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「話数単位で選ぶ、2021年TVアニメ10選」

年末恒例の企画。
去年は不参加でしたが今年は出来そうだったので書きました。
集計は「aninado」さんがやってくださっています。


■「話数単位で選ぶ、2021年TVアニメ10選」ルール
・2021年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。
・集計対象は2021年中に公開されたものとします。


SK∞ エスケーエイト #05 PART「情熱のダンシングNight!」
脚本:大河内一楼 絵コンテ:五十嵐卓哉 演出:宮西哲也 
作画監督:大貫健一、徳岡紘平


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 近年屈指のヴィランである愛抱夢のイカれっぷりが五十嵐コンテによってフルスロットルで描かれた回。明らかにヤバいし普通に怖いのに、突き抜け過ぎて楽しさ面白さが勝ってしまう、圧巻のレース描写が最高。
 圧倒的な才能故に誰も自分に付いてこれず、持て余した愛を暴力に変えてオモチャを壊してしまう、悲しきモンスターが初めて自分がじゃれついても壊れない『イヴ』を見つけた時の、神々しい絵面がどう観ても可笑しいのがたまらない。理解不可能な怪物の心象を完璧に表現している。
 そんな愛抱夢と対比する形で、正しく愛を育んでいくレキとランガの細かい描写の数々が良い対比になっていて、腕が折れて上手く開けられない水筒を開けてやったり、相手が話し始めたのを受けてバイクのエンジンを切る描写を、言葉を介さず当たり前にやる形で魅せる巧さにはグッときました。
 五十嵐卓哉の凄さを久しぶりに実感できるシリーズだったなぁ。早い所某シリーズから解放してくれ……(;_;


BEASTARS 第19話「蜜漬けの記憶」
脚本:樋口七海 絵コンテ:三原三千夫 演出:渋谷亮介 
作画監督:吉田雄一


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 当初より物語のフックであった食殺事件、その犯人の正体がついに明らかになるこの回。
 人種やら性別やら、社会が抱えるあらゆる差別や力関係の図式を擬人化した動物に見立て、極端なまでにカリカチュアライズした本作が、越えてはいけない一線と、それを守った上で互いに触れようとする登場人物たちの一幕を、演劇部で起こった事故から発展する騒動によって描く。
 その裏で、ありのままの自分を受け入れて欲しいと願う犯人が、友情を拗らせ、親友を欲望のままに食らう、一線を越えてしまった悲しき過程が明らかにされる。相手への労りを忘れ、エゴイズムに呑まれた獣が、醜い殺しを美しい愛の物語に塗り替えてしまう、加害者特有の認知の歪み。
 映画『最後の決闘裁判』を観た際に本エピソードを連想したのは、社会的強者による弱者への搾取が、ほぼ自覚なしに行われていることへの警句として、共通するものがあるからだと思う。
 恐ろしくもどこか物悲しい、ある友情の顛末を、鮮烈な色彩と演出で描いた、印象深いエピソードでした。


ウマ娘 プリティダービー! Season2 第10話「必ず、きっと」
脚本:米内山陽子、永井真吾 絵コンテ・演出:種村綾鷹 
作画監督:福田佳太、ハニュー、桐谷真咲


スクリーンショット (514)

 本作は実際の日本競馬史をなぞりつつも、同じレースで走るウマ娘ではなく、むしろ同じターフ上にいないライバル、「誰かの不在」そのものを核にしてドラマを作り上げる方向性で一貫しており、その点において今年最も意欲的だったシリーズ構成として評価していたりします。
 特に本エピソードでは、史実では一度もトウカイテイオーと走っていないツインターボを、一方的にライバル視してくるコメディリリーフとして描きつつ、この大一番で流れを決定付ける立役者に仕立て上げるという、並大抵の胆力では出来ないような構成の妙に舌を巻く。
「走る姿ひとつで誰かに夢を見せる存在」として定義付けられたウマ娘という存在を、ショービズの功罪に触れた上で描き続けた本作が、誰よりも走る姿を望まれているトウカイテイオーの復活劇を、彼女が誰かの走りを目撃することで果たす、という美しい二重構造で、本作のテーマ性を象徴するエピソードだったように思います。


