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アニメを中心に、漫画や映画、小説など創作物の感想を載せるブログです。

映画

2021年劇場鑑賞映画ベスト20

 せっかく色々観たんだし、何か残したいなー、くらいのテンションです。


下位から順にどうぞ



第20位 キャンディマン


キャンディマン

 粒ぞろいのホラー映画群の中でも画面のクールさで言えば一番の出来で、映像演出だけでも満足感の強い作品。
 都市開発によって埋め立てられた人種差別の歴史そのものが、無辜の怪物と化す都市伝説。とにかくあらゆる環境音が不快に鳴るし、映る人物はとことん不安定に撮られるしで、視覚と聴覚双方を攻め立ててくる。黒人差別がアーティストの狂気に回収されてしまったような感覚には違和感もあるが、全身が粟立つようなザワザワ感に終始浸らせてくれた秀作です。


第19位 シン・エヴァンゲリオン劇場版:||

シン・エヴァンゲリオン

 まあちょっと待ってくださいよ。
 
 今年の映画を振り返るにあたって避けては通れないのがこの作品。元々オタクのわりにエヴァンゲリオンにそこまで思い入れのなかったけれど、それでも自分なりに思うことはあったのに言語化できていないまま年末を迎えてしまいました。
 碇シンジくんを世界の中心に誂えた末に崩壊を迎えた旧作から、世界からの解放を描くことでまったく同じテーマを語り直す、という試みは成功していた様に思います。
 見覚えがあるようでいて、どこか別人のように映る登場人物たち。ニアサードインパクトを経て、視聴者の感覚とシンジくんの感覚がシンクロしたのがQ。そして本作では、お馴染みのキャラクターたちがシンジくん不在の世界を生きてきた『見知らぬ他人』として、語られない空白の残り香を漂わせながら、いつの間にか自分たちの足場を固め、感情に整理を付けている様が描かれます。
 自他の境界が(メタ的な意味でも)曖昧だった本作の人物相関を、他者と他者にしっかりと線引きをした上で、相互不理解を前提の上で、身体は隔てられたままにATフィールドの先へそっと手を伸ばす。他者言及が自己言及になる作劇の果てで、自分のままで他人に何を与えられるか、という解になった事には素直に感じ入るものがあるし、最後のシンジくんと手を取り合ったのが最初から赤の他人であった真希波・マリ・イラストリアスだったことには深い納得感があります。
 ただ、Qの続きとして観ると、シンジくんの当事者性を徐々に引っ剥がしていくちゃぶ台返しのような物語展開への違和感を拭いきれず、そのまま周囲の人間の清算と巣立ちに焦点が移ってしまう作劇が自分の観たかった完結編かというと、明確に「違う」という感想になります。
 One last Kissのアウトロからシームレスに残響豊かなギターが鳴りBeautiful World (Da Capo Version)』が始まる、というエンドロールの流れは掛け値なしに素晴らしいものでした。最初からエヴァンゲリオンという作品の核を見抜いていた宇多田ヒカルがMVPです。


第18位 アイの歌声を聴かせて 

アイの歌声を聴かせて

 アニメでミュージカルをやる、という試みは様々な作品で行われている様に認識しているが、それに最も成功したのがこの作品なのではないかと思う。
 何も唐突に歌って踊ることにきちんとロジックが立てられているから、というだけの話ではない。フィクションに通底するフォーマットやテンプレート、それを舗装する舞台装置そのものをメタフィクションとして描くためのメソッドにまで昇華されているからだ。その構造を一身に担うシオンというAIの優れたキャラ造形まで含めて、緻密に設計された完成度の高いエンターテインメントと思う。
 ただ、そういった構造美に組み込まれているとは言え、この手のオリジナルアニメ映画にありがちなクライマックスのテンプレめいた展開が個人的にあまり面白いとは思えず(天気の子くらいブチかましてくれたら別)、最後のミュージカルパートの演出も、ソーラーパークでのそれに及ばない印象だったこともあって、終盤あんまりノレなかったのが個人的にマイナスです。
 AIに心は無い、それを見出そうとする人間がいるだけ、という筆致はとても好み。アナログハックされたサンダーの明日はどっちだ。


第17位 劇場版 Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット-後編 Paladin; Agateram

キャメロット

 純粋なアニメーションの満足度で言えば間違いなくナンバーワンです。
 色々残念なことになりがちなFGOアニメの翻案としても限りなくベストに近い出来。そうだよ、主役は別に置いていいんだよ。
 ひとつの世界を創造するが如きイマジネーションの発露、それが円卓の騎士それぞれで異なる忠義の形を表現し切る形で描かれるのだから、もうたまらない。
 伍柏諭という当代随一の天才によるフィルムをスクリーンで拝めたことに感謝。はよアグラヴェイン実装しろ!


