をさらけ出すように、二人の握手を演出する。そして客席からは見えない男子トイレの中では勝者と敗者が逆転するように光と影の立ち位置が入れ替わる。しかしリリィは、影の中からライトを光の下へ引っ張り出すのだ。リリィは、敗者として勝者を讃え、亡者として未来へ羽ばたく少年の背中を押す。自分にはない、成長した先のビジョンを、ライトが持っているからだ。永遠の少年性、誰もが捨て去っていく幼年期に留まり続けることを選んだからこそ、リリィは強く、そして勝てない。
 それでも、そういう自分の在り方をリリィは嘆くことはない。大人への切符と引き換えに、子供だけが得られる世界からの祝福を永遠のものとした。男の子でも女の子でもない、性別を超越したフランシュシュ6号は、ただ子供たちに夢を与える偶像〈アイドル〉であり続ける。そしてピーターパンの様に、やがて飛び立つ彼らに祝福を与える存在となったのだ。
 リリィのステージを観た子供たちが、踊ってみた動画を出してYOUTUBEでバズる描写が白眉。少年少女がいずれ飛び立つ過渡期に瞬く星として、いつだって星川リリィ/フランシュシュ6号は輝いている。


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Comment

No title

こんばんは。
僕はリリィの歌に子供が反応することの意味づけを消化できなかったので、『子供らしさ』の体現の証左であるという読み解きとても参考になりました。切なくて同時にトゥィンクル。1期と言い、リリィ回は噛んで出てくる味わいが複雑でいいなと思います。

ツイートの「アイドルとして生きるということは、究極的には人間として死ぬこと」の端的さと言い、アイドルとゾンビィの関係性の言及に毎度唸ってます。ゾンサガ、本編と皆さんの言及で二度美味しいですね。

Re: No title

>闇鍋はにわさん

コメントありがとうございます!

アイドル、というか「アイドル産業」についてはショービズの非人道性が最も端的に現れた業界という偏った観点を持っているので、それを『ゾンビ』という一点で表した本作のウルトラCにはやられっぱなしです。
なお、良くも悪くも「ただそういう世界」として描いているのがアイドルマスターシャイニーカラーズであり、本作と合わせてアイドル物の金字塔に位置付けたりしてます。
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