スーパーカブ 第1話「ないないの女の子」

脚本:根本歳三 絵コンテ:藤井俊郎 演出:安部祐二郎 
作画監督:齊藤佳子


スクリーンショット (523)

 今年一番の初回を選ぶならこれ、という理由で選出。
 とにかく主人公・小熊さんの空虚な一日を描こうとする野心が素晴らしい。
 薄暗いトーンで描かれる美術、環境音以外を極力排した劇伴、丁寧ながら外連味のない芝居作画と、地味さを全く恐れない映像作りに惹きつけられた。
 無味無臭な生活描写のディテールや、学生主人公なのに何も起こらない学校の描写などが淡々と描かれていくからこそ、「カブに初めて跨る」「エンジンが掛かる」たったそれだけのアクションで暗い世界が文字通り色づく、直球の演出が映える。
 夜中のコンビニでのささやかなピンチも、ちゃんと緊張感が伝わってくるミニマムさ。地に足の着いた質感は唯一無二でした。


オッドタクシー #04「田中革命」

脚本:此元和津也 絵コンテ:木下麦 演出:大庭秀昭 
作画監督:土信田和幸、山懸亜紀 総作画監督:中山裕美


スクリーンショット (522)

 これまでの物語の流れを一旦断ち切って、いきなり知らんキャラの一人語りが始まり、そのまま最後までほぼ斉藤壮馬演じる田中の独白に終止する、異色のエピソード。
 何も持たない凡人が、誰にも理解されない浅はかなプライドを守るために壊れていく、その過程のひとつひとつが、ヤフオクやらソシャゲやら、いかにも誰にでも起こり得るような、手の届く卑近な範囲で描かれていく空恐ろしさ。
 取るに足らない狂気の発端が、満たされないまま瞬間的な快楽に浸って日々を過ごすあらゆる人間に刺さる劇薬になっていく様が、凄まじいリアリズムを以って描かれていく。
 人生の端々で生まれる偶然の数々が天啓となって、物語の必然が人物にとっての運命として語られる様にもある種の縮図が宿っており、文芸面では間違いなく本年のベストエピソードです。
 

SSSS.DYNAZENON 第10回「思い残した記憶って、なに?」
脚本:長谷川圭一 絵コンテ・作画監督:五十嵐海 演出:佐竹秀幸

スクリーンショット (517)

 前作に引き続き白昼夢回を担当する五十嵐海。相変わらずの演出の冴えで、普通のアニメではまず観られないような構図やカッティングのセンスをバシバシ見せてくれる。
 各登場人物のIfを描くエピソードではあるが、そこは人物同士の噛み合わない位相の在り様を描き続けてきた本作、結局は他我の境界を越えられず、どうにもならない現実が横たわっていて。それでも知恵の輪を解こうとずっと足掻いてきた夢芽だけが、届かなかったはずの相手の気持ちにようやっと触れられるという、ささやかな奇跡を手にする。
 知恵の輪が解けた瞬間の静謐なカタルシスも素晴らしいが、望んだはずの逃避行の果てで、それでも何も変わらなかったであろうことを確認した暦先輩の虚しい一幕が、たまらん無常感で大変よかったのです。


ゾンビランドサガ リベンジ 第十一話「たとえば君がいるだけで SAGA」
脚本:村越繁 絵コンテ・演出:宇田鋼之介 
作画監督:小笠原篤、細田沙織、川元まりこ、井元一彰、和田伸一、
桑原剛、早乙女啓 総作画監督:崔ふみひで、桑原幹根、山口仁七


スクリーンショット (518)