第16位 花束みたいな恋をした

花束みたいな恋をした

 今この作品を振り返ってみると、「綺麗に終わらせること」という普遍的なテーゼを描いたような映画だった様に思えます。惰性でグズグズと続いて方向性を見失ったり、同じ様なことを繰り返して味のしなくなったガムみたいになったり、そんな風になるくらいだったら良い思い出だけを切り取って花束にしてやろう。そういう意志を最後にふたりが共有できたのが何よりの幸いだったんじゃないかな。綺麗だったよ、何もかも。
 同じものを見て同じことを感じる、という幻想を、本当は全然そんなんじゃないと互いがそれぞれ知っていながら、夢見るように抱き続けたが故の約束された破局で、だからこそ終わりを決めたあとの僅かなロスタイムでのやり取りが清々しく思えて、イチャイチャ期よりよっぽど尊さを感じたな。まるで戦友同士の様な別れ際の潔さに乾杯。


第15位 サイダーのように言葉が湧き上がる

サイダーのように言葉が湧き上がる

 ポップでオシャレでキュートなキャラデザ、美術、色彩、音楽のトータルデザインが単純に好み。土地に根ざした記憶が現在と重なって、今も昔も変わらないものを浮かび上がらせる、という構図を何故か今年はホラー映画でよく見かけたので、シンプルなラブストーリーでそれを描いた本作の印象が図らずも強く残りました。
 フィクションでは悪しき面が強調されがちなSNSを、時間も距離も越えて繋がれるツールとして活用していく作劇も新鮮で、俳句という文脈と音の連なりにより想いを伝える筋書きと相まってクライマックスの爽やかなグルーヴを成立させる、総じて純度の高い王道ボーイミーツガール作品。


第14位 あのこは貴族


あのこは貴族
 
 ことなる階級、位相で暮らす二人の女性を描きつつ、分断そのものではなくふとした瞬間に奇跡的に起こり得る共振を描いた作品。
 上流に居ようが底辺に居ようがこの社会は緩やかな地獄で、それでも人は生きていく。その支えになるのは、すれ違いざまに振る手や交わす視線だったりする。たとえ互いの人生は交わらなくても、同じ世界に生きていればそういう瞬間は誰にでも訪れるかもしれない、という『やっていき』の温度が心地よい映画だった。


第13位 返校 言葉が消えた日

返校

 まるで監獄のような学校、不条理な悪夢。
 台湾版『学校の怪談』とでも言うべき本作が描いたのは、かつて市井の人々が生きた相互監視社会における罪悪感に塗れた記憶だった。
 自由は欲しいが、命は惜しい。誰だってそうだし、だからこそ自分が助かるために誰かを売った過去が澱のように胸に残り続ける。忘れてはいけない罪への告発でもある物語が、それでも生きたいと思うこと自体は罪ではないと、罰を受け続ける人々への赦しへと着地したことの重さは、正直まだ受け止めきれてない部分もあるが、それも含め深い余韻を残した作品です。


第12位 レイジング・ファイア

レイジング・ファイア

 今年のベストアクション映画。
 何と言ってもドニー・イェンとニコラス・ツェーという二人のスターの存在感が最後まで映画を牽引していた。正直警察の暗部と善悪のせめぎ合いのドラマは眠くなるところが無いでもなかったが、徹頭徹尾二人の対比描写に絞っていればこそ、最後の教会でのタイマンバトルにこちらもボルテージ全開で臨むことができた。顔面グリッサンドとか最高過ぎて笑顔になっちゃった。
 車も銃も刃物も肉体も、あらゆるものを駆使した アクションが堪能できるんだけど、「そこからそこに行くの/届くの!?」という想像を超えるような瞬間がいくつもあって、画面に身体の延長として提示される事には興奮させられました。
 ハリウッドの大作ではついぞ観られなくなったようなワンダーを感じて嬉しかったので、順位は思いの外高めです。
 

第11位 空白

空白

 事故死したある少女の【顔】という空白を巡って繰り広げられる誰も救われないドラマ。
 語られず映されもしない問題に、それでも自分が救われるために【 】に当てはまる解を求めずにはいられない人間たち。真実を知り得ることも、事実を受け入れることも、もはや全てが手遅れで、自分の中でこねくり回された像を作って、納得し、なんとなく前に進むしかない。
 根底にあった問題は放置され、あるいは目を逸らされ、やがて世界は何事もなかったように回っていく。どこまでもエゴイスティックな人の営みに、身につまされるものがあったという意味で、おそらく今年最も共感できた映画だったんじゃないかと。こんな共感いらへんねん。
 公園にぬいぐるみを捨てに行くシーンのえぐ味が凄くて変な笑いが漏れちゃった。


第10位 機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ


閃光のハサウェイ

 今年のアニメ映画で、純粋な『画作り』については随一の出来。ドルビーシネマでないとポテンシャルが発揮されないアニメーション作品、という点で画期的に思えた。
 夜の街を襲うテロル、戦火から逃げ回る人々の臨場感はそこらのディザスター映画を優に超えていて、さらにそこにハサウェイとギギの場違いなロマンスの文脈まで挟まれる(そのギャップがマフティーと市井の人々のギャップにも掛かる)もので、このシーンだけでも映画としての満足感に溢れていました。
 また、ハサウェイがマフティーとして立ち上がるまでの心理の変遷を『移動』のシーケンスを以て描くドラマでもあり、そこから自らの身体を拡張(expand)するモビルスーツへの搭乗を果たすクライマックスに至る道筋含め、振るわなかった『007/ノータイム・トゥ・ダイ』に不足していたスパイ物の様式美を補ってあまりある栄養を摂取できたように思います。
 

第9位 偶然と想像

偶然と想像

 当人にとっては至って深刻な自体でも傍から見れば間抜けだし、馬鹿みたいな思い込みで思いがけない結果を招いたりする、不条理な悲劇と喜劇に溢れているのが人の世で、そんな瞬間が今年の作品にもいくつかあったけど、それを意図的に再現しようとた様な作品。
 決して分かりあえない他人同士の、摩擦が起こす悲喜こもごものワンダー。劇場が笑いに包まれるような温かい劇場体験は、(チョイスが悪いのかもだけど)重苦しい雰囲気の作品が多かった今年の邦画の中でも貴重な存在で、年の瀬に良いものが観られました。
 なんか世界的に凄いことになってる『ドライブ・マイ・カー』より断然好きです。あのタバコのショットは捨てがたいけれども。
 特に3話目、冗談みたいな偶然を引き起こしたエスカレーターのやり取りが、確信を以て必然に変える形で反復されるクライマックスのシーケンスには完全にやられました。相互理解の適わない人間同士だからこそ起こる奇跡の形がそこにあった。


第8位 KCIA 南山の部長たち


KCIA.jpg

 ポリティカルサスペンスにしてスパイ映画の傑作。暗愚な大統領の独裁による国家の混乱を受けての権力闘争が、非合理極まりないホモソーシャルと権威主義によって繰り広げられていく様が嫌なリアリティに満ち満ちていて、硬質な作風なのに描かれるドラマは異様な湿度を放っていく。
 とにかくイ・ビョンホンの演技が圧巻で、この映画の繊細な空気を佇まい一つでコントロールしていたと言っても過言ではない。大統領との醜悪で歪つなブロマンスがカタストロフするその瞬間、深刻さと滑稽さが同時に画面に表現される、あの盛大なすっ転びが名シーン足り得たのは繊細な演技の説得力に拠るところが多かったと思います。最優秀男優賞をあげたい。