 たったワンシーン、ワンカットで「今まで観てきて本当に良かった」と思わされる事が稀にありますが、この回のこの表情がまさにそれで、脳裏に焼け付くような深い感慨がありました。
 佐賀を襲った水害、避難所生活という非日常の中で、人々は苦境を乗り越えるために努めて明るく振る舞い、笑顔の仮面を被る。誰もが虚勢を張って必死に生きようとしている環境下だからこそ、不意に人ならざる素顔を晒してしまったフランシュシュを人々が受け入れるという一夜の奇跡が生まれたのだと思う。
 しかし水野愛は、被った仮面を本物としてファンに見せ続ける『偶像』だから、素顔を受け入れられるという望外の喜びを胸の奥底にしまい込んで、アイドルという生き様に殉じる。本作がゾンビでアイドルをやる意味、本質がその表情に宿っていた。
 そして、源さくらに恋するただの少年であった男もまた、『乾くん』の素顔を仮面の下に隠して、永遠に持ってる男・巽幸太郎で在り続けることを誓う。一蓮托生たるアイドルとプロデューサーの関係性も完璧に描いていて、最終回を前にやりきった感がある。
 アイドルとして生きることは、究極的には人として死ぬことだという、私の個人的なアイドル概念に突き刺さる大満足のエピソードでした。


乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X 第8話「お見合いしてしまった…」

脚本:笹野恵 絵コンテ・演出:戸澤俊太郎 
作画監督:服部憲知、松田萌、上田彩朔、木村拓馬、小幡公春、
井本由紀、高橋美香、徳田夢之介


スクリーンショット (485)

 ラブコメ特有のマンネリズムに侵されたシリーズの中で、燦然と輝いていた掌編。
 窓の格子、光と影、花と蝶。一貫したモチーフを駆使して、貴族社会の婚姻事情と表に出せない恋心の間で雁字搦めになったニコルの心理描写を情感たっぷりに表す、意欲的なレイアウトの数々に、すっかり魅了された傑作エピソード。
 自分が背負う『家』という枷、それを重苦しい十字架の形をした影が、フレイとの出会いを経て、希望の光に変わる演出構成と、撮影や美術の力が存分に発揮された総合的な画面の美しさは、今年屈指の出来だったように思います。
 

Sonny Boy 第11話「少年と海」
脚本:夏目真悟 絵コンテ・作画監督:久貝典史 演出:大野仁愛 

スクリーンショット (520)

 イメージ豊かな画面が次々と繰り出される、「絵の良さ」そのものとしては間違いなく今年ベスト級のエピソード。モラトリアムを様々な形で描いてきた本作の最高到達点と思います。
 8話も捨てがたいが、久貝典史の描く瑞穂の可愛さとラジダニのエキゾチックな色気には抗えない。
 たったふたり、現実世界へ帰る決心をした長良と瑞穂。喪失と離別を乗り越えて、それでも残ったコンパスの針を頼りに、幼年期の終わりを迎える少年と少女の姿が、様々な示唆や暗喩によって叙情的に描かれていく。
 非常に観念的ながらも、どこか爽やかさを感じるフィルムで、分かったような分からないような視聴感なのに、ロケットが飛び立っていくシーケンスには自然と涙が溢れるような、得難い映像体験でした。


無職転生 ~異世界行ったら本気出す~ 第十七話「再会」
脚本:中本宗応 絵コンテ:長井龍雪 演出:高嶋宏之 
作画監督:尾西真成人、髙嶋宏之、塚本歩、野田猛、萩尾圭太、吉野彰敏 総作画監督:齊藤佳子


スクリーンショット (530)

 善悪では測りきれない、弱く身勝手な『俗人』を描くことから逃げない本作の魅力が、『やり直し』という作品のテーマと絡み合い、極上の人間ドラマを醸成したエピソード。
 行方不明の家族を探し続けて憔悴したパウロの心情を、短い尺で的確に表していく長井龍雪コンテの切れ味が凄まじく、消えたロウソクと枯れた花冠のカット一つで魅せ切ってしまうのはさすがの一言。その後も反復されるロウソクや杯といったモチーフが、物語を整理する役割を要所で果たしていくので、ごく個人的に「アニメを観ている!」という強い実感を得られた回でもあります。
 ルーデウスが真正面から観たパウロの顔が、かつての自分の鏡写しとなり、それを起点にあの時の後悔を、ふたりの再会を、諦めかけていた捜索を、「もう一度やり直す」という二重三重の決意につなげていく筋書きの鮮やかさ。
 ただひたすらずっと凄かった本シリーズの中でも、やはりこの回が白眉だったように思います。


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Author:ぽんず
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アニバタ Vol.6アニバタ Vol.9に寄稿しました。よろしくです。


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