第7位 アメリカン・ユートピア

アメリカン・ユートピア

 「去年新型コロナウイルスが発生してからこっち、一度も音楽ライブに行けてねぇ!!!」という個人的なフラストレーションの受け皿となってくれた作品。
 最高の音楽集団の最高のステージパフォーマンスに耽溺する。ただそれだけなのに、生命のプリミティヴな躍動も、日常や生活の息吹も、ポリティカルなメッセージも、あらゆるものが音と視覚によって表現されているので一本の映画として間違いなく成立していたように思います。
 今この世界でただの芸事になにができるのか、という問いに対するこれ以上ない回答だよなぁ。音響の良い劇場で”体感”できたのは僥倖でした。

 
第6位 最後の決闘裁判

最後の決闘裁判

 精緻な中世描写を当たり前の様に写していくリドリー・スコットの匠の技によって、3つの視点によって繰り返される物語が退屈する間もなく展開されていく。
 語り部による認知の歪みによって正当化されていく弱者への搾取、という構図をこちらの思考をハックするように描いてくるので、自分や社会の差別意識から目を逸らせないという悪辣さ。華のある騎士道物語のメッキをバリバリと剥がしていく作風に度肝を抜かれました。
 近年は特にアンチ・カタルシスを志す風潮があるように思いますが(直近だとFGO『ツングースカ・サンクチュアリ』もそう)、本作は最も高いレベルでそれを実現している作品の一つじゃないかと思います。
 圧巻の決闘シーンなのに、血は沸かないし肉も踊らない、悪趣味な茶番劇にしか観えないのスゲェよ本当。


第5位 劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト

スタァライト

 他者と自己の模倣、破壊と再生を繰り返し、『再生産』の物語はここに『再誕』の物語と成る。
 アニメーション映画で舞台歌劇をほぼやりきった偉業。キャラクターたちが役者として自らを壊し生まれ変わるという卒業と巣立ちの構図のみに絞りきった構成、装飾過多にして演出過剰な画面、そして何よりも台詞すら時にかき消すほどの爆音レヴュー曲の数々に圧倒されました。
 ほぼ音楽体験と同義と言っても良い劇場体験が鮮烈過ぎて、BDが微塵も欲しくはならないという弊害はありますが、名実ともに過去作品のエピゴーネンだった本作が、レヴュースタァライトという唯一無二の立ち位置を確立した怪作と思います。
 初見時、wi (l) d-screen baroqueと共に大場ななが現れ『皆殺しのレヴュー』が始まった時の興奮が忘れられない。いや、いまも眩しい。


第4位 草の響き

草の響き

 ここまで仄暗いカタルシスがあっていいのか、と衝撃を受けた作品。
 自律神経失調症の主人公と、彼を支える妻の淡々とした日常が、劇的な出来事は何もないのに些細なズレの積み重ねで着実に亀裂が入っていく様の恐ろしさ。そしてそれに絡むようであんまり絡まない少年たちの友情が始まって終わってしまうまでのドラマ。
 『走る』という無心の行為に託された余人には立ち入ることのできない心の在り方をただそこにあるものとして描けばこそ、倫理的社会的な正しさから完全に脱却した心の解放をカメラに映すことができる。ラストカットの表情が網膜に焼き付いています。
 今年のベスト実写邦画です。こういうのが観られるから映画は面白い。


第3位 プロミシング・ヤング・ウーマン


プロミシングヤングウーマン

 テーマ的にそれで済ませて良い訳はないんだけど、まずは今年最も脚本的に完璧だった作品であったと言わせてください。
 無謀で独り善がりな復讐譚が最後の最後に花を咲かせる、その物語構成の美しさは近年随一。そこに至るまでに積み上げられた様々な文脈、男女の権力構造が反映された友情の対比構造、映されるものの醜悪さとそれが故の正しさ。あらゆる要素が実社会で見逃されている男性性へ告発であり、それを行う女性の孤独さと無力さを容赦なく描き出していく。
『ラストナイト・イン・ソーホー』の二人も良かったけど、今年の最優秀女優賞はキャリー・マリガンに捧げたいですね。ヒーロー性を剥奪されたハーレイ・クインだったよ。


第2位 映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園


天カス

 歴代の劇しんでも随一の完成度を誇るシナリオと、長年に渡って醸成されたしん✕かざの関係性の爆発が、あらゆる青春の光と影を肯定するエモーショナルな熱量を産んだ。全盛期と比べてアニメーションとしての弱さが度々指摘される近年の劇しんですが、個人的には地面を蹴る足の力強さをちゃんと描いてくれたので本作の画にそこまで不満はないです。
 学業や文化芸術活動、素行諸々がAIによってポイント管理され、多寡に応じて階級分けされる天カス学園の設定は、まんま階級社会のカリカチュアなのですが、本作は社会の構造によって想いとは裏腹に分断されてしまい子どもたちの構図を描いたことに特異性があります。
 同じ幼稚園に通っていても、一人だけエリートを目指す風間くんは小学校から進路が別れ、そしてこの天カス学園が示すように格差によって分断されれば自然と繋がりも絶たれてしまう。それに直面し、悩み苦しむ者たちの闇落ちを、「みんなもエリートになればいい」という基準の画一化による個性の剥奪を強行する思考によって表現する皮肉のキレよ。
 それに抗うように、点数では測れない個々人の輝きが、あらゆる分断を越えてひとつのゴールに向けて繋がっていくクライマックスが設計されていく。魅力的なゲストキャラクターの個性の在り方を、ミステリーの進行と同時にかすかべ防衛隊との交流を通して手際よく提示していく隙の無い構成よ。
 そして何よりも、しんのすけと風間くんがダイレクトに感情をぶつけ合うラストの対決。叫ぶ言葉は二人の別離が決して避けられないことであることを証明するもので、同時にそれでも離れがたいことをも表していて。だからこそ、風間くんは青春の証を手にしながら、格差もシステムも越えて、「いつか本当のエリートになったら」と別離の先にある再会を約束する。
 学校教育の時点で既に選別が始まってしまう。社会に翻弄される子どもたちに如何にして未来への希望を見せるか、その答えを描ききった傑作と思います。これ単体で記事書くつもりだったんだけどなぁ。


第1位 マリグナント 狂暴な悪夢

マリグナント

 純粋な「面白かった!!!」という感情には抗えねぇ。
 実際、エンタメに振っててちゃんと最後まで楽しめて気持ちよく劇場を出られる作品ってなかなか無かったりするんですよね。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』並みのATB級映画だと思います。今年だと配信作品だが『トゥモロー・ウォー』も良かったなぁ。
 サスペンス、ミステリー、そしてアクション。過去のホラー作品に飽き足らず、あらゆる映画のジャンルを貪欲に取り込んで凝縮されたひとつのカオス、なのにとっ散らかった印象は受けずジェットコースターの様にあらゆる『楽しさ』を享受させてくれる。どの章もずっと面白いのに、終盤に差し掛かると一気にギアが上がっていくのが凄まじい。
 血に依存した『家族』の呪いに縛られた主人公の女性が客体化された自分の主体を取り戻す、というシンプルな筋書きが物語のギミックに連動していて、あんなに振り切れたテンションで滅茶苦茶に突っ走っていたのに、終わってみればクライマックスに至るまでの道程がきちんと舗装されていたのが分かる不思議。
 2021年最強の作品にふさわしいタイトルでしょう。




 いかがだったでしょうか。
 今年の映画の充実振りはかなりのもので、選外となった作品でも良いものはたくさんありました。
 邦画にしてみてもドライブ・マイ・カーはもちろん、すばらしき世界』『護られなかった者たちへ等は全然ベスト入りしてもおかしくなかったし、アニメ映画では映画大好きポンポさんが入らなかったのは自分でも驚きで、『岬のマヨイガなど美点が光る作品もありました。 
 ホラー映画の面白さに目覚めたのは最大の収穫だったように思います。恐怖や怨念を通じてその国や土地、人の業を浮き彫りにすることができるので、社会/人権問題との相性が良いジャンルなんですね。
 コロナ禍の副産物か知りませんが、過去の名作がリバイバル上映される機会も多く、ドルビーシネマで平成ガメラシリーズを鑑賞することができたのは望外の喜びです。
 来年も面白い映画に巡り会えますように。良いお年を!


 
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Author:ぽんず
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アニバタ Vol.6アニバタ Vol.9に寄稿しました。よろしくです。


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